契約はよく考えて行いましょう!
悪堕ち的なのを書いてみたかったのだ
「来てくれましたか。ミル。」
「はい、ティニア様。今回はどのような任務ですか?」
私は妖精のミル。ここ妖精界では様々な妖精が暮らしているけど、妖精女王であるティニア様から使命を頂ける妖精は多くない。
でも、私はそんな中でも特に使命を頂ける回数が多い。そう!私はエリートの中のエリートなのだ~!
「困ったことが起こりました。崩壊の危機に瀕している世界に妖精を3人派遣したのですが、出発した全員と連絡がとれないのです。」
「連絡がとれないって…大変じゃないですか!」
世界を救済するために、私達妖精が別の世界に行くことはよくあることだ。
というか、私自身12回は世界を救って来ているのだ。だから今回のことがどれだけヤバイか分かる。
妖精は単独で力を発揮することが出来ない。だから、自身と相性のいい現地の人を探し、契約することで世界の破滅を狙う奴らに対抗する必要がある。
現地の人との繋がりを得ることで妖精界と世界のパスが繋がり、ティニア様との連絡が取れるようになるのだが…。
「そうなのですよ。他の世界と比べると崩壊のスピードが緩やかだったので新人を送ったのが災いしたのでしょうか?パートナーがまだ見つかってないだけならまだしも、敵に捕まっていたりしたら大変です。」
「なるほど。だから私が呼ばれたのですね。」
「はい。あなたは特異体質でどんな人間とでも波長を合わせることが出来て、さらに他の妖精と人間との相性を測る目を持っています。今回の件に関しては誰よりも適しているでしょう。」
「そうですね。私に求められることは、誰でもいから人間と契約。そして早急にティニア様と連絡を取って現地の状況を報告。その後、敵に味方が捕まっているようだったら救出。パートナーが見つかっていないだけならば補助を行います。」
「理解が早くて助かります。では、そのようにお願いしますね?」
「お任せください!この私、ミルが見事任務を達成して見せます!」
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私はティニア様のお力で世界を渡ってきた訳だが…。しかし、見た感じ普通の世界だな。
地獄のような世界が広がってる可能性も考えていたのだが、杞憂だったようだ。
さて、ここは…森だ。
森だと人が見つかりづらいんだよなぁ。仕方ない。とりあえず町を目指すか。
「あぁっ!そこのひとっ!助けてくださいぃ!」
驚いた。森の中で少女が見つかるのもそうだが、少女を追いかけている存在がヤバイやつだったからだ。
世界によって敵の種類は異なるが、闇の力を纏ったあいつは確実にこの世界を滅ぼす存在に違いない。
転移してきてすぐに遭遇するなんて不運だ。
でも、私は運が良い。こいつだけなら詰んでいたが、ここには少女もいる。
「よく逃げてきたわ!名も知らぬ少女よ!でも安心しなさい!あんな奴、私がいたらちょちょいのちょいよ!」
「えっと…あなたは?」
「説明は後よっ!私と契約しなさいっ!」
「契約っ!!はいっ!します!!」
「良い返事ね。じゃあ、私の手を握って?」
そうして私の手の上に、少女の手が重なった。
彼女から私に力が流れていく感覚が分かる。
よし、繋がった。
「えっと…?契約終わりましたか?」
「えぇ、終わったわ。あなたはそこで待っていてね。」
「はい。…って、え……?」
「さぁ、覚悟しなさい。闇の者よ。セイント・フラァアアッッシュ!!」
私の手からあふれ出した聖なる力によって、襲いかかってきた魔物は簡単に消滅した。
この程度の敵は何度も倒して来たから楽勝だ。
「さぁ、敵は倒したわよ。もうあん…しん…よ?」
「……契約したら、私が魔法少女になるんじゃないんですか?」
あれ?なんだか様子がおかしいな?
うつむいて顔がよく見えないけどなんか怖いぞ。
「えっと…、期待させたのならごめんね?他の妖精ならあなたの言う魔法少女のような形になるんだけど、私は特異体質でね?誰とでも契約出来る代わりに戦うのは私になっちゃうのよ。」
「ふーん。そうなんだー。はー、がっかり。期待しちゃったじゃない。」
っ!雰囲気が変わった!?これは…闇のオーラ!?
そんなっ!私が気づかないだなんて…。
「あの子達は調和が合わないとか言って契約すらさせてくれなかったから、ほんっとーっにワクワクしたのにぃ~。妖精が来る度に演技するのも疲れるのに。」
「待って、あの子達って何?もしかしてここに来た妖精を知ってるの?」
「え?えぇ。知ってるわよ?まぁ、あの子達は今私の家で特殊な装置に掛けてエネルギーを吸われ続けてるけど。」
妖精のエネルギーを吸っている…ですって?なんてひどい事を…。
「そんな事をして、あなたは何が目的なの?」
「目的?そうねぇ。私、魔法少女になることが夢なの。」
へ?魔法少女になることが目的?
「小さな頃から魔法少女になることだけが夢だったの。だけど、私の所には妖精が来ることは無かったの。私は魔法少女になれない。そう諦めかけていた時、私の中にいた何かが囁いて来たのよ。その身に眠る力を使い、世界を滅びへと導けば自然と妖精が現われるだろうってね!」
知ってる。そのタイプは一番厄介な奴だ。
いわゆる魔王の転生体。少しずつ育っていったタイプじゃなく、最初から膨大な力を持っているタイプだ。
こんなの並の妖精に対処出来るような奴じゃない。早くティニア様に伝えないと…。
「それでね?私、ちょっとずつこの世界を汚染していったの。そしたら本当に妖精が来たの!本当にうれしかった!うれしかったのに…。駄目って言われた。なら、私に合うように調整すればいいと思ったけどそれも上手くいかなくてっ!」
はや…く、なんだ?これは?じぶんのからだなのにうまくうごかせない。
まるでじぶんがじぶんじゃなくなっているような。
「だからあなたと契約した時、ついに私も魔法少女になれるって思ったのにっ!
ねぇ!?聞いてる?」
「はぁ…、はぁ、きいてるよ。」
「どうしたの?辛そうじゃない?」
うぇ、あたまがおかしくなってきた。ふゅう!?からだがあつい!?
なんか、かわっちゃう。いやだっ!かわりたくないっ!
「いやぁああああ!」
「何?なに?どうしたのよ?」
…とてもスッキリした気分だ。
あ、心配してくれる声が聞こえる。返事をしないと…。
「はい!申し訳ありません、魔王様!私の力が及ばないばかりに魔王様を魔法少女にすることが出来ませんでしたっ!」
「あら?あらあら、もしかして、もしかしてかしら?絶対そうね!私と契約しちゃったせいで眷属になっちゃったのね!あはは!おっかしー。」
あぁ、魔王様が笑ってらっしゃる。なんとかわいらしい。
いや、そんな事を考えている場合ではない。魔王様の願いを叶えなければ!
「魔王様!あなた様が魔法少女になれる方法が1つだけありますっ!」
「え!本当にっ!はやくぅ!はやく教えてっ!」
興奮した様子の魔王様。えぇ、そうでしょう。長年の悲願が叶うのだ。
私も魔王様の願いを叶えるお手伝いが出来て光栄です!
「はい。実は私の目は特別な力を持っていて、相性のいい人を見定める事が出来るのです。
魔王様は強大な力を持っているので並の者では釣り合いません。ですが一人だけ魔王様を魔法少女に変えることが出来るものがおります。」
「いるのね!?早く教えてっ!」
「はい。それは……妖精女王です。」
そう。魔王様の力に負けることなく、契約を果たせるような者など妖精女王しかいない。
よかった。魔王様の願いを叶えられるような者がちゃんとこの世にいたのだ。
「ふぅん。そいつなら私を魔法少女に出来るのね?どうやったら会えるのかしら?」
「簡単です!妖精界とこの世界は私達が契約することによって繋げられました。
魔王様の力さえあれば、すぐにでも妖精界に行く門を開くことが出来ます。」
「あらそうなの?じゃあ、いますぐ行きましょう。手伝ってね?」
「はい。魔王様の御心のままに。」
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「はぁああ。これが待ちに待った魔法少女の力、衣装ね。とてもかわいらしいわ。
ありがとうね?ミル。ティニア。」
「「はい!魔王様のお力になれて光栄です!」」
妖精界に行ってからは早かった。
魔王の力を抑えきれるような者はおらず、妖精界は崩壊の危機に陥った。
ただ、魔王様の目的は妖精女王ただ一人だったので、妖精女王さえ差し出せばこれ以上の侵攻はしないと言えば、女王はそれに従うしかない。
そうして、妖精女王は魔王様と契約を結んだ。
契約を結び終わった女王、ティニアはすぐに私と同じ眷属になった。
ティニアの力ですぐに魔王様は念願の魔法少女になることが出来た。
魔王様は本当に嬉しかったようで、満面の笑みを私達に向けてくださり、私達は感動のあまり涙を流してしまったほどだ。
「これで、私の目標も達成出来た訳だけど…。そうだわ!せっかく魔法少女になれたんだもの。世界を救うとかやってみようかしら?」
「「素晴らしいお考えです!魔王様!」」
そうして、魔王様は様々な世界を救われた。
しかも、私達が救うよりも効率よくスピーディに救済していく姿はまさしく女神。
救済を続けていく度に魔王様の力は高まり続け、ついには妖精界全ての妖精は魔王様の眷属となった。
魔王様はどの妖精にも等しく、愛を注いでくれる。とても素晴らしいお方だ。
こうして、世界の平和は魔王様の力によって守られていくのだ。
魔王様、バンザイ!!