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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

それはとある童話の本

作者: もふスキー

昔昔、とある国に邪悪なドラゴンがやって来ました。

邪悪なドラゴンは、その国の王様に言いました。


「五日後、お前の娘と供物を差し出せ。

差し出さなければこの国を滅ぼしてやるぞ。」


王様には一人娘の美しいお姫様がおりました。お姫様は話を聞いてしくしくと泣いてしまいました。王様も自分の可愛いお姫様を邪悪なドラゴンなどに渡したくはありません。さて困った。

その時1人の金髪の騎士が王様に声をかけました。


「王様、私がドラゴンを倒してきます。ドラゴンを倒せば我が国の宝であるお姫様を差し出さなくて済むのですから。」


王様はその騎士へ、本当に倒せるのか?と聞きました。すると騎士は必ず倒して来ますと胸を張るので、その騎士に任せることにしました。


騎士はその日のうちに旅立つと四日後にはドラゴンを倒してお城に帰ってきました。


ですが、騎士はドラゴンの呪いを受けて身体の半分に鱗が生えてしまったのです。瞳もまるでドラゴンの様に恐ろしいものとなっていました。


それでもお姫様はその騎士が、帰ってきたことを喜びました。そして自分の騎士になって欲しいと願いました。

けれど、お姫様が何度お願いしても騎士は首を横に振るばかり。

王様がどうしてなのかと聞いてみると、呪われた体でお姫様の傍には居られません。と、それだけ言うと騎士は姿を消してしまいました。

お姫様はとっても悲しくなって王様にお願いしました。


「お父様、どうか私を助けてくれたあの優しい騎士を救ってください。」


王様はうーん。と唸って呪いを解く方法を大臣に聞きます。すると大臣は魔女について話し始めました。


「北の森になんでも出来る魔女が居るそうです。その魔女なら呪いが解けるかもしれません。」


お姫様は喜んで、私が魔女様に会って聞いてきます!と王様や大臣が止める間もなく、お城を飛ぶように出て行ってしまいました。


北の森のおうちを訪ねるとひとりの魔女が出迎えてくれました。喜ぶように勝手に動くカップやポット、お菓子やサンドイッチがお姫様の前で賑やかにお茶会の準備を始めます。


驚いたお姫様はなんだかとっても嬉しくなって魔女とお菓子やサンドイッチが可愛く踊る楽しいお茶会をしました。


そして、お姫様は魔女に話をしました。



「魔女様、 私は助けたい方がいるのです。その方は優しくて私を助けたばっかりに呪いを受けてしまったのです。その呪いの解き方を魔女様が知っていたら教えて欲しいのです。」


「あらあら、それは大変。私が知っていればいいのだけれど。その呪いは一体どんな呪いだい?」


「その方は、体の半分から鱗が生えてしまったのです。眼もまるでトカゲの様な瞳をしているのです。」


「ほうほう。トカゲかい。どこかでヤモリでもいっぱい狩ってきたのかな?」


「いいえ、違いますわ。その方はとても強い騎士で私を助ける為に邪悪なドラゴンを倒してきたのです!」


お姫様の話を聞いて、魔女は見る見るうちに顔を真っ赤にして怒りだしました。


「よくも……!よくも!!あれはトカゲなどではない!立派なドラゴンだった!私の友だった!」


魔女の怒りに合わせてカップやポットやお菓子達がバタバタと暴れます。お姫様は怖くなってその場から逃げ出しました。お姫様は魔女の友達が邪悪なドラゴンだったなんて知らなかったのです。

逃げるお姫様にカップやホウキ、薪などが飛んできます。

危ない!と誰かが飛んでくる物を剣で叩いて落としました。お姫様を探して魔女の家まで来ていた騎士がまたしてもお姫様を助けたのです。


魔女は追ってくると、森のツタや木を使って騎士とお姫様を追い詰めます。


「お前達を殺して食ってやる!姫はサンドイッチのハムに!騎士の肉は硬そうだから煮込んでシチューにしてやろう!」


魔女はとんでもないことを言います。

騎士は、あんな事を言うとは悪い魔女に違いない。魔女を倒さなければ!と思いました。


騎士はお姫様を背に魔女へ向かって走り出しました。ツタを切り、飛んで来る大木を躱し、魔女へと剣を突き立てました!


ぎゃぁぁ!と魔女が黒い霧になって消えると、勝ったはずの騎士がその場に倒れてしまいました。お姫様は慌てて騎士に駆け寄ります。騎士は息をしていませんでした。あの魔女が騎士の魂も連れて行ったに違いありません。お姫様はポロポロと泣き出してしまいました。


「私はあなたを愛しているの。だから助けたいと思っていたのに、死なないで。

神様、この優しく強い騎士をどうかお救い下さい。」


お姫様が神様へお祈りすると騎士が光に包まれて、体から黒いモヤをどんどんと出していきます。顔や体にあった鱗も剥がれて騎士はパチリと目を開けました。その目はトカゲの様な恐ろしい物ではなく、金色の綺麗な人間の目をしていました。


「お姫様ありがとうございます。あなたの涙と祈りが、呪いと死の淵から私を救って下さいました。」


お姫様は喜んで、神様に感謝の祈りを捧げました。すると寒かった北の森にお花が続々と咲き乱れました。

春が訪れたのです!


お姫様と騎士がお城へ戻ると、心配していた王様も大臣も大喜び!街はお祭り騒ぎで宴も盛大に行われ、二人は末永く幸せに暮らしましたとさ。








周りの、自分よりも幼い子供たちにも聞こえるように音読をしていた幼い少女は、得意げに、そして読み終えたという確かな満足感を全面に押し出して本を閉じた。大抵の子供達は目を輝かせたり怖がったりしていたが、ただ1人少女と同じ歳頃の黒髪で半分鱗の少年は表情がほぼ変わらず、どこか上の空で時々窓辺を見ていた。



そしてその窓辺で足を組み頬杖をして、見えざる魔女はその光景を胡乱げに見つめているのだった。


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