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短編まとめ

婚約って契約ですのよ、婚約者様。

作者: よもぎ

まぁ、アラン様。おいででしたの?

知らせがなかったものですから勉学などをしておりましたわ。

でも侍女たちはきちんとお茶を出したようで、何よりです。



それで、訪問の先触れもなくいらしたのはどのようなご用事でしょう?

はい。ええ。婚約の破棄、と。

それはお互いの家の当主が話し合うべきですわ。わたくしには何の権限もございませんのよ。

ですからまずはアラン様、ご自身の御父上にプレゼンなさるべきでは?



え?断られた?……まあ、でしょうね、としか。

わたくしたちの婚約を契機に、お互いの所有する商家で商いの契約が進められておりますし。

そちらの持つ山の、山肌で育つ果実を、当家の生産する砂糖で加工し共同で販売する計画、ご存じ?

はい。当家のほうが格上として商談が成り立っております。

ですのでご当主様は余程の旨味がある話でないと頷かないと愚考しますわ。



時に、なぜ婚約の破棄を?

…………なるほど。

ミラ、今の話聞いていて?リュシーも聞いていたわね?

ええ、証人になってちょうだいね。

ではアラン様、あなたの有責での婚約破棄を進めさせていただきます。

望みは叶いますので即刻当家よりご退出を。



ええ?有責の理由?

今ご自身で不貞を証言なさったではないですか。

真実の愛だなどという妄言で言い逃れされておりますが、婚約者でもない馬の骨と元気に励まれたのでしょう?ご自身の意思で?

不貞以外の何だというのです。ああ気持ち悪い。


ミラ、騎士を呼んできてちょうだい。馬車に詰め込んで送り返すわ。


全く、アラン様は婚約がどういったものか教育されておりませんでしたの?

家と家が結びつく重要な契約ですのよ。

しかも此度は商売に関係するのです。

だから相性の確認を何度もされたでしょう。

最低限無難に付き合っていけるかどうかを、ですよ。

あなたの弟君も一緒だったでしょう?

どちらかがわたくしの相手となればそれでよかったのです。

それで、どちらも大差がないから、同い年のあなたになっただけです。

わたくしがあなたをぜひにと望んだことなど一度もありませんわ。



そもそもあなた、婿入りでしたわよね?

わたくしが一人娘なのですから当たり前なのですけれど。

その誰とも知らぬ馬の骨と、どうなるおつもりで?

家はあなたの弟君が継ぐのですよ?

後継者としての教育を一切受けず、当家で種馬をする以外の役目を持たないあなたが、どう生きるつもりだったのです?

家業の手伝いを出来るだけの知識も教養も伝手もないのに、弟君の補佐などできようはずもありませんわ。

ならば貴族籍から抜かれて平民になる他ないのですけれど。

ああ、もしかして不貞のお相手は貴族ですの?種馬を欲する嫡女?

違う?ではやはり平民になる覚悟でしたのね。


まだ違うのですか?

え?家を継ぐ?正気とは思えませんわ。

世間を知らぬ幼子でも、もうちょっと道理の分かる発言を致しますよ。

先ほども申し上げましたけれど、後継者には後継者教育が必須ですのよ。

それを受けなかったアラン様が後継者になることは有り得ません。

今から後継者教育を施されることもないでしょう。

既に弟君が熟し、才覚を見せつつあるのに、何の実績もなく汚名を家に着せたアラン様に、家を継がせる必要はないでしょう?



ああ、汚名だけでなく賠償金の支払いもその両肩にのしかかりますわね。

商談は全て破談。共同の商売も無しになりますもの。

そのために掛かった経費であるとか、機密保持の契約ですとか、そういったものへの対価もそちらに全て請求いたします。


冷たいだの何だの仰いますが、これは契約の話でしてよ。

アラン様が不誠実にも契約を破綻させたのですから、落ち度のあるそちらの家が補填を行うのは当たり前の話です。

よろしくてよ?裁判を行っても。

調査の上、不貞を世間に知らしめた上で婚約破棄。同時に賠償の支払いとなるだけですもの。

一段階挟むのでも別に問題ありませんわ。

多少金銭を積めば速やかに本裁判となるでしょうし、その金銭もそちらに請求するだけですし。



ああ、ミラ、ご苦労様。

ではこの方を拘束して、おいでになった時の馬車に詰め込んでいただける?

身動きが取れず大声を上げられないならどのようにしても構わないわ。

でも窒息して死なれても後味が悪いから程々にね。



ではアラン様。

お手紙、差し込んでおきますわね。

御父上にきちんとお渡しになってね。

こちらも父上に今から話を通しますから、まあ、話がすれ違うことはないとは思いますけれど。

法廷でお会いしないよう、お互いに物わかりのいいようにふるまいましょうね?

ごきげんよう。

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