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魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
12/19

12 両手に花

 今まで全くそんなことないと思っていたんだが、どうやら俺は子供に変な懐かれ方をしているらしい。


「なぁなぁ! 今日もコーキはアレ乗んねぇの?」

「ダメだよ。荻野さん今日スーツなんだし、汚れちゃうでしょ」

「うっせ! オマエに聞いてねぇし」


 なんかさくらちゃんとカロンに取り合われているんだが? どういう状況なんだ、これ。

 とりあえず、両サイドから袖引っ張られて生地が傷むがシャツならまだ替えが効くし、上着車に置いて来て正解だったな。


 最近急に日差しが強くなってきたし、さすがに引っ付かれると熱い。六月も下旬になると暑さが続いている。

 毎年経理の母が箱で仕入れてくる塩タブレットは、皆ちゃんと消費しているんだろうか。作業中に熱中症で倒れるとか勘弁してくれよ?


「カロン、今日は様子見に来ただけでショベルには乗らない。さくらちゃんも、相手は子供だから」


 じんわりと暑い中、元気な二人を宥めつつ改めて考える。本当に何で解体現場前で二人に引っ付かれてるんだ? 

 もう後は廃材の運び出しだけでトラックの出入りもあるし、二人ともこんなところで屯しているんじゃないよ。危ないでしょ。


「カロン……?」

「なんだよ」

「ううん。知ってる人と同じ名前だったから」


 待て待て、この街カロン君二人いるのか? 最近の名付け事情本当にどうなってるんだ。

 生憎、他所のご家庭に口を出すほどの度胸を持っていないので、口には出さないが、せめて画数の多い漢字を使うのは控えてやってくれ。試験の際に不利になる。

 後、電話口で伝わりにくい漢字を使わないのもマストだぞ。


 アホなことを考えていると、現場の片付けの手を止めてこちらを伺っている柿崎さんとチョウさんと目があった。

 あぁ、これはからかわれるな。


「シャチョー、モテモテね」

「両手に花ですね」


 椎名ほどではないが、チョウさんも柿崎さんも割とすぐに調子に乗るんだよなぁ。

 あんまりからかってると、今度から差し入れなしにするぞ。実際には実行しないが、とりあえず心の中で悪態をついておく。


「花だなんて、そんな」


 かと思えば、何やらさくらちゃんは照れているし。皆、マイペースだなぁ。もしかしてこの空間だと俺が一番振り回される立場になるのか?

 ともあれ、年頃のお嬢さんだしお花扱いは気恥ずかしいのかもしれない。


「花なんて弱っちいじゃん」


 対してカロンは花には興味がないようだ。

 まぁ、ザ・小学生男子って感じだしなカロンは。それこそ昆虫だとか車だとかその辺が、興味の範疇って感じだろ。

 今のところ解体用のショベルカーにご執心のようだし。


「花は送る物だから弱くてもいいんだよ」

「送ったことあるんですか!? 誰に!?」


 え、何? どうしたの? 何がそんなに引っかかったのよ。

 先ほどのカロンと同じように、掴んだ俺の腕を大きく引っ張るさくらちゃんを宥める。この間恋バナもしていたし、そういうのが気になる年頃なんだろう。


「誰って……まぁ、俺にもそういう機会ぐらいあるさ」


 ただ、曖昧に笑ってはぐらかしておく。

 別にやましい話ではないが、ここで話すべきではないよなぁ。ガキの頃小遣い握りしめて母親に花を買いに行った、なんてよくある話だが、この場で気軽に話せるかと言われると、ちょっと難しい。


 カロンとはあれから少し話したが、さすがに両親について言及できていないままだ。

 本当に親がいないというのなら、この前言っていたボスの名前は施設かどっかの仲間かもしれない。

 ならなおのこと、話す時は色々気を付けておいた方がいいか。


「確かにそうなんだけど、そういう物かもしれないんだけど。本当に? やだ、嘘、何で? しかも知らない子とも仲良くなってるし」

「何あれ?」

「さぁ?」


 何やら小さい声で呟いているさくらちゃんにカロンと一緒に首をかしげる。

 女子高生わからん。


「なぁ、本当に今日は壊さねぇの?」

「ん。ここの建物はもう壊し終わっていて、後は片付けて綺麗にしたら建設会社に引き渡し」

「ふーん、つまんねぇの」


 むくれるカロンの頭を撫でてやりつつ応える。

 すねはしつつも大人しくしてくれるようで何よりだ。


「ありがたい話。この現場が終わっても、他の現場に移るだけなんだけどな」

「マジで? どこどこ!? 見たい!」

「美空中学の近くの。あ、言っとくけど。見学は俺がいる時、限定だぞ?」

「なんだよ、コーキのケチ!」

「ケチでも何でも。他の奴じゃ責任取れないの。俺がいない時は来ても入れないからな」


 仕方ねぇだろ。なんかあった時に、社員に責任取らせられないんだから。

 現場の安全が第一だ。俺がその場にいるなら俺の責任でどうとでもできるが、そうでないなら話は別。

 ただでさえ、何処の子供かもわからないのだし。現場の見学も俺がいる時限定でいいだろ。


「ずるい!」


 不意に、さくらちゃんが声を上げた。


「え、さくらちゃんも現場見たかったの?」

「荻野さんが仕事している姿はちょっと気になるけど、そうじゃなくて! 私も、名前で呼びたいです!」

「別に、いいけど」

「本当ですか!? やった!」


 本当に女子高生よくわからん。

 さっきまで切羽詰まった顔で何やら呟いていたかと思えば、花が咲いたような笑顔を向けて。


 嬉しそうに何度も「孝樹さん、孝樹さん」と呼びかけるさくらちゃんに返事をしつつ、頭を悩ませる。

 なんで俺、こんなに子供にモテているんだろ。



今日も元気にすれ違い

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