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形容詞も副詞も使わずに何かを描写する。会話はなし。
深夜にエレベーターを使って、街に出る。部屋で聞いていた虫の鳴く音は、今はもう聞こえず、街灯の光にぶつかる虫の音が聞こえる。空には雲がないが、星もない。私は不自由な足を引きずって歩く。痛みはない。公園を囲っている金網を掴み、何度か休憩を取る。私は母の見舞いに向かうが、これではどちらが病人か分からない。どちらも病人か。昼間に病院へ行くと、私の足に関して医者が治療をしろと言うが、私はそんなことは聞きたくない。医者の口からは母の治療に関して聞きたいが、今は様子を見るしかない、と私の足を見ながら言う。母は、母がいなくなった後のことを私に言う。私は母と二人で暮らしている。今は部屋に誰もいない。犬も猫もカブトムシもいない。これから病院の部屋で二人になる。母は寝ていて、私もまた、そこで眠る。今は歩かなければならない。オレンジの光が遠くに見える。私は金網にぶつかりながら、病院へ向かう。
もっと情景を描写したかった。