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episode_1

15年前、事故に遭ったことで入院していた間家から文字通り勘当を受けたことがある。正直、普通の人間がそんな仕打ちを受けることはないとさえ思っていた。

遠神永利は、親戚の綾瀬永利の養子となることが決定されたのも不条理ではあった。親は存命しているはずだというのに。それはさすがにないだろう。

現実の社会はいつも、他人にとって都合のいい構造になるように設計されている。昔の人間が言っていた平等の方が間違っているのだ。

誰もが理念通り動いているわけじゃない。誰もが理想を考えているわけではない。自分の考えている理屈がただの妄想だとすら理解できない奴が多いのが悲しいところだった。

そういう意味では、永利はまだマシなところがあったのだろう。人間という生き物の尺度を間違えずに計測できる程度の認知スキルはあったのだ。

他人は他人のことしか興味がない。結局のところ、人間は自分が一番嫌いだということははっきりしている。この際、直接的な使命をして説明してもいいくらいだが。

人間が一体何のために生きているのか、分からなくなる程度には文明が発展してきているのもあるのだろう。100年前なら幸せだったかもしれない奴も居る。

スマホにおける他者の言動は実際の所、そういうものなのだろう。他人はもっと何かが欲しいと考えているが、問題は自分で自分を幸せにすることはできないのだ。

幸せになる事を自分が一番許していない。そういう意味では、一番過酷な状況を作って居るのは本人たちということになる。そう、誰もが不幸になればいいだけの話なのだろう。

感情が無意味に吐き出される、ただ動かないことで己の人間性を保っているだけなのだとすれば。きっと現状は何も変わらないのだろう。

他人によって突き動かされて行くのがその人間による考えなのだとしたら、それは半分奴隷感情のようなものだ。昔から人間は変わって居ないのだとすれば、自由こそ最大の罰になる。

今が一番幸せだと言える人間が居るのだとすれば、それは自分に関することを全て自分で解決しているような生き物なのだから。当然といえば当然ではある。

人間は他者をコントロールすることは実際あまり好まない。余程、心理面のダークサイドが深刻化していない限りは。そういう意味では、やはり答えがあることが前提なのだろう。

誰かが叶えてくれると考えている。もっとも、自己矛盾が自分に存在しないだなんて考えているわけじゃない。他人が考えていることはきっとそういうことなのだろう。

矛盾した倫理観が暴走する。人間は弱く、徹底して自ら答えを割り出すことはない。実際の所そういうところなのだろう、その人間がまともなわけがないのだから。

もし現代社会で多くの人間を救えるのだとすれば、そいつは人間じゃないと言っても過言ではない。人間もまた人間なのだから、限界はいつかどこかに来るのだ。

来るべき時代に備えて、ただ綾瀬永利は適当な職について仕事をするだけの日を送って居る。そもそも、社会に求める欲望が全て同じだと誤認することが最大の愚かさではないか。


永利が切断したヒトガタの生き物は、広く血飛沫をまき散らして地面に崩れ去った。過度な赤色、中身から零れ落ちた内蔵からは嫌な臭いしかなかった、

敵であるグール、屍であるにも関わらず動き出している存在はまだ戦意を失っていない。肌が変色し、異常な血の匂いを吐き散らしている化け物は、こちらを襲って来た。

持っているのはナイフや金属バットだ。元は、街でうろついていた人間が吸血鬼化したものだろう。そのスピードは、残念ながら遅いわけでもない。

『人間並み』のスピードで攻撃してくるグール。その武器を、永利は持っていた武器で切断することに成功した。それによって、敵はよりバランスを崩すことになる。

容赦なく、永利は敵を切り刻んて行く。既に死んでいる以上は、相手を考えてやる必要もない。ただ、敵がある程度知能を持っている分、厄介な性質を持っている。

声を上げるグール。何とかやり過ごそうとして距離を取ろうとしているのだろう。ある程度、戦略を取るという知能が備わって居る分に動く生き物だ。

死んでいるにも関わらず、生き物と形容するのもどうかとは思うが。ただ、永利はそれよりも速い速度で相手の背後に回った。

暗殺者のように動き、グールの背面へ移動したあとにズダズダに体を引き裂いていく。呪いによって浄化されたグールの体は、二度と戻らないだろう。

やり過ぎという言葉など存在しない。魔力を失い、肉体の限界を超えたグールは自動的に砂となって消えていく。それなりの戦果は出たが、もう敵の姿はなかった。

月が明るい。こうして、廃墟都市となってしまった倉川市の中で自分はグール狩りを行っていた。仕事として行うには、やはり刺激的過ぎるだろう。

血の病、ブラッドカーストと呼ばれるものによって人類社会に新しい人種が産まれる。特に大都市に突然現れた病は、人を変化させるのだった。

綾瀬永利は、力を制御できずにグールとなった元人間の後始末を担当している。お前ぐらいの人間なら楽勝と言われて引き受けたが、血生臭さはかなりのものだった。

元は日本の大都市として栄えていた倉川市だったが、血の病が大きく広まったことで廃墟都市と認定される。人間は住んでおらず、非常に高い鉄鋼で囲まれているのが現状だ。

時々その街の中に迷い込んでグール化した犬すら出てくるため、非常に危険であることは人類にとっての常識となっている。

後始末を何度も繰り返してきたわけだが、まだ永利にもよく分からないところはある。月の近く、月光蝶と呼ばれる怪異がそこにあった。

捨てられたビル。本来なら裕福な人間が住むはずだった場所も、蝶の化け物によって支配されている状態にあった。正直、よく分からないというのがそこだった。


綾瀬家の養子になってからの学生時代は、むしろまだ平和なひと時ではあったのだろう。むしろ知識を叩きつけられるだけの日々としては、安い日常だったかもしれない。

知識といっても、普通の人間の勉強ではない。吸血鬼の対処法、あるいはその進化過程等。あらゆるオカルトの知識を覚えさせられる。

綾瀬家によってではなく、サクラメントという対吸血鬼殲滅機関による通信教育だった。達成できなければ、もっと暗い場所に住まわせられる可能性すらあったという。

人間にとってはむしろ貴重な時間であるが、ただそれを青春を呼べるほど時代が緩やかというわけでもない。

吸血鬼が人類社会の中に存在するようになった年代は1990年。血の病によってあるヒエラルキーを越えた一種の怪物。

人間の血をエーテルへ相転移させることができる、一種の進化の到達。というらしいが、永利もまたその血の病を患っている。

それにはランクがあるが、高ければ高いほど、そのブラッドカーストの呪いが深刻化していって人から外れていく。

そんな出鱈目な世界観の中で生きていく術は、ブラッドカーストの最上位に存在する吸血鬼の領域に近寄らない事と言われる。

「・・・・また、退屈なことだな」

朝。起きた後には妹と色々話をするなどをして日常を過ごした。といってもあまり覚えていないことだが。

正直、こうしてただ何かを生きるにしても別にたくさんのイベントが舞い降りるわけでもなかった。妹の年齢は17歳。

現時点での綾瀬永利の年齢は25ということになるが、血のつながらない妹の面倒を見て居られるほど大人になった気はしなかった。

別に面白いとも思わない日常のスキップ。ある意味、それは永利が教育され続けることによってできた思考回路だろう。

無駄な行為は避けている。というよりは、無意味と言った方がいいかもしれない。それを大人と取るべきか否かは個人の自由だが・・。

大体現実が過剰なほどおかしいのだから、むしろその行為は貴重なはずだった。しかし、永利にとってはもうどうでもいいことなのかもしれない。

机の上にあった、吸血鬼用に開発された銃器をチェックする。M10666、ブラックオルトと呼ばれる一丁の銃器。

外見はコルト系統の銃器に似ているが、その性質に関しては全く別物となっている。材質に関しても、オカルトめいたやり方で強化されているらしい

実弾の方も本来のものとは異なっており、一発ほどに入念な洗礼効果によって吸血鬼へのダメージが増大化している。


対吸血鬼仕様の武器は他にも色々あるが、そのなかでも昨日の夜使った呪剣は一級品に近い物だと聞いている。永利本人は、戦いに使っているだけであまり興味はないが・・。

そういった、吸血鬼、あるいはグールを殲滅するための凶器の数々を扱い、訓練されることによって永利は普通とは違う人間になっている。

たったそれだけの日常を繰り返してきたと言えばいいが、ロボットというよりは殺人鬼に近い。

「ご主人様」

ドアがノックされ、入って来たのはメイド服を着た美少女。といっても、本当に人間というわけではない。

この時代になって、人工知能の発達に伴い製造された家政婦ロボット・・と言うべきか。しかし、家政婦という言葉自体が死語のためどう言ったらいいか悩む。

メイドというニュアンスも若干危ういが、そこは文化という形で濁されているようなものだった。こうして、ロボットは人間にとってのパートナーとなっている。

綾瀬家の家庭内を守るロボット、というよりは自動人形と言った方が良いかもしれない。そっちの方が、ある意味現状とマッチしたニュアンスになっている。

正式名称はUni Prise。家事労働を重点にして開発された人工知能ロボットは、こうして自我を持って家の中を動き回る。

「お部屋の掃除は終わりました。ご用件があれば、次のタスクを開始することができますが。どうしますか?」

「あぁ、他にすることがないならもういい。俺は外に出るから」

「かしこまりました」

そう言って、永利は上着を来て家を出ることにした。簡素な感覚になっているかもしれないが、生憎他にやる事もない所がある。

なので、自発的な監査行動・・。町の中に、吸血鬼の輩が居ないかどうかをチェックする長旅が始まる。

本来なら永利がやる必要はないが、ただ本人にとって重要なのはどう暇をつぶすかだった。

吸血鬼の力を持っている以上、永利本人の自由は制限されている。それは同じ力を持った人間にも言えることだ。多くの人間が管理され、そしてロボットと一緒に生活している。

メイドロボットも、永利を監視するために用意されたものだ。決して、永利本人の趣味で用意したものではない。


所持品や行動も全てロボットで監視されているので、本当になにかやらかせば永利の立場も危ういことになる。

精々、永利の自由を認められることがあるとすれば食事ぐらいだろうか。

ただあるわけではないものを求める。一貫性の無い地平線。ただあるというものが、ただ空虚に流れているような感覚。

求める者が何であれど、その一瞬の中で見えているものは変化しない明るさの在処なのだというらしいが。

辺りには見えているのだろうか。そこに精神性という中から外へ出るためのモラトリアムが棄却される時に起きるシステムのようだった。

それが辛うじて自分の中にある色の何たるかを極端に拡大化させていった時、あるのは見違えそうのない空気だった。

そう感じてもいいのだろうと。自分はただ思うだけで。ただそれだけで何か変わると言うのならきっとそれは誤解だったのだろう。

脆弱さの次に起こるその青い光は一体何だったのだろうか。自分に四季があるのだとしたら、恐らくかなり一辺倒なものに違いないと考えている

といっても、別に自分がそうおかしいものだけで出来ているかのようだった。結局、力を持て余しているだけだと言っているようなものだ。

永利というその人生の中にある、特別として意味を持たない彩色をどう説明するかに必要な段階は極めて混沌としてしまいそうだと言われる。

それを人間と称せるのなら、きっと永利という生き物はそこにあるために存在しているのだろう。それぐらいは自分でも分かって居ると自負する。

空色に置いて考えられることは、その輝きの中に潜むものが哲学の中に存在しているということでもある。その際、必要な物理量がどの程度かははっきりしないらしい。

その暗澹とするものの中にとどめとして打ち込めるものがあったとしても、それだけで有意義なものを得られるわけではないのは永利も承知していた。

誰がなんでもそれだけで生きる術ではないと知るのであれば、きっとそれがアヤだということを分かってもらいたいらしい。

分かるというものが全て分からないものに変化してみえてしまった時があったとしても、自分の中に剣を持っていることを自覚できていれば問題は無いのだ。

それがヘクセンナハトが記した分類学上の真理性を元にしたカルマの遺物であることをどうにか考え直してほしい。そう、永利は言ったはずなのだが。

どういうわけか、議長である老人は聞く耳を持たず、ただ物騒な武器を永利に押し付けて消え去ってしまったのが痛いところではある。


「ん・・?」

ふと、永利の目に移ったのは一人の金髪少女だった。十分なくらい目立つ人間であったためどうしても見とれてしまったのだろう。

ただ、それだけではないものが見えていた。その少女の後ろについていく人間。いや、人間ではないものがはっきり見えていた。

永利には分かる。そういうオーラが湧き出ているのだから、少なくとも追っているのは半人間のグールに違いない。

仕方がない。追尾してグールを倒してやろう。むしろこういうことがあると初めから分かって居て行動しているのだ。

暗い、都市の中へ入る。密集し過ぎている空間の中へ入っていくと、やはり場所が混沌となっているのがはっきりとして見えてくる。馬鹿馬鹿しいぐらいの迷路だった。

10階以上はある建物。むしろ機能しているほうがおかしいぐらい、その場所は曲がりくねって居る。というより、入ったら出てこれ無さそうだった。

暗い道。ただそれだけで吐きそうな気分になって来るのだが、問題はそれだけではない。ぐちゃりと、内臓のようなものがどこか放置されているようだった。

首をかしげる永利。どうしてこんなものがたくさん存在するのか一瞬わからなくなったが、正直どうでもいいと言う感じではあった。よくはない。

きっと、動物を調理した時に不必要になったものだろう。こんな場所に放置するとは、近隣住民もさすがにどうかと思う。こんなものでは治安の悪化も注意しないといけない。

というより、十分治安が悪いのだった。目の前のグールを追っているのだから。もう少し、様子を見て、殺しやすいところまで移動してくれるとなお嬉しい。

早く移動してほしいのだが、生憎その馬鹿グールは相手を見失っているようだった。肉体的な機能はある程度ちゃんとしているが、やはり知能にはダメージがいきやすい。

失敗したグール。吸血鬼によって血を吸われた元人間は、その吸血鬼の下僕として再利用されることになる。それによって出来た、力を持たない下級兵士。

むしろ最下級兵士と言った方がいいかもしれない。その程度には使い勝手が悪いとされており、一体だれがこんなものを使役しているのか。

ただグールのほうも意味の分からない行動を取っていた。まるで出来の悪い木偶人形だったし、そもそも腐って居る以上何の商品価値も持たない駄作だった。

いや、駄作以前の問題だが。どっちにしてもグールはグールなりに暴れだそうとしている。正直、もうそろそろ殺してしまってもいいかと考えた。

呪剣を握る。一体どうやって作り出されたのか、議長らに聞いてみたことはあるが全く相手されなかったのを思い出す。

材質はかなり頑丈で、切れ味もナイフの中ではトップクラスの逸品に入る。逸品といっても、別にそう褒めて言いものでも無い気はする。

がくがくと変な動きをするグール。ただ、それがある意味面白さを感じてはいたが。仕事上、グールは見つけ次第殺すのが永利の契約だった。


なので、命令通りにそのグールを解体する。出鱈目に、効率よくそのグールを真後ろから殺戮するのだった。ぐちゃぐちゃとした音が鳴ったが、それはそれとして味はいい。

地面に崩れ落ちるグールの死体。正直、ゴミの後始末みたいだったが。砂になってくれるだけまだマシと言いたいものだった。

これで死体のまま残っていた場合、永利がまず管理しなければならない。困った話だが、全て戦うだけでは済まないのが現実の悩み事だった。

ゲームのようにいかないのは分かって居るが。分かって居るからこそどこか辻妻の合わないメギドが発生しているようだったと永利を悩ませる次第でもある。

「感情は済みましたか。正直、後ろから追ってこられると吸血鬼の少女も困って殺してしまいそうです。マル」

いつの間にか目の前に居た金髪の少女。全くといっていいほど要領を得ない何かがあった気がする。よく覚えていないが、そういうことなのだろう。

返事ははい、でいいいだろうか。それともいいえだろうか。何か考えるとしても何処かヘンテコなものになりそうだった。

「おはよう、今日はとてもいい元気だね」

「天気では?」

「そう元気だ」

流石に馬鹿過ぎる発言だった。それだけ自分が緊張していたのだろう。ていうか言い直せていないじゃないか。

「はぁ。困った人ですね。後ろからついてきて、私を狙っている困った子を始末してくれたのは大変感謝したいところではあるんですけれど。

ただこうして無暗に近づくと、貴方までも結局駄目になりそうなのですから。そう、これはある運命の神様に直訴しないといけませんね。

結局全て神様のせいなんですから、とりあえず吸血鬼の事に関してはともかくとして。私を見物している理由はなんでしょうか。そこの人間」

「そんな事を言われるほど酷いことをしたつもりはないけれど。助けたんじゃなかったのか俺は?」

「生憎、そんなものを受け溜まれるほどのことはないと考えていましたが。やはりそちらにも何か苦痛がおありのようでしたね。名前は何でしょうか?」

「名前て。まぁ、名乗らない方がやばいけれど。どうしてか名乗るのが嫌になったんだが。何でだと思う?」

「私のような美しい吸血姫<レディ・カーミラ>にであったことで心理的な摩耗が始まってしまったようですわね。関心関心」

「違う」

何だろう、少し期待した自分が相当馬鹿なようにも感じられて来た。感じられてしまったわけだけれど、この際適当に考えてもいいだろう。

「じゃ」

「待ちなさい」

「何だよ」

「何でいきなり帰ろうとするのですか?」

「もう要件は終わったじゃないか」

「終わってません。いきなり人を助けて帰るとかどこのヒーローですか。貴方だって不審者ですよ?」

「じゃぁ、何でこんなヘンテコな路地裏に来たんだよ」

「趣味です」

「趣味悪すぎないか?内蔵とか落ちていたけど・・」

「いい匂いがしますね」

「しねぇよ」

「この際、ここでバーベキューをするのもいいですね」

「近隣住民がストレスで自殺するから止めろ」


一体何を言っているのかよく分からなくなってきた。正直、この金髪少女を相手にするには危険すぎる気がする。十分に危険だからこそ注意が必要になって来たのだが。

しかし相手には敵意がない。敵意というものがないからといって油断はできない。何処かに武器を隠し持っているかもしれないのだから。

自分がそうであるかのように。相手も何らかの強みを持っている。凶器が狂気として現れた場合の対処手段として、まず近寄らないことを優先するべきだが。

「さて、お名前を聞いても良いでしょうか。よろしくないのでしょうか?」

「綾瀬永利だ。そっちは?カーミラが名前なのか?」

「いいえ。そちらは称号みたいなものです。吸血鬼として産まれた女の子に与えられた、一種の洗礼名」

「洗礼ね・・まぁ、それはそれで凄い事だけど。自分から敵だって言っているようなものだぞれ」

「えぇ。でも敵ではありません。私は保護される対象ですから。貴方は、関係者ではないのですか?」

「いや。関係者って?何処の?」

「殲滅騎士団」

「殲滅・・?聞いたことないが・・」

「そうですか。違う方の方ですね。でもちょうどよくないんですけれど、ここで貴方を殺してしまってもいいでしょうか」

「おい。お前の名前は?」

「私の名前を聞くなどとはしたない人間ですね」

「いつの時代の人間だよ。いや、吸血鬼か」

「名前を聞くときは跪くべきですわ。この私の下に」

「じゃ」

「だからいきなり帰らないでください」

「茶番は飽きたから失礼するよ」

「え?ちょっと?本気で帰るのですか?!」


そうして、金髪少女の吸血鬼を救った永利はまっすぐ帰宅するとした。良い事をした後は気持ちいいと、そう自分に言い聞かせている。

向こう側へ歩いて行ったことでとりあえず外に出れると思っていたが、どうやら錯覚だったらしい。それどころか、先ほどの金髪少女による攻撃があった。

そういえば殺すとか言っていた気はするが、しかし本当にそれをやろうとする辺り、吸血鬼としての本能が生かされているらしい。

それはそれで何となくいい話にも聞こえてしまいそうだが、しかしそう簡単に殺されてやるつもりはないので永利はすぐにその攻撃を回避した。

虎、いやヒョウ?四足獣の使い魔が攻撃してきているのは分かった。グールに比べ体が破損していないので、見た目はむしろいい方である。

動物的な攻撃行動を回避しつつ、そいつの体を呪い剣で切り裂く。数回攻撃したはずだが、どういうわけか獣はそのまま暴走するように突進してきた。

壁を蹴って回避した後、呪剣の力を引き出す。赤い呪いが倍加したあと、敵をカウンターぎみに切り裂くことに成功した。

複数回の攻撃でようやく使い魔をしとめたが、まだ相手が残って居るらしい。今度の敵はガーゴイルだった。

あの吸血鬼は使い魔を使役するのが得意らしいが。こんな場所で使ってくるあたり、余程永利の行為が嫌いだったのだろう。

ガーゴイルの持つ大きな斧が振り上げられる。それを何とか回避しつつ、その敵を八つ裂きにする形で返してやることにした。

それによりすぐに戦闘終了することになり、残ったのが、不満そうな吸血姫<レディ・カーミラ>だった。

どうでもいい、いやあまりよくないが。こうしてまだ戦力を遺している辺り、かなりランクは高いタイプなのだろう。

「低ランクの雑魚のくせに生意気ね。本当は奥の手があるけれど、奴との戦闘が終わらないと・・」

「じゃぁそいつと頑張って戦ってくれ。こっちは別に、そう本気で戦いたくないんだ」

「待ちなさい馬鹿」

そして、歩いて近づいてくる少女。吸血姫<レディ・カーミラ>は、永利に突然キスをするのだった。



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