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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
18/18

18 世界二つ

さくら視点。


「お前……サクラかよ」


 何もかもを捨て落としたような、諦観にも似た表情でカロンは言った。

 なんで、どうして。そんな言葉ばかりが頭の中を巡っている。


 目の前にいるカロンと、孝樹さんに懐いているカロンは、あんまり信じたくはないけど同一人物らしい。

 あっちのカロンは生意気で、無邪気で、ウキウキした表情で孝樹さんの話を聞いていた。壊すのが好きって言うのが少し気になったけど、孝樹さんも、子供らしい考えで問題のない範疇だと言っていたのに。


「どうしてピンクのことを?」

「孝樹さんに懐いていた子、だと思う。髪の色が違うけど……」

「バーカ、そんなの力の制御でどうとでもできるんだよ」


 そう言って、宙に浮いていたカロンがトンッと街灯の上に降りる。

 そしてふわりと頭を振ると、銀色だった髪が黒く染まった。空気を含みながらも重力に従って舞い降りた黒髪の少年は、ここ最近よく孝樹さんに引っ付いていたカロンで。


「オレらはやろうと思えば人間に紛れられんの」

「そんなっ。なら、知らないうちに、私たちもバイデントと会っているかもしれないってこと?」

「かもな」


 戸惑うブルーに対して、カロンは投げやりに応える。

 なんで、とか。どうして、とか。そういう言葉を落ち着けるために、必死でカロンが話していた意味を咀嚼していく。


「イノセントジュエルを探しているのは、プルートを復興させるためなの?」


 正直、私たちはイノセントジュエルについてほとんど知らない。

 奇跡を起こすほどの力を持っていて、この世界に定期的に生まれては魔法少女たちによってあるべき形へと昇華されてきたっていうのはチュチュに教えて貰った。でもそれだけ。


 その奇跡の力でカロンはプルートを復興したいのなら、きっとプルートは今、酷い状況に陥っているんだと思う。

 だからといって自分の世界のために、他の世界を犠牲にしていいってわけではないけど。


「……そうだよ」

「クライドって人が、プルートのために街を壊せって言ったんだよね?」

「だったら何だっていうんだよ! クライドはいつだってオレたちのことを考えてくれている! クライドが立ち上がらなきゃ、オレたちは死ぬしかなかったんだよ!」


 カロンのことは、別に嫌いではない。

 確かに、ちょっと口が悪くて生意気なところもあったけど。でもすごく楽しそうで、孝樹さんにもよく懐いていて。羨ましいくらい簡単に孝樹さんに触れることを許されていて。


 でもそれはカロンが子供だからで。

 その子供が自分の世界のために、誰かのために必死になっていて。でもその方法は他の誰かを傷つけるもので。

 こんな時あの人なら、孝樹さんなら。


「一緒に他の方法を探そうよ。イノセントジュエルが奇跡を起こせるなら、きっと美空町を壊して探さなくても、プルートを救う方法もきっとあるはずだよ」


 きっと、手を差し伸べるはず。

 自分ではなんとかできなくても。それでもあの人はけして子供を見捨てたりしない。必ず、私たちが間違わないように見守ってくれるはず!


「……バカじゃないの」

「待って! カロン!」


 くしゃりと表情を歪ませたカロンが、ため息を吐いて黒い空間の中へと消えていく。

 プルートへ、帰ったのかな。


 カロンは、自分がやる。大人になって、自分が責任をとる。と、言っていた。

 大人、責任。どちらもきっと孝樹さんを見て、感じたものなんだと思う。だって孝樹さんはずっと、私に対しても、カロンに対しても大人として、振る舞っていたから。


「何なのよ、プルートの復興って。それにクライドって何者? バイデントのボス、で、いいのよね?」

「おそらくは……。チュチュ、あなたは何か知っていますか?」


 カロンもバイデントもいなくなったので、七海と梨穂が変身を解く。二人も不安そうな顔で話しているけど、多分考えているのは同じだと思う。

 クライド。その人がカロンや、バイデントたちのボス。その人が、イノセントジュエルを求めて美空町を壊すように指示している人。


「ごめんなさい、私も詳しくはわからないノ」

「そうですか……。さくらちゃん、大丈夫ですか?」

「うん、ごめんね。大丈夫」


 梨穂の問いかけに頷く。

 切り替えなくちゃ。


「ねぇチュチュ、今までの魔法少女たちはイノセントジュエルをどうしてきたの?」

「先代の魔法少女たちは皆、世界の再生のためにイノセントジュエルの力を使ったと言われているワ」


 世界の再生。それがあるべき形と言われているもの。

 ちょっとよくわからないな。確かにバイデントが暴れた後は色んな物が壊れるし、そういうのの再生? ということにイノセントジュエルの力を使ったのなら理解はできる。


「その世界の再生って、カロンたちの世界にも適応されないのかな」

「そ、れは……。ごめんなさい。イノセントジュエルは確かに奇跡の力を持っているけど、けしてその力は無限にあるわけではないノ」


 チュチュが申し訳なさそうに肩を落とす。

 イノセントジュエルの力を使っても、どちらか一つの世界しか救えない。この世界は私にとって、生まれ育った場所で、守りたい人がいる場所。


「……私たちの世界のためにイノセントジュエルを使ったら、プルートは救えないってこと?」

「……」


 誰かが、小さくため息を吐いた。

 答えはもう出ていた。


 多分、カロンもきっと自分の世界を守りたいだけ。

 私たちがそうなのと同じように。

 でも、孝樹さんに懐いているカロンは楽しそうだったな……。




プルート側の世界観はまた別の機会に

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