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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
14/17

14 太陽は今日も元気


「なぁなぁ! アレは? アレはどうやって壊すんだ?」


 この暑いのに上機嫌でカロンは俺を振り返った。

 随分と楽しそうにしちゃってまぁ。ズレかけた大人用のヘルメットを直してやりつつ、質問に答えてやる。相変わらずヘルメットは大きくてズレやすいが、タオルをかませている分多少はマシだろう。


 しかし、暑いな。七月ももう終わり。まだ八月があるとはいえ、夏休みに遊びにくるのが解体現場でいいのか?

 可能な限り短く調節したベルトの紐を顎下で揺らしながらカロンが笑う。自由研究の題材にでもするつもりか?


 楽しんでいるようだからカロンはまだいいとして、さくらちゃんはどうなんだ? 女子高生が見ても、解体現場って楽しめるのか?

 カロンと同じようにヘルメットを装備して俺の監視の元、解体現場の見学をしているが、時折短い感嘆の声を上げている。


 田中のじーさんがショルベカーで建築物を解体する様子に興奮するカロンが、テンションが上がりすぎで突撃しないようにだけ気を付け、じんわり浮かんだ汗を拭う。

 今日の現場は古いアパートの解体だ。経年劣化は見られるものの、そこまで傷んでいるようには見えない。


 オーナーの爺さん曰く。市から建て替えの助成金が出るし、さらに先月軽微ながら怪物の被害にあったので、さらに補助金が出るので建て替えに踏み切ったのだとか。

 共用部の廊下が、怪物が暴れた振動で微妙に浮いており、それに躓く住人が出てきたので、建て直すなら補助金が跳ね上がると、仕事の早い役所の人間に言われたのだとか。……もしかして山田さんか?


 カラカラ笑いながら話す爺さんは怪物の被害に遭いながらも、ある程度懐が潤っているので余裕があるタイプなんだろう。

 怪物の被害というと、うちには住む家を追われたり、折角構えた店を襲われたりと中々悲惨な解体依頼が多いので、ああいう爺さんの相手は正直気が楽だ。


「アレは? 何やってんだ?」

「アレは埃や細かい塵が飛び散らねぇようにしてるの」


 解体作業を進める田中のじーさんの横で、ホースで散水する椎名を見てカロンが言った。

 距離もあるし散水もしているから大丈夫だとは思うが、一応マスクもさせた方が良かったか。でもこの暑さだと息苦しいしなぁ。

 大人しくしているもう一人の見学者を見れば、さくらちゃんはぼんやりと解体の様子を眺めている。大丈夫? 熱中症になっていない?


「さくらちゃん、疲れた?」

「あ、いえ。大丈夫です! ただ、暑い中すごいなぁって」

「まぁ今年は馬鹿みたいに暑いからなぁ」


 元気な太陽には、もうちょっと加減という物を覚えてほしいな。

 一応見学の前にペットボトルを渡しておいたが、こまめに飲めよ。塩タブレットも追加で渡しておくか?


「ねぇ。どうして、そんなに楽しそうに壊れるのを見ているの?」

「どうしてって、面白いじゃん。ガラガラ崩れるのとか」

「面白い、かなぁ?」


 相変わらず楽しそうに解体工程を見ているカロンに、さくらちゃんが不思議そうに首を傾げた。


「孝樹さんもそうなの?」

「まぁ、感じ方は人それぞれだな。あそこにいる椎名とかは解体重機を運転してみたいって理由でうちに入って来たし」


 俺も重機で物を壊すのに憧れて会社を継ぐのを決めたし、別にそこまで否定する感性ではないと思う。

 決められたものを、ルールを守って壊すのなら誰も咎めないし、出力の仕方を間違えさえしなければ問題は無いからな。

 まだ小学生だし、情緒も成長途中なんだろう。一過性のものだと判断しているし、それが危険性を持つとは思っていない。


 それはそれとして。椎名は、そろそろ資格取らせてもいいかもな。以前から簡単な操作方法は会社の敷地内や、現場で田中のじーさんたちに教えるように頼んでおいたし。

 入社して一年経つし、もう仕事の流れも十分理解しているだろ。ならそろそろやりたかったことをやらせてやるか。


「壊すのってさ。楽しいし、やってやったー! って感じがするじゃん」

「そうかな? 壊すより作る方が達成感があると思うけど」

「えー? 作っても壊れんじゃん」


 若者の会話に耳を傾けながら自分用のコーヒーのペットボトルに口を付ける。

 すっかり汗をかいたペットボトルはまだわずかに冷たい。これが完全に常温になる前には一旦撤収させるか。


「コーキもそう思うよな!」

「孝樹さん!」


 仲良しだなぁ。


「感じ方は人それぞれだって言っただろ。作る方が達成感がある奴もいれば、壊すことに意味を見付ける奴もいる。ほら、喧嘩してると現場から放り出すぞ」

「ちぇー」

「ごめんなさい」


 子供二人を軽く諫めて、ついでに水分補給もさせておく。

 元気なのはいいけど、騒ぎすぎると現場の指示が聞こえない可能性があるからな。話すなとは言わないけど、テンションは上げ過ぎないように。


 二人が落ち着きを取り戻したのを確認して、再び汗を拭う。

 しかし暑いな。年々気温が上がっている気がするが、七月でこれなら八月はどうなってしまうんだろうか。


 浅く息を吐く。

 撤収するときコンビニよって、二人にアイス選ばせるかぁ。





社会科見学。


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