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エピローグ 貴様に明日は無い...

次は政志。

なぜか後半がギャグになってしまった...

 色々あったが、紗央莉と結婚して10年になる。

 俺と紗央莉の間に三人の娘が生まれ、美愛を含めると六人家族になった。


 長女の美愛も今年中学生になり、妹達のお姉ちゃんとして頑張って面倒をみてくれている。


 今日はお義母さんが朝から娘達を連れ、一緒に習っているスイミングスクールの主催する大会へ出掛けた。

 そのまま娘達はお義母さんと実家に行き、今日は向こうで泊まる予定だ。


「どうしたの?」


「いや...別に」


 昼食の後、紗央莉が心配そうに聞いた。

 今年38歳になる紗央莉は今も綺麗だ。

 俺は紗央莉を今も愛している、それは嘘偽りの無い愛なのだが...


「それじゃ行ってくるね」


「気をつけて...」


 夕方の仕事に出る紗央莉を見送る。

 今日は土曜日で俺の仕事は休みだが、レストランで働く紗央莉は今日も仕事。


 飲食業なら仕方ないのだが、最近俺は悩んでいる。

 それは紗央莉の勤めるレストランに最近表れた一人の男が原因だ。


「元婚約者か...」


 紗央莉の元婚約者、浜田亮二。

 奴が半年前から紗央莉の勤めるレストランへ頻繁に顔を出す様になったのだ。


 その事は紗央莉自身から聞いた。


『13年振りに会ったんだけど、今になったら何であんな奴とって思うわ』

 さっぱりした顔で紗央莉は言ったが、俺の心中は穏やかで無かった。


 史佳によって傷つけられた心。

 それは今になっても、まだ癒えてなかったのだ。

 もちろん紗央莉の事は信じている。

 俺の事を今も好きだと言う言葉に、嘘はない、自惚れじゃなくそう思う。


「だがな...」


 何の下心もない男が、昔の婚約者が働く店へ頻繁に顔を出すだろうか?

 話によれば婚約破棄の際、男の両親は紗央莉の家族を散々罵倒し、

 奴も『二度と顔を見たくない』とまで言ったのだ。

 それを今さら過去の事とし、のうのうと紗央莉の前に姿を表す神経が分からない。


 紗央莉は現在雇われだが、レストランの店長を任され、頑張っている。

 店の経営は順調、たがらこそ飛び回る(亮二)を駆除しなくてはならない。

 手遅れになってからでは遅いのだ!


「政志君」


「お義父さん」


 お義父さんが顔を出す、どうやら頼んでいた物が用意出来たのか。


「ほら、昨日届いた書類だよ」


「ありがとうございます」


 それは浜田亮二の素行を興信所に調査して貰った報告書。

 2ヶ月に渡って調べられていた。


「...なるほど」


 浜田亮二は紗央莉と別れた後、会社の同僚だった女と結婚をした。

 それは婚約破棄から僅か半年後の事で、ひょっとしたら紗央莉と別れる前から二股をしていたのでは?そう邪推してしまう。

 今は小4と小2、二人の男の子に恵まれていた。


「つまらん奴...婚約破棄して正解だったよ」


「ですね...」


 亮二は過去に二回浮気をしており、次は離婚と妻から言い渡されていた。

 5年前は亮二の勤める会社に出入りする女、3年前は自分の子供が通っていた保育園の園児の母親だったり、本当にろくで無しだ。


「よく奥さんも別れませんね」


「まあ、一番下の子供がまだ小さいからだろう」


 お義父さんが吐き捨てた。

 確かに子供は両親揃って育てるのが良いに決まっている。

 だが、それは健全な夫婦である事が前提じゃなくてはならない。


 虐待や育児放棄なんかは言うに及ばず、配偶者を裏切る行為は最低だ。

 これは史佳との過去に於いて、ズタズタにされた元配偶者である、俺の気持ちなのだ。


「傑作だ」


 お義父さんが呟く。

 その目は心底嬉しそうで、尚且つ光を宿して無かった。


「どうしました?」


「いやなに、紗央莉まで不倫女の様に罵倒して、保育士が出来なくなる噂を吹聴した、その息子が不倫して...しかも保育園の親同士?

 これが笑わずに居られるか...」


「確かに皮肉ですね」


 史佳の事は親であるお義父さんとお義母さんにとって痛恨の出来事、親として責任を感じてしまったのは間違いない。

 だがその責任は紗央莉に全く無かったのだ。


「亮二の奥さんに伝えますか?」


 調査書には亮二の奥さんが使っている携帯の番号まで調べてあった。


「いいや、これではまだ弱い」


「そうですね」


 確かに、これでは紗央莉に対する浮気の証拠とまではならない。

 偶然入った店に知り合いが居ただけ、そう言って逃げるだろう。

 だが放置させるのは下策、何も無いと言いきれない、

 奴が何かを企んでからでは、遅い、


 嫌な記憶だが、史佳の例がある。


 史佳の不倫相手だった男も、徐々に惹かれてしまい、結局不倫に溺れた。

 再構築後、男は新しい仕事を見つけ、再び家族としてやり直しているらしい。

 まるで、史佳との不倫が無かったの様に。


『バカを見たのは史佳と我々だけだな』

 その事を10年前、知ったお義父さんは呟いた。

 あの頃は史佳をサナトリウムに強制入院させたりと大変だった。


「そういえば、良太さんから昨日手紙が」


「そうかね」


 少し話を変え、はとこの良太さんから来た手紙をお義父さんに見せた。

 内容は元妻史佳の近況が書かれている。


 史佳が入院したサナトリウムがある町は俺の父親の田舎。

 それは偶然じゃない。そのサナトリウムをお義父さんに紹介したのは俺だった。


 サナトリウムを退院した史佳がまた俺達の元に来るのを警戒し、はとこの良太さんに史佳を雇って貰えないか相談した。


 事情を聞き、了解してくれた良太さんはサナトリウムを通じ、史佳に自分の会社を紹介して貰うよう話をしてくれたのだった。


 迷惑を承知の上での頼みだったが、良太さんのお父さんが若くして亡くなった時、従兄弟である俺の父が途方に暮れる良太さん家族に、金銭や、行政のサポートを受けられる様に、随分奔走した事を今も恩に感じてくれていて、話が纏まった経緯があった。


「真面目にやってるみたいだな...」


「ええ」


 手紙は定期的に届いている。

 良太さんのお母さんが交通事故に遇って、ヘルパーさんが来られなくなってしまった時も史佳が親身になって助けた事は俺達は知っていた。


 今は杖をついて歩けるまでにお母さんが回復したのも、史佳のお陰だと親子で感謝している事も。


「どうぞ」


「ありがとう」


 手作りの特製ハイボールをお義父さんに差し出す。

 まだ時間は早いが誰も居ないから良いだろう。


「「ズズー」」


 旨い。


 まだ陽のある内に飲む背徳感が堪らない。

 紗央莉が帰って来るのは10時過ぎだからそれまでに酔いも醒めるだろう。


「良太さんは政志君と同じ山市姓だが、史佳はまだ気づいて無いのか」


「どうでしょう?あの辺りじゃ、わりと多い名前ですけど」


 近所や周りの人間に聞き込めば分かるかもしれないが、手紙によると史佳は会社と自宅、そして良太さんの家以外は殆ど出歩かない生活をしているらしい。


「...知らぬが仏か」


「そういう事ですね」


 せっかく平穏な生活を歩んでいるのだ。わざわざ波風を立てる必要もない。


「しかし、良太さんはまさか史佳を?」


「それは分かりません、良太さんは婚約者を亡くして、一生独身を誓ってましたが」


 良太さんは20年前に婚約者を病気で亡くし、以来ずっと恋人も作らず独身を通して来た。


 それは史佳に教えて無いと書いていたが、それを俺にわざわざ伝えるのは、ひょっとしたら決意が揺らいでいるのかもしれない。

 どうでも良いが...


「「ズズー」」


 何杯目か分からないハイボールをまた飲んだ。


「ちょっと!なんで私の後ろに居るの?」


「「ん?」」


 玄関で焦る声、これは間違いない!


「どうした紗央莉!!」


 慌てて玄関を開けると紗央莉の腕を掴む一人の男が居た。


「誰だ!」


「は?」


 なんで男から誰呼ばわりされないといけないんだ?


「紗央莉の亭主だ」


「な...なんだって?」


「だから言ったでしょ!私は結婚してるって!!」


「う...嘘だ」


「嘘じゃないわ!

 もう10年前に結婚したって何回も言ったじゃない!!」


「ち...畜生裏切りやがって!」


 男が紗央莉を突飛ばし逃げようとする。

 もちろん逃がすつもりは無い。


「待て...」

「待たんか!!」


 俺の横を疾風の様に駆けて行く、それはお義父さん、さすがは元刑事。


「離せ!」


「離すか!」


 捕まえたらこっちの物、男を組伏せ家の中に連行した。


「久しぶりだな亮二く~ん」


「あ...あ...」


 お義父さんの顔をみた男の顔色が変わる。

 こいつが亮二か。


「まあ話を聞こうじゃないか」


 部屋に引き摺り込む。

 こういった手合いは完全に叩き潰さんと。


「あの...まさか紗央莉が結婚してるだなんて」


「呼び捨ては止めんか!!」


「貴様は!!」


 紗央莉を一旦別室に行かせ、激しい詰問タイム。


「さあ吐け!!」


「は...はい」


 亮二の話はバカげた物だった。

 偶然入ったレストランで紗央莉と再会し、バカは紗央莉がまだ独身と勘違いをしたのだ。


「俺を気遣って結婚してるって嘘を吐いてるとばかり...」


「なんで?私何回も言ったでしょ!

 旦那と娘が居るって!!」


「だってよ...別れるまで、俺が好きだって」


「お前が断ち切ったんでしょ!!」


 途中から加わった紗央莉がテーブルをバーンと叩く。

 凄い剣幕だ、チビりそう...


「「ズズー」」


 とりあえず、また飲んだ。


「こら!」


「すまん」


「いや...つい」


 なんだかアホらしい。

 こいつは手短に遊びたかっただけ。

 紗央莉の言葉を信じられず、仕事が終わって帰る紗央莉の後をつけ、本当に結婚しているか確かめたかったと吐いた。


「すみません...もう店には行きませんので」


 か細い声で呟く亮二、なんか哀れだ。


「もう来るぞ、さっき連絡した」


 お義父さんが愉快な顔で笑った。


「亮二!!!」


 一台のタクシーが止まり、中から飛び出して来た女性が大音量の怒声を上げ部屋に飛び込んで来た。


「ヒイイィ!!」


 亮二の顔色が更に変わる。

 血の気は完全に失せ、気絶しそうな...


「亮二の奥さんだ、元国体の柔道選手だと」


「そうですか...情報ありがとうございます、お義父さん...」


 凄い迫力だ。

 身長こそ紗央莉と変わらない160センチ後半だが、体重は80キロを軽く超えている。


「お前は何回も!!」


 哀れ亮二は首根っこを捕まれ、タクシーに連行されていく。


「ご迷惑をおかけしました、後日改めて義父母と一緒にお詫びに伺います」


 そう言うと、亮二の奥さんはキチッと頭を下げタクシーに乗り、消えて行くのだった。


「全く二人共!」


 その後、俺とお義父さんは紗央莉から散々叱られてしまった。


 でも無事で良かった。


「愛してる紗央莉」


「な...なによ急に」


 照れる妻が可愛い。


「ゴホン」


 お義父さんの咳払いも聞こえた。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] >まだ陽のある内に飲む背徳感が堪らない。 それな
[一言] これって、ドリフなコント?(• ▽ •;)(逸れ友、ひょう○ん族?)
[良い点] お義父さんのキャラがいい。 新レギュラーも間近か? [一言] 更新ありがとうございます。 政志よりもお義父さんがギャグに引っ張るチカラ強いですな(笑)。おなじみのキャラに新キャラ混じると…
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