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りゅうの娘  作者: 猫田33
紡ぐ
35/36

《あれから二年後》

僕は、花嫁がこちらに来るのを待っていた。


「彩明はん遅いなぁ~?もしかして結婚前日に逃げられたんちゃうか」


「絶対ない」


「余裕だね。だからってほったらかすと俺が貰うが?」


「あんさんそんなにしつこいと女に嫌われるで?」


張平がそういうと院劉はしゃあしゃあと。


「女に困ってないから問題ない」


「自慢か!?おのれ!わいなんか失恋回数が千を超えたんやで」


「あぁそう」


なんで僕は、この二人に付き添いを頼んでしまったのだろうか。


今日は彩明と僕の結婚式だ。ふつう花嫁が実家から嫁ぎ先に行列となって来る。だが僕が根無し草の為に近くの街から歩いて不撓寺に来ることになった。


「たぶん蓉歌達が張り切り過ぎて遅いのではないかな?」


「住職‥今日は、寺を貸してくれてありがとうございます」


「いいんだいいんだ。儂から見て蓉歌が娘ならお前さんは息子のようなものだからな」


息子か‥‥。ちょっとくすぐったいのは慣れてない言葉だからだろうか。


「おっ?あれ違うんか‥‥!」


張平が指差した方向を見ると行列と赤い着物を着た人が見えた。花嫁は赤い着物を着るからきっと彩明だろう。


「でも様子がおかしくないか?」


確かに彩明の移動が早く後ろで必死に追いかけているように見える。


「あっ!後ろ!?あれ犬?」


張平が疑問の声をあげるのは無理もない。犬のようだが体がないのだ。


「‥‥あれは犬神!誰か恨みを買ったか」


「どうする?こっちに来るけど」


「寺の中に入って坊主達を連れて来てくれ!騒ぎが収まるまで儀式は中止だ」


「結婚式までこんなんかいな先が思いやられるわほんま」


僕は、張平のぼやきを最後まで聞かず彩明に力いっぱい呼んだ。


「彩明!!しばらく持ちこたえてくれ!」


「どうするつもりだ!?塵にでもしない限り追いかけ続けるぞ」


塵ね‥‥そうだ!


「住職、鶴に頼んで大鍋に油を入れてください!犬神を揚げます」


「どうやるつもりだ!」


「彩明には、物を動かす能力がありますから。それを使います」


一か八かの賭だ。


「わかった」


住職は寺に駆け込むとそろそろ彩明の顔が見えてきた。


「準備出来たぞ!」


「こっちもや!」


大鍋と人手が揃った。


「鍋に薪をくべてがんがん燃やしてください」


「はい、は~いわかったわ~」


鶴の行動が一番早かった。それから次々坊主達が動いてくれて鍋の油が煮立てきた。


「来たで!」


「語り手さん!」


彩明が僕の腕の中に飛び込んできた。


「彩明悪いけどもうひとがんばりしてくれるかな」


「もちろんです」


「じゃあ、あの頭をあの鍋に移動してくれないか?前に箸を動かしたのと同じように」


「動いていると難しいんですけど‥‥‥頑張ります」


彩明は僕から離れて犬神をじっと見た。すると犬神は、鍋に向かって飛んでいった。


「語‥り手‥さん‥あとどれくらい‥‥」


彩明は、疲れきった顔をして僕に聞いた。


「僕が十数え終えるまで十‥九‥八‥」


彩明の顔色が青に近くなるが止めさせる訳には行かない。


「‥六‥五‥」


「彩明‥私が変わろう」


りゅうが来て彩明と交代した。


「一」


数え終わったが犬神が鍋から出てくることはなかった


「はぁ‥‥終わった‥‥」


僕らはみんな脱力した


「こんなことになった原因はなんなんだいったい‥‥」


「あの~‥‥」


琥珀が申し訳なさそうに手を上げた。


「私‥‥犬の尻尾を踏みつけてしまいまして‥。そしたら首が追いかけて来たんです」


原因は琥珀か‥‥。さすがの趙真も呆れてるぞ。


「結婚式どうしようか」


みんな泥と埃だらけのうえに疲れきっていた。


「こんな格好でも私は続けられますが皆さんお疲れのようですし」


「僕もだよ」


僕と彩明は長椅子に座る。


「結婚式までこんな騒ぎになるなんて‥ふぁ~‥」


隣の彩明の体温が心地よい。瞼が重たい‥寝てる場合じゃないのに‥‥。


「そうですね‥‥」


僕と彩明は、そのまま長椅子に寝入ってしまった。




目が覚めたが瞼と肩が重い。


「ちょっと‥‥!そろそろ起きなさいよ」


「蓉歌はんそのまま寝せてたほう‥‥」


「煩いわね。私は皇帝よ!?今日はなんとか翔に押し付けたけど‥‥明日には帰らなきゃいけないの」


そういえば蓉歌様は、一年前に皇帝になったんだったな‥。帝位についてからすぐ国名を中華人民国に変えたり竜滅物語の真実を話したりして大騒ぎになった。


「私も妻子が心配なので早めに帰りたいのだが‥‥」


この声は、狼千氏。林夫妻には、可愛らしい女の子が生まれ名前は桃。噂によるといつも無愛想な顔が桃を見ると微笑むらしい。きっと凄い親馬鹿になるだろうと張平が笑っていた。


「そんなん詰め寄られても主役が起きんと‥‥」


「僕は起きてるが?」


「おぉう!起きとったんかいな。あと彩明はんか‥‥」


「私‥も‥‥起きて‥ます」


どうも眠そうだな。ちょっと悪戯でもしかけようかな


「彩明」


「はい?」


こっちを向いた瞬間にキスした。軽く微笑むと途端に彩明の顔が真っ赤になる。張平が追い討ちをかけるようにお囃子をかけた。


「もう!語り手さん!!」


彩明がそっぽを向いてしまった。仕方ないので僕は先にたって彩明に手を差し出す。


「可愛いお嫁さん一緒にきてくれませんか?」


その言葉に彩明は、おずおず手を差し出した。僕は、手を掴んで彩明を引き寄せた。


「儀式が終わればいくらでも寝ていいよ。僕の腕の中でね」


「?」


わかってないな、これは‥‥。


「まぁ、いいか。彩明行きますよ」


「はい!」


儀式は滞りなく終わり。みんな宴会を始めようとしたらサンが花束を持ってきた


「結婚式っていったらブーケトスでしょ!」


ブーケトス?


僕だけかと思ったらみんな知らないようだった


「おほん」


隼がわざとらしく咳をだした。その態度は知っているということだろうか


「ブーケトスは、西の国で結婚式の最後に花嫁が花束を投げる風習だ。なんでも花束を取った者が次の花嫁になれるとか」


最後の言葉に女性陣が黄色い声をあげた。


「私がいた時はそんな風習なかったな‥‥」


そうりゅうが呟いた。ということは千年以上前にはなかったのか。


「そういうこと!はい」


サンは彩明に花束を渡した。でも忘れていないか?彩明は‥‥‥‥。


「投げます!えいっ!!」


怪力なのに


「うわっ、ちょっとどこまで投げてるの!」


彩明が投げた花束は、飛んで飛んで‥‥‥。



「えっ!?わいでっか?わい花嫁欲しいが花嫁なるんは嫌や」


誰がお前の花嫁姿を見るか。吐き気がする。


「張平さんがあげたい人にあげたらどうですか?」


それはいい考えですね。


「わいのあげたい人そりゃまぁ」


張平は紐を解いて女の子達に配った。勢いに圧されたのかみんな受け取った。


「全ての未婚の女性や!ガッハッハ」


「‥‥‥‥」


華やかだった雰囲気が白けた


「誰でもいいと言ったのと同じだろう今の発言は」


劉が言ったのは的確だと思う。


「そんなことあらへん。みーんな素敵やから決められへんのや」


「張平の一番にされても困るけど。ねぇ皆さん」


「「「はい」」」


さすがの張平もこの言葉は痛かったらしく突っ伏した。その姿が面白くみんな笑った。


「語り手さん‥‥ううん。‥‥‥‥広進」


みんな笑ってこちらを見ていないなかで彩明が言った。


「何、彩明?」


言いかえてまで何を聞こうとしてるんだろうか。


「ずっと‥‥死ぬまでそばにいてください」


「もちろん。僕は死んでも絶対に離さないよ。心も魂も名前も彩明にあげる。だから僕にも彩明をください」


もう君がいないと僕は生きていけないから。


「‥‥‥はい‥喜んで」



僕のそばでずっと笑ってください


いつも語るだけの僕だけど


今度は君と僕の物語を紡ぎたい


つらいことも楽しいことも苦しいことも面白いことも全部


そしていつか僕は語るだろう



《りゅうの娘》という物語を君と一緒に‥‥‥‥


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