ep.3はじめての試合
試合当日、体育館は思ったよりも人が集まっていた。観客席に座るのは、ほとんどが相手チームの応援だ。翔太たちはまだユニフォームが揃っておらず、ばらばらの服装でコートに立つ。翔太は緊張と不安で胸がいっぱいだったが、それでもやるしかないと自分に言い聞かせた。
相手チームは「緑ヶ丘高校」。そこそこ有名なバスケ部で、体格もしっかりした選手たちが揃っている。試合前のウォームアップからして、彼らの統率が取れた動きに圧倒される。翔太はチームメイトと視線を交わしたが、全員が同じように緊張した表情をしていた。
試合開始のホイッスルが鳴り響き、最初のジャンプボールは田中が制した。しかし、相手のディフェンスは堅く、ボールをうまく回せない。翔太はボールを受け取り、必死にドリブルで相手をかわそうとするが、すぐに相手のプレッシャーに押され、パスミスをしてしまう。
「やばい…このままじゃ…」翔太は焦りを感じた。練習ではうまくいっていたはずのプレーが、試合ではまったく通用しない。相手は巧みにボールを奪い、速攻でゴールを決める。点差はどんどん広がり、翔太たちは次第に追い詰められていった。
ハーフタイムに入ったとき、翔太はベンチで頭を抱えた。チームは全く噛み合っておらず、田中もイライラしている様子が見て取れる。だが、彼は冷静さを保ちながら、「まだ終わってない」と静かに言った。
後半戦が始まると、田中はその圧倒的な身長を活かしてリバウンドを取り続けた。少しずつチームが持ち直し、翔太もなんとかシュートを決める機会が増えていく。しかし、それでも相手のペースには追いつかず、最終的には大差で敗北してしまった。
試合後、翔太は悔しさを噛みしめながらコートを見つめていた。「こんなんじゃ、勝てない…」その言葉が胸に重くのしかかった。だが、田中はそんな翔太の肩を軽く叩き、言った。「これからだ、もっと強くなろうぜ。」
この試合が、翔太にとってのターニングポイントとなる。