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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
33/41

33 大遅刻のサンタクロース


 雨、降らなくてよかったなぁ。

 車を駅まで走らせながら、フロントガラスに映るいつもよりも雲が多い冬空を見る。今日はさくらちゃんと出かける日だ。


 特別これと言ったプランは考えていないが、適当に映画に連れて行って、併設する商業施設を流し見しつつ、暗くなる前には家に返すルートでいいだろう。

 健全に、且つ人目の多いところ。遅くまで未成年を連れ回すのは良くないし、あくまで保護者としてお出かけに同行するだけ。


 誰に聞かせるでもない言い訳をするのなら、最初からこんなことしなきゃいいのにな。

 いや全く、なんでさくらちゃんと出かける約束を自分で持ち掛けたんだよ。最近ずっと何かを悩んでいるようだったし、気分転換にとか。ガキでももっと上手な言い訳をするだろ。


 正直あの時は自分が可笑しかった自覚がある。

 いや、確かにカロンに無意識に入れこんでいたんだろうというのは察したさ。そしてそのカロンとは未だに会えていないのもある。だからって、そのもやもやをさくらちゃんで解消しようとするのはおかしいだろ。


 マジでないわ、俺。どうしちゃったわけよ。別に覚めているわけではないつもりだが、もうちょっとあっただろう。

 やっぱ、今年は忙しすぎたのが原因だな。年末年始にしっかり食って寝ればその内精神的にもマシになるだろうか。


 去年の夏ごろから各地にぽつぽつと現れ、今年の頭にはピンポイントに美空町にだけ現れるようになり、間もなく魔法少女たちが現れた。

 怪物が街を壊すようになって、仕事の依頼が増えた。お陰で稼がせて貰ったが、その分休みも少なく、スケジュールも詰めていたし、同業他社との連携に気を遣った。


 うん、間違いなくこれだな。

 このままの状況が続いていくのは体力的にも精神的にもしんどいかもしれない。どうにかならんかね。


 車のハンドルを指で軽く叩きながら信号を待つ。

 ちらりと車に備え付けられた時計を見る。待ち合わせの時間まであと十五分ほど。さて、困ったことになったな。


 先ほどからぐるぐると立体駐車場の中を周っているんだが、年末ということもあって商業施設の駐車場が空いてねぇ。

 嘘だろ? いくら駅前とはいえ、ここ結構でかいし、そこそこの数の車が止められるはずなんだけど?


 若干の焦りを感じながらなんとか見つけたスペースに車を滑り込ませる。

 一本隣で駐車スペースを探していた兄ちゃんが羨ましそうにこちらを見ながら通り過ぎていく。すまんな、こっちも急いでるんだわ。


 車のエンジンを切ってスマートフォンを取り出す。待ち合わせ場所まで十分を切っていた。

 一先ずさくらちゃんに連絡を入れよう。もちろん急ぐつもりではいるが、恐らく時間にはギリギリ間に合うか、合わないか。

 帰りのことも考えて商業施設の方に車を置いたが、ここ待ち合わせ場所の駅を挟んで反対側なんだよ。


 謝罪と少し遅れる旨のメッセージを送って、車を出る。早足でエレベーターへ飛び乗ってガラス張りの外を眺めた。

 つい先日までクリスマス一色だったのに、駅周辺の装飾が年始向けの物に一新されている。さくらちゃんからの返事はない。


 高い金の音が鳴ってエレベーターが地上階にたどり着いた。

 人の波を避けて、迷惑にならない程度に小走りに駅前の広場まで急ぐ。どうにも人が少ない気がするが、かえってありがたいな。


 年末の昼間にもかかわらず人の疎らな駅前に違和感を持ちつつも、広場に設置されている時計を見た。 待ち合わせ時間丁度。ギリ、アウトか?

 若干荒れる息を整えつつ周りを見回す。


 ……いねぇな。なんか、あったか?

 ポケットのスマートフォンを取り出してみるも、通知は無し。しばらく待つか。


「南通りの方、怪物出てるらしいぜ?」

「あぁ、聞いた聞いた。魔法少女もいたらしいし、こっちには来ないだろ」

「今駅着いたんだけどさー、電車の横を怪物と魔法少女が暴れててビビったんだけど」


 なるほど? いや、マジか。それで人が少ないのね。というか、街の住人はちょっとこの状況に慣れすぎでしょ。

 通り過ぎる若者たちを見送って息を吐く。


 どうりで。残っているのは事態を楽観視している者ばかりで、危機管理ができている者はきちんと避難できたと。

 もう一度スマートフォンのメッセージ機能を起動する。多分、さくらちゃんは避難しているはずだ。なら場所さえわかれば迎えに行ける。


 待ち合わせ場所に着いたこと。怪物が近くに出たらしく、避難所にいるのなら迎えに行くので連絡が欲しいこと。それから、怪我はしていないか。

 メッセージを送って近くのベンチに腰を下ろす。合流したら、そのまま車に乗って移動になるかな。さすがに怪物が出た後すぐにその辺りに滞在するのも気になるかもしれないし。


 ……。メッセージ、こねぇな。しばらくベンチでぼんやりと人の流れを眺めていたが一向にさくらちゃんからの返事がない。

 電波障害を疑いもしたが、インターネットには繋がるし、その他の企業DMやらは入ってくる。


 ……大丈夫か、これ。まさか巻き込まれたか? いや、危ないことはするなって散々声かけしてきたし、無い。と、思いたい。

 でももし何かしらの事情で連絡を取れなくなっているのなら? もし、怪我をしていたら?


 ……いや、待て。さすがにそれは悪い方へ考え過ぎだろう。

 とりあえず待とう。その内連絡が来るかもしれないし、ひょっこり顔を出すかもしれないし。


 そのまま、十分。二十分。……はい、本来の待ち合わせの時間から一時間半が経ちました。何度かメッセージアプリを起動して連絡してみたが反応は無し。

 いや、会うのが嫌になったのならそれでいい、せめて連絡をくれ。頼むから。無事ならそれでいいから。


「あ……」


 そうして何度目かの連絡を取ろうとした時、通り過ぎる人のざわめきの中に、聞きなれた声が聞こえた。


「さくらちゃん!」

「ごめんなさい、孝樹さん。その、遅くなって……」

「いや、いいよそんなの。怪物が出たんだろ? 怪我は?」

「ないです。でも……」


 慌てて駆け寄れば、どうにもお嬢さんは複雑そうな顔で表情を曇らせていて。


「でも?」

「折角、服も髪も頑張ったのに、ボロボロになっちゃって……」


 そういうさくらちゃんを見下ろせば、人並みに押されたのか、髪も衣服も少し乱れている。大変だったんだな。

 俺としては無事に合流できて一安心だが、お嬢さんとしてはそうじゃないらしい。折角お出かけだと頑張って準備してくれたんだろう。


「可愛いよ」

「え」

「ちゃんと可愛い。だから大丈夫だって」


 何が大丈夫なのかと、問われれば言葉に詰まるが、大人からすると子供はどんな格好してても皆可愛いものなのよ。

 だから、そんな顔しなさんな。


「トラブルもあったが、無事合流できたことなんだしさ。いつもみたいに可愛いお顔で笑ってよ」


 そのためなら、大遅刻したサンタクロースでも何にでもなるからさ。

 一瞬ぽかんとした後、さくらちゃんの表情がゆるゆると明るくなる。

 うん、絶対そっちの方がいい。






この男すぐそういうこと言う

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