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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
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37 取捨選択

さくら視点


 光の帯が全身を包む。

 力が溢れてくる。暖かくて、優しい力だ。


 ゆっくりと眼を開ける。白とピンクのドレスがふわりと広がった。

 息を吸う。伸ばした手の先にいつもよりずっと弓幹が長くなったフラワーアローがある。


「イノセントフォームの力で、彼を救ってあげて」


 チュチュの願いを聞き、頷く。大丈夫。不思議と、この力がどんなものなのかわかる。今のカロンは強い苦しみと困惑の中にいる。この力で、そこから解放できるのなら。

 フラワーアローを、バイデントとカロンに向ける。ごめんね。


「イノセントシャワー!」


 ピンと張った弦から手を離せば、蕾が開くような音と共に光の泡がバイデントと、カロンに向けて放たれる。その泡に呑まれ、バイデントの黒い巨体が光の中に消えた。

 そして、カロンも。苦悶の表情を浮かべながら地面に膝を折ったカロンが、私を見上げる。


「なんだよ、それ。やっぱズルいよ、サクラ」

「……カロン」

「イノセントジュエルの力を使えばプルートも豊かな世界になるって、クライドも助けられるって思ったのに」


 もっと他に方法がなかったのかな。カロンの体が、光に包まれている。

 浄化の光。これで、カロンは本当に救われるんだろうか。もっとちゃんと、手を取り合えなかったんだろうか。


「寒いのも痛いのも感じず暮らしてみたかったな。オレたちが取りこぼした弱いものも生きていける世界に……」

「ごめん、ごめんね。カロン」

「謝んなよ。オレがプルートを救いたいのと同じくらい、この街を守りたいんだろ? だったら笑えよ、コーキを守れたんだから」


 眉を寄せながらも、カロンが笑った。ムリヤリ作ったような、下手くそで、諦めたような笑顔だった。

 多分、私にとって孝樹さんが大切な人だったように、カロンにとっても孝樹さんは特別な人だったんだと思う。


「おっかしーよな、最初は壊すのが一番楽しかったはずなのに。コーキとサクラを壊すのは違うなって思っちゃった。うん、後悔はしてない。でも……コーキと、トモダチになりたかったな」


 孝樹さんはカロンをまだ子供だと言っていた。壊すことが悪いことだと知らなかったんだろう。

 両親も、友達もいないと言っていた。それは、今の自分の行いを悪いことだと教えてくれる存在がいなかったということ。だから、孝樹さんを見て多くを学んだんだと思う。


「もうとっくに、孝樹さんは友達だって思っていたはずだよ」


 きっと、きっと。あの人ならそう言ってくれる。

 例えそこにどんな考えがたったとしても、カロンが苦しんでいるのなら、その心を救おうとするはずだ。


「は、はは。アイツ、本当にヘンなヤツだな」


 イノセントジュエルの力が浄化の力なら。その力でカロンが消えてしまうのなら。カロンは、プルートの人たちは、その力で消えてしまうような存在なの?

 そんなことを考えてしまうから、私にはイノセントジュエルの力を使えないとチュチュは首を振ったの?

 光に包まれて体が消えていくカロンを見つめる。


「なぁ、サクラ。キライって言ったの、ウソだよ」

「うん。知ってた」


 ムリに笑って。笑顔を作って。

 カロンに心配させないように、見送る。


 これで良かったのかな。わからない。助けたかった。力になりたかった。奇跡の力があっても、救えないものもあるのだと知ってしまった。

 ダメだ。堪えろ。何か熱いものが頬を伝う。それをしっかりと擦って振り返る。

 気遣わしそうに見る皆に笑いかけて、大丈夫だと言おうとしたとき、急に空が暗くなった。


 慌てて空を見上げれば真っ暗な空に亀裂が入っている。

 アレは何? なんで空が暗くなっているの? まだ昼過ぎで日が落ちるには早すぎる。それにあの空の裂け目から見えるものは一体……?


「何あれ?」

「何が起こっているの?」

「アレが、プルートヨ」


 チュチュが空を見上げながら言った。

 裂け目の中にはわずかに城が見える。荒廃した大地に、聳え立つ一つの城。まるでおとぎ話の悪い魔女が住んでいそうな風体のそれは、確かに復興が必要そうな状態であった。


 あれがプルート。

 カロンが救いたかった世界。


「おそらく、クライドがプルートとこの世界を繋ごうとしているんだワ」

「どういうこと? 繋がったら、何が起こるの?」

「どんな影響が出るのかまではわからないノ。でも、バイデントがこの世界に溢れるワ。そしてそうなると人間はパニックになり、バイデントたちも住処を求めて侵攻してくるかもしれないワ」


 手を取り合いたかった。救いたかった。例え傲慢だと言われても、同情であったのかもしれないけど。それでも。

 カロンも一緒に、孝樹さんの傍で笑いあっていたかった。


「そんな! 何か、あの裂け目を何とかする方法はないの? チュチュ」

「無いわけではないけど……」


 ブルーの問いにチュチュが言い淀む。

 きっとチュチュも悩んでいる。だって、私でも気が付いてしまったんだもの。ブルーとイエローもすぐに思い至ってしまうはず。


「方法は一つ。あの裂け目の中に入り、プルートにいるクライドを何とかすることヨ」


 誰ともなく、息を呑んだ。

 だってそれは、私たちの手で、カロンの願いを完全に壊すことでもあったから。



息を付く暇も与えてもらえない。

残り4話!


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