表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女と二代目。  作者: ささかま 02
魔法少女と解体業
10/17

10 魔法少女たちの日常

さくら視点


 可愛いって言った。可愛いって言った。荻野さん私のこと可愛いって言った!

 え? 夢じゃないよね? 夢じゃないよねぇ!?


 昨日はつい逃げ出しちゃったけど! 荻野さんが、私を可愛いって、言ってくれた!

 どうしよう。一晩経ってもまだドキドキする。今まで荻野さんのことを考えると、じんわり胸が温かくなったけど、今は騒がしいくらいドキドキして色んな気持ちが溢れ出しそうになる。


「心臓が痛いくらいドキドキする」

「あら、不整脈かしら?」

「もう! 二人して変なこと言って!」


 七海と梨穂と三人で通学路を歩く。車の通りがないのをいいことに三人で並べば、両サイドから冷やかしが飛んで来た。

 なんだか色々言われているけど、今日の通学路は平和そのもので。この見慣れたこの住宅街を、いつも守っているんだなぁなんてちょっとだけ得意げになった。


「さくらちゃん、素敵なことがあったのね」

「え?」

「だってお顔が幸せそうなんですもの」


 頬が緩んでいる自覚はある。でもそれを指摘されるとさすがにちょっと恥ずかしい。

 ぱたぱたと手を振って、頬に集まった熱を追い払う。


 えーと、うん。その、ね? 

 確かに幸せ、なのかもしれない。気になってる人に、可愛いって言ってもらえたし。悲しいかな、全然意識はされていないんだけど。


 だって、ずっとあの人は優しかった。

 私に対して、そういう、恋愛的な? 下心みたいなのがないからこそできる、大人の優しさ。

 魔法少女として日々怪物たちと戦っている私を、ただの子供として扱ってくれる。それがたまらなく嬉しかったの。


「もう、もう! 二人ばっかり好きな人といちゃいちゃして!」

「ち、違うよ七海! 別にそんな、いちゃいちゃなんて!」

「七海ちゃんも静一さんといちゃいちゃしたいんですよね」

「あの人がいなかったら私だってぇ」


 不満そうに唸る七海に梨穂が楽しそうに話しかける。

 七海は静一さん、よく皆でお邪魔する喫茶店のマスターさんが好きらしい。


 でも、常連のお姉さんがマスターさんと仲が良くて、おまけによくお姉さんに意地悪されるから苦手なんだとか。

 荻野さんはお姉さんの意地悪を「構いたいんじゃないか」って言っていたけど、本当のところはどうなんだろう?


「この前もあの人、せっかく静一さんが入れてくれたコーヒーに私の分だけミルク入れちゃうし」

「まぁ、カフェインにはカルシウムや鉄分を排出する作用がありますし、私たち未成年は砂糖やミルクで薄めて飲むのを推奨されていますわね」


 やきもきしている七海に、梨穂が思い出すように言った。梨穂は物知りだなぁ。

 コーヒーって砂糖とか入れた方がいいんだ。私は苦いの苦手だしいつもカフェオレとかミルクティーばっかり選んじゃうから知らなかった。


「七海ってブラックコーヒー飲めたんだ」

「……。だって、ブラックで飲めた方が大人っぽいし」

「あらあら。ミルクの入ったコーヒーはどうでした?」

「美味しかったけど~! それとこれとは違うの!」


 わたわたしながら答える七海に、荻野さんが言っていた「反応が返ってくるのが楽しい」ってこういうことなのかなと変に納得する。


 それにしても、七海はマスターさんが好きなんだなぁ。

 梨穂も知らない間に仲の良い先輩を作っているし。


 七海や梨穂のように誰かを好きになって好意を真っ直ぐに伝えることに対しての憧れはある。

 私もいつかは荻野さんと、なんて思ったりもする。でも。


「でも……今好きって伝えちゃうと、巻き込んじゃう、よね?」

「それは……そうね」


 魔法少女は危険と隣り合わせだ。

 変身を解くと怪我は消えるけど、怪物が向かって来た時の恐怖は残るし。今のところ大きな怪我をしたことはないけど、大怪我をしたまま変身を解いたらどうなってしまうんだろうとか。ちょっと怖い考えがよぎったりもする。


 私は嘘や隠しごとが苦手で、顔に出やすいタイプみたいだし。

 今も荻野さんに、自分が魔法少女だと隠しているのが苦しい。


 一度目は守れた。

 二度目も守れはした。でもお仕事の道具を壊しちゃって……。荻野さんは全然そういうこと言わない人だけど、余計な手間とか増えちゃって、大変だったと思う。


「なら、そうならないように。私たちが頑張ればいいんですわ」

「梨穂……」

「それに。破壊の使者さんたちも、意外と話せばわかるかもしれませんし」


 にっこりと、梨穂が笑う。


「もう、梨穂ってば楽天的なんだから」

「でもそうなったらいいよね」

「ええ。私たちはまだ彼らのことを何も知りませんもの。街を壊されるのは困りますけど、もう少しバイデントや破壊の使者たちを知ってから考えても遅くはありませんわ」


 カロンたちが何のためにイノセントジュエルを探しているのかはわからない。

 その理由がわかれば、街を壊すのをやめさせられる? そうなれば、きっともう誰も苦しまない。


 誰かが傷ついたり、悲しんだりするのは良くない。

 それが、荻野さんのような誰かを守るために行動できる人のためなら、なおさら。


 意地悪を言ったり素っ気なかったりもするけど、優しいあの人が安心して暮らせるように。

 全部終わらせて、このドキドキに身を任せられるように。

 今は。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ