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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ドルオタJKの直観

作者: 刻露清秀

 直観(ちょっかん、英語: Intuition)とは、知識の持ち主が熟知している知の領域で持つ、推論、類推など論理操作を差し挾まない直接的かつ即時的な認識の形式である。以上、Wikipedia「直観」より引用。


 推しについて、あたしは熟知している。


 推論、類推など論理操作を差し挟まないで直接的かつ即時的に認識した。


 今日の推しのプリスタのストーリー。これは


「匂わせ」


だと。


 アイドル、三嶋リンコを推してもうすぐ二年になる。もともと少ないオタクの中では数少ない女で、しかもリンコより年下の女子高校生。認知されるのは割と早かった。


 鍵閉めおじさんと詰んだCDを競ったり、握手会でリンコのイメージカラー、ピンクでコーデをしたり。


 ツブヤイターとプリスタを血眼になって再起動して、誰よりも早くリプしたり、裏垢でアンチと戦ったり。


 リンコがもらった案件のものは買い占める勢いで買って、美味しくないスナック菓子でお腹を満たした。


 リンコのイメージカラーだというだけで、あたしの部屋はピンクまみれ。それを後悔したことはなかった。でも。


 半年ほど前から、リンコのプリスタにはらしくない投稿が相次いだ。


「プレゼントありがとう」


といういつもはしないファン(?)への感謝。


「ライブ配信ちょっと遅れます。夕食なう」


いつもは告知しないし、夕食食べながら配信してたじゃない。


「いただいたシャンプーでバスタイム」


そういう露骨なエロ売り、嫌いだって言ってなかった?


 後ろ暗いことがあるんじゃないか。そう思ってたけど、信じられなかった。


 だけどもう確信してしまった。


 急に始まった意味深なポエムの投稿にも、バンドのステッカーが貼られた冷蔵庫にも、目を(つむ)っていた。でも何?あのストーリー。


「大好き」


の文字とともに映っているピック。リンコはギターを弾けない。


 負けず嫌いのリンコ。注目されたがりで、だからこそ努力を惜しまなくて、ストイックなリンコ。他のメンバーへの当たりが強くて炎上したこともある。リーダーに高圧的な態度をとって、『マウンティングアイドル』なんてあだ名をつけられたこともあった。


 アイドルとしての矜持があるからだと思ってた。プロ意識が高くて、努力家で、ファン思いのリンコ。握手会では常に神対応。歌もダンスも、できて当たり前。他メンバーにもそれを求めるから、みんなで仲良くタイプのリーダーとは反りが合わなかった。


 リンコ。


 リーダーに


「なんで振り付け覚えられないの? 」


って。


「アイドルならできて当然」


って言ってたよね。


「プロのアイドルとしての自覚ある? 」


とか(のたま)ってめちゃくちゃ炎上してたよね。


 貴女のプロ意識に照らし合わせて、匂わせはやっていいことなの?


 別にあたしは貴女がバンドマンと付き合ってようが、プレゼントもらってようが、どうでもいいんだよ。処女厨じゃないし、ガチ恋でもない。


 いや。


 あたしがこんなにやりきれない思いをしてるのは、貴女のことが恋愛的に好きだったからなのかもしれない。あたしが先に好きだったのに、そうバンドマンに嫉妬してるのかもしれない。


 あたしの直観は外れかもしれない。匂わせなんてしてないかもしれない。


 でも。


 あたしはリンコを推さなくなった。

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