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りゅうの娘  作者: 猫田33
はじまりの町
9/36

「うっ!」


起きた途端に殴られた頭が痛んだ。薄暗くてわからないが奥にいるのは見覚えのある人物。


「目が覚めたかね?語り手さん」


「長」


「クスクス、あまり驚かないから面白くないな」


長は口元を扇で隠して笑っている。


「僕が何者でこの街で何をしていたか。知っていればこんなことで驚くわけないでしょう」


「そうだね。……本当はもっと早くこうしようと思ってたんだけどずいぶん良い腕の用心棒を雇ったみたいですね」


「僕をなんで殺さず捕まえただけなんだ」


長は、僕の顎を持ち上げて僕を見る。その瞳には、ぞわぞわするような嫌な感情が見てとれた。


「君を殺すと誰が君をここに寄越したかわからないからね。クスックスッ、それに君は美しく賢い。…私の玩具にちょうどいい」


「よるな。変態!」


「怒った顔もいいですね…」


あまりの気持ち悪さに蹴ったが変態はユラユラ立ち上がり、それを見て背中に悪寒が走った。慌てて逃げようと扉に近づいたが何かが引っかかり進めない。


「今の顔が一番好みですね。あと無駄ですよ?私が君に触らなければその見えない鎖はとれないですから。高い金を払って呪術師に頼んだかいがありました」




「へー、いいこと聞きました」


こんな状況に似合わないのんきな少女の声が耳に届く。一つしかない扉から堂々と彩明が入ってきた。


「お前誰だ。どうやってここに!?」


変態が不快そうな顔をして彩明を見る。だが僕の頭の中は真っ白になった。面倒事にならないように突き放したのになんでいるのだ。


「なんで…、なんで彩明…君はここにいる……?」


「頼まれてなくとも護衛すると私は言いましたよ?」


得意げな顔を浮かべて彩明が言う。そういえばそんなこと言ってたな。


「彩明、君は本当に馬鹿だね」


僕に近づいたら裏の僕と同じになるか。


「馬鹿はどっちですか!?私が目を離した隙に捕まったくせに!」


死が、待っているのにな。


「餓鬼、語り手の"裏"を知らないのか?」


変態が久しぶりに口を開いた。嫌な状況に嫌な言葉を言うつもりなのに気がついた。


「裏?」


「止めろっ!!」


僕の行動を見て変態は嬉しそうに唇を歪めた。


「語り手は………」


「言うなっ!!!!」






間諜(カンチョウ)なんだよ。任務遂行のためなら手段を選ばない」


あぁ、言ってしまった。長は自殺に見せかけて殺すつもりだったからいい。けどこんな明るい少女を…秘密を知ったからと手にかけたくない。でもそしたら、そしたら。


「語り手さんは語り手さんです。違いますか?」


彩明は何が言いたいのかわからないようだ。


「わかっているのか餓鬼?語り手は、任務の為に暗殺も毒殺も人情もときには愛情まで使うんだぞ!」


「だからそれが何か?私だって生きる為に生きているものを殺します。食べる為に報酬をえる為に用心棒として人を……人を……殺したこともある」


彩明は自分の手を見てから変態を見据えて言った。


「他から与えられるだけで自分で手にかけたことがない人間に非難される筋合いはないっ!」


僕の胸の奥で渦巻くこれはなんだろう?

悲しくもないのに涙が出そうでだけど……安心する

動悸が耳に五月蝿く響く

懐かしい感覚、最近…いや師匠の下を離れて以来なかった感情《嬉しい》なんて


「語り手……なんでそんな顔をする!……間諜であることがバレたんだぞ!!私を憎め!憂いにくれろ!悲しめ!なんで、なんで!」


もう変態に対する恐れはなくなった。

ただ


「そんな目で見るな!見るなーーーー!!○※◎×■」


人の幸せを喜べない長が可哀想だった。




「壊れたか」


声がした方向に目を向けると驍曜がいる。彩明が僕を背後に庇い驍曜を警戒する。


「驍曜!こいつらを殺せ!殺せ!殺せ!殺せ!殺せーーーーーーー!」




「黙れ、虫唾が走る」


主であろう変態を驍曜は、蹴り飛ばした。変態は、歯を食いしばったためか唇の端から血が流れる。


「ただでさえ貴様のようなのを主と呼ぶは不快なのに」


僕と彩明は状況についていけずに口を開いて固まっている。


「驍曜裏切ったな!」


「裏切るも何も貴様についた覚えはない」


「「何だと」」


んっ?なんだか声が二重に聞こえるような。


「私よ!こやつらに死を!「死を!死を!死を!死を!死を!死を!死を!死を!」」


"二つ"だった声が


「死を」


"一つ"になった


「乗っ取り完了~♪ありがとね~綺麗なお兄さんと可愛いお嬢さんと生い先短いおじいさん」


「まだ爺じゃない!」


「まぁ、ほっとくとして~~~君達が追い込んでくれたおかげで~俺出れた♪Thank you」


よく見ると態度だけでなく変態の瞳が茶色から金色に変わっている。なにが起きたというのだ。


「あなた……誰?」


「Ladyの目の前にいるのに名前も答えなかったなんて失礼だったね♪」


変態は片方の目を瞑り、僕らに頭を下げた。目に塵でも入ったのか?


「申し遅れました。私、海の悪魔と呼ばれておりますoctopusです。パースとでも読んで下さい」


「悪魔?西の国で恐れられてるあの悪魔なのか!」


いち早く反応したのは驍曜だった。


「その答えはNOです。あっ、わかんないか♪いいえだよ。い・い・え。悪魔なんていないし~。人間は俺のこと恐いから悪魔なんてつけただけ~。まぁ恐がられるようなまねしたけどね♪」


パースの態度は、昔みた道化師を思い出させた。顔が笑っているのに目が笑っていないところがそっくりだ。


「パースなんで君は長の体で話してるんだ」


「あることの為に体を乗っ取った♪まぁ本人が譲ってくれたんだけどね~」


変態は協力させる為にパースに体を譲ったのか!?


「あることって何?」


「あんまり話すとあの人怒りそうだからやめるね~?」


あの人?


「これくらい話したらこの世に思い残すこともないよね?」


「!?」


そう言うとパースの姿が視界から消える。すると驍曜が声もあげず倒れた。


「驍曜!」


「わっかるかな~…?」


僕は、背後に触られたのがわかったが思うように体が動かない。だけどそれが懐にいくと弾かれるように気配がなくなった。途端にパースが姿を現す。


「何持ってんだよ!全く!痛いじゃないか!」


「これ……」


懐に入れていたのは店主の奥さんからもらった空色の石だった。


「ターコイズ!?なんで南の魔除け石を持ってんの??」


「語り手さんありがとうございます。おかげで位置がわかりました」


彩明が困惑するパースにどんどん近づいた。


「彩明何を!?危ない」


「パース、長の魂は今寝てる?起きてる?」


「俺が乗っ取ってるんだよ♪寝てるに決まってるじゃないか~~」


「そう良かった。パース、長の魂を離すつもりはある?」


「ことが終わったら離すよ~。君達死んでるけどね」


パースの言葉を聞いた瞬間から彩明の雰囲気が変わった。あと少しで矢が弓から離れそうなほどの張り詰めた空気が流れる。


「最終警告します。離すつもりはないんですね」


「ないよ」


パースが彩明を凝視し始めた。くわしくいうと顔を見ていたのかもしれない。


「綺麗だ」


しばらく黙ったいたとおもったら小さく呟く。途端に変態は倒れ口から赤いもやが出てきた。彩明は、赤いもやを力強く踏みつける。ものすごい地響きが起こり部屋の所々から悲鳴のような音がした。


「なっ!なんだ!?」


驍曜は生きていたらしく地響きをとても驚いていた。


「地震ならまずい!ここは地下だぞ!!」


「あっ、忘れてた」


忘れないでくれそんな重要なこと!


「上に出るぞ!」


「待って下さい!長も、長も危険でなくなったので一緒に運んで下さい!」


「わかった!」


驍曜が変態をおんぶしようとしたが、変態に触れないと僕の鎖はとれない。


「あっ!僕がします!」


「物好きだな」


「驍曜さん!語り手さん!急いでください。崩れます」


僕は急いで驍曜と彩明について行き地上にでた。

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