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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
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32 らんらんらん!

さくら視点。


 今日は! 孝樹さんとデート!

 多分全然! 本人はそんな気が無いんだろうけど! それでも、男女が二人でお出かけする! それすなわちデート! 世間はそれをデートと呼ぶんです!


 約束した次の日には七海と梨穂にお願いして一緒に可愛い服を買いに行ったし、髪もいつもよりちょっと大人っぽくアレンジした!

 朝も二人に写真送って変じゃないって確認してもらったし、大丈夫なはず!


 最後までちょっと前髪が気になって鏡の前でにらめっこして。早めに家を出ようと思っていたのに結局バタバタと駆け足で家を飛び出した。

 待ち合わせの駅前広場まではそんなに遠くない。ちょっと駆け足で向かえば十分待ち合わせ時間には間に合うのに、どんどん足が速くなる。息が上がる。胸が弾む。


 孝樹さんにとっては気まぐれだったのかもしれない。でも私にとっては、楽しみにしていた日。

 今日だけは、ちょっとだけ浮かれていたい。


 閑静な住宅街を抜けて、どんどん街並みが人通りの多い賑やかな風景になっていく。それに呼応するように、私の気分もどんどん高揚していく。

 世間的にはクリスマスは過ぎてしまったけど、私にとっては今日がクリスマスと同等の記念日なわけですよ!


 早く孝樹さんに会いたい。

 自分でもいつもと違う雰囲気になったと思う。……孝樹さん褒めてくれるかな? 可愛いって、言ってもらえるかな?


 きっと孝樹さんは私のことなんて意識していないんだろうけど、今はそれでいいの。

 私だって、まだまだやらなきゃいけないことや、解決しなきゃいけないことがあるんだから。


 孝樹さんが好き。

 子供扱いして、全然意識してくれないけど守ろうとしてくれているのも、大切にしようとしてくれているのもわかる。

 その理由が、私が子供だからだっていうのは、時々苦しくなる。でもそうじゃなければきっと私は孝樹さんを好きにはならなかったし、孝樹さんが大人として振る舞ってくれるから安心して好きでいられる。


 この前も、私が一方的に不機嫌になって嫌な想いをさせたのに、謝ってくれて……。

 こういうところが子供だと思われているのかなぁ。


 孝樹さんはゆっくり大人になりなさいって言ってくれるけど、私は早く大人になりたいよ。大人になって、孝樹さんの隣に立ちたい。

 いつかこの気持ちを伝えて、孝樹さんと……。


 そのためにも! プルートから来ているバイデントやカロンたちの問題を何とかしないと!

 孝樹さんはしっかり見極めなさいって言ってくれた。私が魔法少女なのも、カロンがバイデントの仲間なのも知らないはずなのに、やっぱり大人ってすごいな。いろんなことを経験してきたんだろうなぁ。


 うん。もっとカロンと話してみよう。嫌がられても、戦えって言われても。この世界も、プルートも、どちらも救われる未来がないか一緒に考えようって。

 カロンが孝樹さんに自分の正体を言わなかったのは、きっと孝樹さんを傷付けたくなかったからに違いない。

 カロンに、他の破壊の使者たちにもそういう誰かを思う気持ちがあるのなら、手を取り合えるはずだもの。


 すれ違う人が増えてきて、ぶつからないように少しだけ歩調を緩める。

 ちょっと走ったせいか、思っていたよりも早くついてしまった。


 駅前広場の時計では、待ち合わせ時間よりも二十分近く早い。早めに来ようとは思っていた。ただちょっと、早すぎたかな?

 孝樹さんはまだ、だよね? 一先ず広場の隅にあるベンチに腰を下ろして、ぼんやりと辺りを見回す。


 目の前を暖かそうな恰好をした人たちが通り去っていく。楽しそうな人たちもいれば、忙しそうにしている人もいる。

 年末って感じだなぁ。鞄の中からスマートフォンを出す。電源ボタンを押して表示された時間は、さっき広場の時計を見た時から三分も経っていない。


 あぁ、どうしよう。またドキドキしてきた。走っちゃったし、髪型崩れていないかな? 可笑しくなってない、よね?

 ごそごそと鞄から手鏡を出して、中を覗き込む。多分、大丈夫なはず。


 意味もなく前髪を触りつつ息を吐く。もうすぐ。もうすぐ約束の時間。そろそろ孝樹さんが来るはず。そんなことを考えていた時だった。

 急に人通りが多くなる。電車が来たのかと思ったけど、どうやらそうでもないらしい。人のざわめきと不穏な空気。

 嫌な感じがする。


「おい、怪物が出たらしいぞ! こっちに向かってくる!」

「マジかよ、年末ぐらい休めよな」

「避難経路こっちです! 小さいお子様や高齢者優先で!」


 ざわめきが、本格的に大きなものになった。

 嘘でしょ? なんでこんな時に。


 人が向かってくる方を見れば少し離れたところで何やら土煙が上がっている。駅前で高い建物があるからよく見えないけど、多分、あっちにいるんだと思う。

 バイデントが出た。


 鞄の奥に入れたプリズムパクトが明滅した。


「どうして今日なのよ」


 思わずぼやいたってバイデントが帰ってくれるわけじゃなく。

 孝樹さんとの待ち合わせまでもう時間がない、でもバイデントが街を壊して暴れている。


 何かが詰まっている胸に、ムリヤリ息を吸って吐き出す。

 言いたいことは色々あるけど、全部呑み込んだ。だって、あそこに困っている人がいるなら、きっとあの人ならこうするもの。それにもしかしたら、孝樹さんがあそこで巻き込まれているかもしれないんだし。


 だから。

 明滅するプリズムパクトを握りしめて、人の流れに逆らうようにして走り出した。



走れ走れ走れ!

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