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感覚的なものなのだろうか。確かに、右手と左手とを使うときに強く意識をする訳でもない。
「次にギルドに帰った時に属性検査とかもしてみましょう。これから先は、自分の得意分野を知っておかなければね。冒険者として、生きていくなら猶更ね」
そうですね、と相槌を打っておく。もし、自分の能力に属性があるとするのなら、地属性にでもなるのだろうか。
無から有を創造する事は出来ない。この物質世界において、それは絶対に揺るがないものだ。無と評される空間にも、何らかの物質「ダークマター」が満たされているはずだ。それが何なのかは確定していないし、そもそも、観察することで事象が確定する事がある事も知っている。
もし、だ。仮に仮定するとして、ダークマターと呼称される物質が魔力に準ずるものだとするのなら、この世界には大気に窒素や水素、酸素にアルゴンといったものの他に、大気の組成に食い込んでいる元素が存在しているのだろうか。
魔法、というのはそのダークマターに準ずる物質に干渉して、箱の中身を確定させることなのだろうか。
魔力の使い方について詳細に教えてもらったら、実験をしてみよう。この世界に既存の物理法則が通用するかどうかは分からないが、もしその物理法則が通用するのなら、少し面白い事が出来るだろう。
「ま、先は長いしゆっくり休んでなさい」
そういうと、彼女は布にくるまって寝てしまった。
確かに先は長いだろう。
馬車の乗り心地は、現代の車などに比べたら遥かにに悪いものだったが、幸いにもこういった乗り物には慣れていた。
まったくもって、ユーゴにとっては不愉快な記憶だが。
深くため息を吐くと、彼も肩を背中を荷台に預けて目を閉じた。
休める時に休む、それも重要だ。
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馬車を乗り継ぐこと、三日目。
目的の村まで、ようやく到着した。
蒸気機関というものの素晴らしさを身に染みて感じる。レールが敷設されて、列車が存在すればこんな距離も一日とかからないだろう。
「あれが、目的の村ね」
エルがそういうと、指をさして場所を示す。道の先に、幾らからの木造住宅が見える。
周囲は木々に囲まれて、現代で言えばまさに限界集落、といった所だ。周囲には野生生物警戒用のだろうか、これもまた木で作られた柵がある。しっかりと地面に杭が打ち込んであって中々にしっかりとした作りだ。
馬車は村の入り口近くにある停留所らしき所で止まると、そこで荷台に乗ってあった荷物を下ろす。