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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
17/18

17 守りたいもの

さくら視点。


 毎日、学校へ行って友達と話して、バイデントたちと戦っての繰り返し。

 正直息が詰まることもあるけど、その合間に孝樹さんと会って、話して。孝樹さんと会うとなんとなく安心する。多分それは、あの人が何も知らない普通の人だというのもあると思う。


 危ないってわかっているのに、いざとなれば自分が囮になって赤ちゃんを連れたお母さんを守ろうとするところとか、相談すれば茶化しながら話を聞いてくれるところとか。

 すぐに保護者とか身近な大人に相談しなさいって言うけど、私にとっては孝樹さんも充分身近な大人なのに。


 もっと話したくて、困らせたくなくて、もう少しだけ私を見てほしくなったりして。

 孝樹さんにとって私は、どこにでもいる子供に過ぎない。きっと私の気持ちなんか全然知らなくて。そもそも孝樹さんは私のことそんな風には見ていない。時々苦しくなるけど、それでいいの。


 私が孝樹さんを好きなだけ。

 私が、孝樹さんのいる街を守りたいだけ。


 最初はバイデントのせいで誰かが傷ついたり、悲しんだりしなくて済むようにと戦っていたはずだった。

 でも段々、孝樹さんが住む街を守りたくなった。


 魔法少女として戦う自分を知らないとはいえ、ただの子供として扱ってくれる孝樹の傍にいられるように。

 なんて、魔法少女としてはちょっと失格かな? でもいいの。

 私を私として見てくれる人のために、頑張るだけ。魔法がなくても、誰かを守るために行動できるって、あの人が示してくれたから。


「フラワーウォール!」


 バイデントの攻撃を、何度も使った魔法で受け止める。

 イノセントジュエルを見付けるためとはいえ、怪物たちはどうしても街を壊さないといけないの?

 よく孝樹さんに懐いている方のカロンと出会って、壊すのが楽しいという人もいると知ったけど、やっぱり私は壊れるのは嫌だな。


「よし! 受け止めた!」

「イエロー、構えて! こっちで追い込むわ!」

「任せてください」


 バイデントを倒すのはいつも大変で。でも最近はブルーとイエローとの連携も上手くいくようになってきた。

 そのおかげで、バイデントと合流してからの被害も抑えられるようになって、街の皆がバイデントの被害に苦しまなくてすんでいればいいな。


「ピンク! 今です!」

「うん! フラワーアロー!」


 木の枝を模した弓の中心にはピンクの花のつぼみがあり、キラキラと輝く魔力で出来た弦を引く。

 しっかりとバイデントに狙いを定める。ぎゅっと、硬く握っていた弦を離した。


 ポンっという音と共に弓の中心にある花が咲く。

 そこから溢れた光が一直線にバイデントに向けて降り注ぐ。淡いピンクの光の中で、バイデントが小さくなって消えた。


 ふっと息を吐いて、空を見上げる。

 バイデントは倒しても、今日はまだ終わりじゃない。


 見上げた空の上には、破壊の使者のカロンがいる。

 ……なんだか今日は様子がおかしい、よね? いつもならもっとこう、好戦的で壊すことに楽しみを見出しているのに。今日はどういうわけか、つまらなそうにこちらを見ている。


「カロン。まだ、街を壊すの?」

「……」


 私の知るカロンは二人いる。

 一人は少し前に知り合った孝樹さんによくくっついている黒髪の少年。そしてもう一人が彼。


 銀色の髪に青い瞳のカロンが、無言で私を見つめ返している。

 プルートから街を襲いに来ている破壊の使者は彼を含めて三人いるけど、黒髪の女性と頭がロウソクになっている男に比べて、彼が一番頻繁に街に来て暴れるので厄介な相手だった。


「なんで、邪魔すんだよ」

「なんでって、街が壊されると悲しむ人がいるし」

「じゃあ! お前らが邪魔したせいで、俺らの世界が滅んだらお前等はセキニンとってくれんのかよ!」

「……え?」


 怒鳴るカロンの言葉に、思わず声をあげた。

 世界が滅びる? どういうこと? 私が混乱している間も、カロンは苦しそうな表情をしていて。

 その表情が、なんだか誰かと重なって見えて。


「イノセントジュエルがあれば、プルートを復興できるってクライドが言ったんだ。もう誰も苦しまないって、滅んだりしないって」

「待って、それってどういう──」

「だから! アイツらがちゃんとやらないならオレがやる! 大人になって、セキニンだってとってやる!」


 イノセントジュエル。プルートの復興。クライド。混乱する頭のまま何とか拾った言葉を反芻する。

 カロンの世界が、崩壊の危機にあるって言うのなら、それは心配だと思う。でも、だからって美空町を破壊されるのも困る。


 だけど、今は話に集中しなきゃいけないんだけど。

 どうしても引っかかることがあって、それが頭から離れない。


 必死にこちらに訴えるカロンが、ずっとあの子と重なっている。

 髪の色も、雰囲気も違う。あんな必死な表情も見たことはない。でも。それでも、あの子と。


「……カロン、なの?」


 孝樹さんに懐いているあの子に、似ている。

 ううん、似ているんじゃない。きっと、彼は、そう。


「お前……サクラかよ」


 私の問いかけに、すっと感情が抜け落ちたような表情で、カロンは言った。



邂逅

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