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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
27/41

27 大人の迷走


 長らく人とケンカとかしてないので、本格的に相手の機嫌を損ねた時の対応がわからないんだがどうしたらいいと思う?

 取り敢えずスマートフォンのネット検索のタブに「女子高生、謝罪」と打ってみた。思っていたのと違う痛ましい事件の話が出てきたな。

 ……待て、何だこの教員による願書の出し忘れって。悲惨すぎるだろ。


 事務所の椅子にもたれつつタプタプとスマートフォンをスクロールする。確実に俺の検索の仕方が悪いのはわかっているが、もうちょっとこう、俺の意図するものが検索に引っかかってくれてもいいんじゃないか?

 さっきから、よくわからんネットニュースの記事ばかりがヒットする。何? 「謝罪」って単語が悪いの? 皆不祥事起こし過ぎじゃない?


 見ていて疲れてくるニュースに呆れてスマートフォンの電源を落とす。

 そのまま机の端に放り出して息を吐けば、パソコンのデスクトップに貼った付箋がひらひらと揺れた。


「石川ちゃーん。ちょっとした謝罪の時に一緒に渡されたら嬉しい物って何?」

「ライブチケットですね。S席なら文句なしで許します」

「推し活かぁ」


 これは多分聞く相手が悪かった。

 石川ちゃんはうちの会社で一番若い新卒の女性といっても、相手は自分のデスクに推しアイドルのアクリルスタンドとやらを置いてるタイプの女性だしな。

 いや、机の隅に推しの祭壇作って、それで仕事へのモチベーションが上がるなら好きにしてもらっていいんだけど。


「二次抽選落ちたんで復活当選祈っててください」

「うん、後で祭壇にお供え物しようね」

「あざます社長!」


 石川ちゃんは元気だなぁ。特に外回りのない午後休憩。車を運転するのは苦ではないので、営業周りだとか現場の確認をよくしているが、こういうのんびりした社内の風景も嫌いではない。

 今日の事務所は、専務の高橋さんと石川ちゃんと俺の三人だ。母さんは用事があるとかで今日は一日休み。やること自体はあるものの、しっかり休憩も取れる穏やかな就業風景だな。


「何か困りごとで?」


 水筒を片手に高橋さんが言った。

 そういえば高橋さんは娘さんが中学生だったな。思春期のお嬢さんに機嫌を直してもらう方法も知っているだろうか。


「知り合いの高校生のお嬢さんを怒らせちゃってね。お詫びを考えてるんですよ」

「あぁ、自分もよく娘を怒らせますね」

「どうしてます?」

「一番はお詫びに何か買うことですね。まぁ、それをすると今度は妻に怒られるんですけど」


 困ったように笑う高橋さんに苦笑いする。

 やっぱ何かしらの贈り物かぁ。とはいえ高価なものは気を遣わせるし、消え物でお茶を濁すのがいいのか?


 自分でも、昨日のはよくなかった自覚はある。誰だって触れられたくないことの一つや二つはあるだろう。今のさくらちゃんにとって、カロンとの関係がそれだっただけ。

 別にさくらの悩みを軽んじたわけではないが、軽口を言って取り持とうとした結果、余計に感情的にしてしまった。完全な空回りだな。


「高校生……。あ、もしかしてさくらちゃん、ですか?」

「ん? ああ、そうだけど。話したっけ?」

「椎名君に聞いてますよ。社長に懐いてるお嬢さんがいるって。どうせお菓子あげてるんでしょう? 社長人におやつあげるの好きだから」


 え、俺そんな風に思われてるの? 確かに社員に差し入れするのは好きだし、皆嬉しそうに食ってくれるしおごりがいはあるんだけど。

 さくらちゃんも、うん。いっぱい食べて健康に育ってほしいし。


「別に心配はしてないけど知り合いだけにしてくださいね? 下手すると通報物ですよ?」

「最近物騒だもんねぇ。でもほら、その点社長は年下に興味がないから」

「そうなんです?」

「まぁ……五つ以上、下だと元気に成長してて偉いなって気分にはなるな」


 興味がないっていうか、庇護対象になるというか。

 なんか、うん。可愛いなとは思うが、犬猫に向かって言うような感じなんだよな。


「なるほど? もしかして年上好きです?」

「そうだよ。社長はグラマラスなお姉さんが好きなんだよ」

「やだ不潔ー」


 石川ちゃんがけらけらと笑うのを可愛らしいと思いつつ、いらないことを教え込んだ高橋さんには、引き出しの中に残っていた塩タブレットを投げ付ける。

 夏の残滓をくらえ。


 ともあれ、まぁ。俺も男ですので? 豊満な感じの女性が好きですよ? 健康そうだし。

 ほら、最近の子はちょっと細すぎなんだよ。折れそうで心配になる。もっとしっかり食べなさいよ。


「俺は美味しそうにものを食べる子が好きなんだよ」

「すいません社長、私の心はリュージにあるので」

「振られたかー」


 石川ちゃんの机の祭壇にあるアイドルに負けたか。仕方ないな。彼は細いが眉目秀麗で、前にライブ映像を見せてもらったが華麗なダンスを披露していた。あそこまで動けねぇよ。

 それにしてもこれも、お互いに冗談であるとわかっているからできる言い合いだな。最近は何がセクハラになるかわからないし、難しい世の中になったもんだ。


 自分の境遇が恵まれているとはわかっているんだよ。父から継いだ会社の二代目で、そこそこ軌道に乗って余裕もある。

 この状況がずっと続くわけではないので今は嬉しい悲鳴を上げながら頑張れば、もう少し社員の努力に報いることもできるだろう。会社を守る社長として、大人として。


 まぁ、大人になると思春期のお嬢さんの気持ちはとんとわからなくなるんですがねー。

 ……どうやってさくらちゃんに謝ろう。



自分の安全地帯に逃げ込んだくせに完全に逃げきれていない人

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