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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
25/41

25 子供


 変な奴。そう言って笑ったガキは、確かにカロンに似ていた。

 ……いやいやいや。アイツはただの子供だぞ?


 確かに解体現場で目を輝かすようなところはあるものの、男児なんて皆働く車とか大好きだし、目の前でそれが動いているとなると大なり小なり心が動かされるもの。

 よってアイツは何もおかしなところはないし、目の前の銀髪の子供みたいに中に浮いたり、怪物をけしかけたりはしない。しないはずなんだよ。


「こ……。人間、はさ。倒されんの、嫌?」

「そりゃ嫌でしょうよ。そもそもこっちはお前らがどうして街を壊して回ってんのかもわからねぇし」


 一先ず、刺激しないように話を合わせる。

 なぁ、頼むよ。そんな迷子みたいな顔しないでくれよ。街を壊す、怖くて悪い奴でいてくれ。そうでないと、色々と勘違いしそうなんだ。


「探してる物があるんだ」

「それがこの街にあるの?」

「うん。……オレ壊すから。全部、街も、人間も。ちゃんと壊すから! だから!」


 仕事柄、怪物に家を壊されて悲しむ人を多く見てきた。

 泣き崩れる人もいた。諦めて切り替える人も、呆然と項垂れる人だっていた。


 俺の仕事は、怪物に中途半端に壊された建物をきちんと安全に壊しきること。そうして、次に繋げること。

 泣くのも、諦めるのも、項垂れるのも。全部悪いのは街を壊す怪物。怪物さえいなければ、多くの人が平穏無事に暮らしていた。

 誰も悲しまずに済んだ。


 でもこいつ、子供なんだよなぁ。


「恨んでいいから」


 泣きそうな顔で吐き出した子供に、何とも言えない気分になる。

 子供がそういうの背負うなよ。コイツの仲間は何やってんの? 子供なんて妙に正義感も使命感も強い生き物なんだよ。下手なもの、背負わせたらダメだろ。


「……恨まないよ」

「なんで!? 倒されんの嫌なんだろ? わかんないまま倒されんのは困るんだろ!?」

「うん、困るよ」

「だったら!」


 お前にそう選択させた周りの奴は恨むかもしれないが、俺がお前を恨むことはない。

 だってお前子供じゃん。


 誰にかはわかんねぇけど、色々背負わされただけの子供。そんな奴恨んでどうするんだよ。

 確かに街を壊されるのも困るし、怪物は街を壊す、怖くて悪い奴であってほしいとは思う。でもまだ道理もわかってねぇようなガキ相手に、悪感情抱いたって仕方ないだろう。

 だから。


「子供は難しいこと考えずに、バカみたいに笑ってればいいんだよ」


 こんなさぁ、ちょっと離れた場所で怪物が暴れているコンビニの前じゃなくて、最近少なくなったが、どっかその辺の公園で友達と連れ合ってボールでも追いかけていればいいんだよ。

 ゲームだっていいよ。友達どうしであれ捕まえた、これ交換しようっつって、ワイワイ騒いでいればいい。子供なんて、そうやって笑っていればいいんだよ。


「……なんだよそれ」


 困ったような顔をして俯いてしまった子供が、俺に何を求めていたのかは知らないが、仕方ないだろ。

 目の前にいる怪物の仲間を、カロンに似た子供だと思っちまったんだから。


 風が吹いた。カロンとは違う銀色の髪が揺れる。

 ゆっくりと顔を上げた子供が口を開く。果たしてそれは、何を言おうとしていたのか。伸ばしかけた手は、何を求めていたのか。


「させないよ!」


 高い女の声が聞こえて風と共にピンクの花弁の塊が目の前に落ちてくる。いきなり現れた風圧に咄嗟に目を瞑った。

 少し痛いくらいの風がようやく止んだ時には、ピンクの魔法少女が、俺と子供の間に立っていた。


「この人に、何をしようとしていたの?」


 少し強張ったような低い声で魔法少女が子供に向かって声をかける。

 そう、怖い声出さないでやってくれよ。そいつ本当にただの子供なんだよ。


 気まずそうに俺と魔法少女を見比べるその表情が、本当にカロンと同じで。アイツもケンカでもしたのかさくらちゃんの前でこんな気まずそうな顔をしていたよな。

 さっきもそう思ったが、本当によく似ている。……いや、まさか。いくら何でもそれはない。髪の色も違うし、カロンは宙に浮いたりもしない。


「……バーカ」

「ちょっと、待って!」


 特に魔法少女の問いかけに答えず、子供がすぐ後ろに急にできた妙な空間の中に帰って行く。

 結局、アイツは何だったんだよ。俺の勘違いなんだよな?


「行っちゃった……。えっと、大丈夫? お兄さん、怪我していない?」

「あぁ、すまん。何度も助けてもらって」

「ううん、お兄さんが無事でよかった。向こう、まだ戦ってるから行っちゃダメだよ」


 さくらが慌てたように安否を確認する魔法少女に答えれば、安心したように彼女がふわりと笑う。

 助けてもらっておいてなんだが、こうして落ち着いて観察してみると、結構、幼いな。魔法少女って。十六、七くらいか? 


 え? 子供が子供と戦ってんの? 街破壊しながら? 子供らしくもうちょっと規模を小さくするとかできないか? もしくは話し合いで仲直りする方向とかさ。

 そんなことに頭を悩ませる俺に、ピンクのふわふわした衣装を身にまとった魔法少女は少し考える素振りをした後、いたずらっぽく笑った。


「危ないことしちゃダメだよ?」


 本来それは、大人である俺が言うべきセリフなんだがなぁ。



事情を知らないからこそ言えること

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