表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

第1話 史佳は帰って来た

軽ーく、お付き合いを...

名前は仮名です、ハイ。

 三年ぶりに帰って来た自宅。

 表札は昔のまま旦那の名前が掛かっている。

 もう住んでないかと心配したが、どうやら杞憂だったみたい。


「...待っててくれたんだ」


 旦那の暖かな気持ちに胸が熱くなる。

 やっぱり政志さんは私にとって、運命の人だった、失踪なんかしてごめんなさい、これからは貴方だけを一生愛するからね。


 持参していた玄関の鍵を取り出す。

 中に入ったら『ただいま』と元気に言うんだ。

 きっと『おかえり』って中から返ってくるよね!


「あ...あれ?」


 どうしたんだ鍵が入らない、なんで?


「留守じゃないよね?」


 家の中から人の気配はしている。

 外にある電気メーターも回っているし、クーラーの室外機だって動いてるんだから。


 一旦外に出てインターホンを押す。

 本当は電話で話したかったが、昔の携帯は捨ててしまって今は無い。


『はい』


 政志さんだ!

 インターホンから聞こえる懐かしい声!

 やっと帰って来たんだ、愛しいあの人と、娘の住む家に!!


『どちら様ですか?』


「え?」


 私が分からないの?まさかの答えよ。


「私です。貴方の妻、史佳です」


『はあ?』


 モニターカメラに向かってウィンクの笑顔を見せる。

 これで分かったかしら?


『あ...え...えぇ!?』


 そんなに驚いた声を出すなんて、恥ずかしいじゃない。


「とにかく開けて、外は暑いの」



 八月の日差しが容赦なく照りつける。

 化粧が流れて来た、汗を拭うフェイスタオルにマスカラが付いて来た。

 早く涼みたい、冷たいお茶も欲しいわね。


『...帰ってくれ』


「はあ?」


 今なんて言ったの?

 聞き間違いよ、『帰ってきてくれたのか』って言ったんだよね。


『とっとと帰れ!

 なんで今さら、三年間も連絡一つ寄越さず、よく帰って来られたな!』


「ちょっと待ってよ...」


 どうして怒ってるの?

 まだ話すらしてないじゃない...

 あ、そっか!!


「大丈夫、ちゃんと別れたから」


 まだ不倫相手と繋がっているんじゃないかと心配なんだね。

 私ったら、うっかりしてたゴメン!


『何をお前は...』


「だから、ちゃんと3日前にアイツと別れて来たよ。

 だから安心して、もう私は政志だけの...」

『ふざけるな!!』


「はい?」


 どうして怒鳴るの?

 謝罪させといて、あんまりじゃないか。

 やっとの思いでアイツから逃げ出して来たのに!


『一緒に逃げた間男には二年前に捨てられただろうが!』


「...あ」


 しまった...忘れてた。

 アイツと来たら、私をアパートに置き去りで逃げやがったんだ。

 責任取るからなんて調子の良い事言いやがって、一年もしない内に嫁と復縁するって。


 あんまり憎たらしいんで、記憶から消してた。

 あの後は...そうだ、偽の身分証でラブホテルの清掃員してたんだよ。

 そこで見つけたショボイおっさんと半年同棲して...その次に今回逃げ出して来た男だったわ。


『どうしたんだ政志君、そんな大声を出して』


「あ...え...嘘」


 この声はまさか、お父さん?

 なんでこの家に居るの?


『いや...すみません興奮しちゃって』


 ヤバい、絶対に会いたくない人間の筆頭だ!


『ん?誰かね、画面に映る婆さんは』


「な!?」


 誰が婆さんなの?私はまだ32歳よ!


『プーー!!』


「ちょっと政志!!」


 今盛大に吹き出しやがったな!!

 いくら三歳年下だからって許せない!!


『その声...随分しゃがれているが、史佳なのか?』


「しまった!!」


 大変だ、絶対に顔を会わせたくない奴に見つかってしまうなんて、昔から厳しくて嫌いだったのに。


「おい待て!!」


 必死で走る私の背後から怒鳴るお父さんの声、絶対に捕まる訳にいかない。


「ふきゃ!!」


 ヒールの(かかと)が根元から折れ、すっ転んでしまう。

 両足が痛い、少し太って(83キロ)しまったからだ。


「まあ良いじゃないですか、生きてる事が分かったんですから」


「そうだな、これで離婚を進められる」


「...な」


 今何を言ったんだ?

 痛がってる場合じゃない!


「ちょっと待ちなさい!!」


 冗談じゃない!

 誰が離婚なんかするもんか!

 アンタからは私を一生養って貰わないと!!

 どうやらスカートも破れてしまったらしい、48キロの時に着ていたのだから、少しサイズに無理があったか。


「...帰って来ましたね」


「ああ、アイツは昔からアホだから」


「ふざけるな!!」


 私は旦那と父親に叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なんといいますかキャラとしては、マーフィーズ・ゴースト的な扱いなのかなと。(• ▽ •;)(某RPGゲームで有名な)
[一言] 3年…帰ってきた…83…ソ■モンの悪夢かな? しかし48kg時代のスカートよく捌けたねw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ