小説は、文字数を増やすのは簡単!
文字数は、いくらでも増やせます。
理由は単純。『書かれた事しか分からない』からです。
漫画や映像作品なら、セリフ以外に絵や映像で分かる事が多いです。それはセリフや地の文として書かなければ伝わらない、小説との大きな違いなんですよ。
例として、登校中の学生の一コマを参考にしてみましょう。
◇◇◇◇◆◇◇◇◇
「オッス、竜也! 今朝は早いんだな!」
後ろから背中をばしっと叩かれ、飛び上がる程驚いた。元凶は幼馴染であり、腐れ縁の裕介だ。
「おま……驚かせるなよ」
「朝の弱いお前でも、さっきくらい驚いたら目も覚めただろ?」
「そういう問題じゃないだろ……」
しばらくブツブツ文句を言っていたら、奏汰が笑い出した。
〈182文字〉
◇◇◇◇◆◇◇◇◇
奏汰がしれっと登場しましたが、奏汰はいつからいたのか描写がありません。つまり、読者には奏汰がなぜいるのかの情報がないのです。
次は、奏汰の情報を入れて書いてみましょう。
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「オッス、竜也! 今朝は早いんだな!」
後ろから背中をばしっと叩かれ、飛び上がる程驚いた。元凶は幼馴染であり、腐れ縁の裕介だ。俺を見付けた裕介が小走りにでもなったのか、遅れて奏汰が合流した。
「おま……驚かせるなよ……
奏汰、おはよ」
「おはよー、竜也」
「朝の弱いお前でも、さっきくらい驚いたら目も覚めただろ?」
「そういう問題じゃないだろ……」
しばらくブツブツ文句を言っていたら、奏汰が笑い出した。
〈264文字〉
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これで、奏汰がいつ加わったのか分かりました。
それでも、まだ入れれる情報はあります。
三人の容姿、性格、制服をどんな風に着こなしているのか? などなど。
◇◇◇◇◆◆◆◇◇◇◇
「オッス、竜也! 今朝は早いんだな!」
教室に入ったところで後ろから背中をばしっと叩かれ、飛び上がる程驚いた。元凶は幼馴染であり、腐れ縁の裕介だ。俺を見付けた裕介が小走りにでもなったのか、遅れて奏汰が合流した。
「おま……驚かせるなよ……
奏汰、おはよ」
「おはよー、竜也」
少しぽやんとしているが、奏汰は爽やか系のいいヤツなんだ。さらさらの濃い茶色い髪に、童顔が悩みらしいが……
そんな奏汰は高校に入ってから出来た、大事な友達なんだ。制服をちょっと着崩していても、爽やか加減は減らない。そして、けっこうモテるのが羨ましいヤツだったりする。
「朝の弱いお前でも、さっきくらい驚いたら目も覚めただろ?」
裕介はノリが良いが、時々、悪戯が過ぎるのが難点だな。だが、サッカー部の部員で、ガタイが良い。それで圧迫感とか威圧感を与えないのは、その性格のお陰だろう。
黒髪に日焼けした、意外と精悍な顔つきでこいつも女子にけっこうモテる。
「そういう問題じゃないだろ……」
こいつの性格は知っているし、好きな部分でもある。だが、まだふらふらのあさイチに驚かせるのは止めてもらいたいもんだ。
しばらくブツブツ文句を言っていたら、奏汰が笑い出した。
〈608文字〉
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……と、こんな具合です。情報が入るほど、文字数は増えます。
無駄な情報は要りません。ですが、必要な情報は、必ず書かなければなりません。
必要な情報は全部入っていますか? 今は書かなくていい説明まで入っていて、冗長な文になってはいませんか?
必要な情報が全部入ったら、文字数はある程度にはなります。
さらに少し情報を足せば、文字数はもっと増えます。
くどくなく、必要な情報が全て盛り込まれた文章を心がけると、文字数は『自然と多くなる』もの。
そう、文字数はいくらでも増やせるものです。増やし過ぎに注意をしまょう!
―終―