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りゅうの娘  作者: 猫田33
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「ふぅ‥」


僕は溜め息をつきながら濡れた手拭いを顔に当てた。


「あと‥‥‥五日」


ヤーミ姫がだした僕を迎えに来るまでの期限。倒れて一日過ぎ今日を入れないと五日しかなかった。


「語り手さんでしたっけ?溜め息ついてどうしたんですか」


いつの間にか翔が目の前に立っていた。


「ヤーミ姫の迎えに来る期限があと五日しかないので溜め息をついているんです。僕は、ここで生きていたいです」


「そういえばそうでしたね。力になりたいですが僕が出来ることは、あなたに言葉を贈ることだけ」


「言葉?」


「物は滅びる。あげて残るのは言葉つまり心だけです。あなたは自分の心を伝えたい人はいませんか?」


僕が言葉を贈りたい相手か。


「蓉歌様に応援、驍燿に頼み事、住職に感謝、琥珀と狼千氏と杏に祝福‥‥‥」


まだまだ会って伝えたい人がいる。


「彩明ちゃんには言いたいことはないのですか?」


彩明は‥‥思いつかない。感謝じゃ足りないし応援は違う祝福って何を祝福するんだ?それよりも‥‥‥‥


「彩明に会いたくない」


「えっ!?」


「彩明に会ってさよならを言いたくない‥‥。考えただけでなんだか地面に足がついてないみたいだ」


「どういうこと?」


僕の方がどういうことか知りたい。でも今まで生きてきて一番近いのは‥‥‥‥不安。


「貴方の疑問の答えは、貴方の中にきっとありますよ。だから自分をもっと見て下さい」


そう笑って答える翔はやっぱり長い時間生きていることを感じた。


「わかりました。ありがとうございます」


とりあえず彩明に会ってみよう。なにもしないより何かわかる筈だ。そう思うと僕は彩明に無性に会いたくなり探すことにした。


「こんな感じでいいのりゅう?」


翔は、窓に目を向けるとりゅうが木に背をもたれていた。


「わからない。でも彩明には幸せになって欲しい」


「人間ってやっぱりわからないな~。子どもっていっても他人なのに。最後は自分じゃない人を優先するんだよ」


無邪気に笑って翔は出て行った。


「それが人間だ」




「彩明!」


彩明はいきなり話しかけられた為か持っていた棒を落とした。


「彩明に言いたいことがあるんだ。時間はあるかな?」


「清さん達が良ければいいですよ」


どうやら清と一緒に棒術の訓練をしていたらしい。


「清さん!少しの間だけで外して貰っていいですか」


「えっ!はっはい!?失礼しました」


清は頬を染めて全力疾走した。王都に来てもあのままとは‥‥そのうち誰かに騙されそうだな。


「彩明いいかな」


「はい」


彩明を座らせてから僕も座った。


「まずは‥‥‥彩明ありがとう」


「いきなりなんですか?感謝したいのは私の方ですよ」


「その‥‥彩明のおかげで蓉歌様も無事皇帝になりそうですし。僕もなんとか生きてこれた」

「私はほんの少しお手伝いをしただけです。お姉様が皇帝になれるのも語り手さんが生きているのも本人の意志の強さです」


彩明は、謙虚だな。だから頑張れるのかな。


「それでもやっぱりありがとうって言いたいな。あと‥‥」


彩明に会って話してやっとわかった気持ち。僕は覚悟を決めた。



「彩明、僕は‥‥」


「語り手!約束の時が来た来るのじゃ」


闇の中からヤーミ姫が現れて僕の腕を掴んだ。


「まだ七日経っていない筈だ!」


「あの世では七日経ったのじゃ。早く来るのじゃ!‥‥‥広進動くな」


名前を言われた途端に僕の体が動かなくなった。


「嫌だ!!」


声だけは出るようで僕は彩明に叫ぶ。


「彩明!」


「語り手さん!?」


彩明は、僕に手を伸ばすが手に届かない。せめてこれだけは‥‥‥。


「行きたくない‥‥好きだ彩明!」


僕は、あの世の闇にのまれた




「ここから出して下さい!!」


僕はあの世に着いた途端座敷牢に入れられた。とりあえず騒いで座敷牢から出して貰おうとしている。


「うるっさいな!綺麗な顔に傷をつけてやろうかぁ?あ゛ぁ」


「うーんここでの傷は魂の傷ですから困りますね」


僕がそう言うと鬼が感心していた。


「珍しい生者がそんなこと知ってるなんてなぁ」


「語った先で一度死んで生き返ったお爺さんの自慢話ででたんです。まさか本当だとは思いませんでした」


鬼は眉間に皺を寄せた。恐ろしい話が多い鬼がそんな仕草をするのがおかしい。


「そういえばそんな爺様いたな。あんときゃあ、爺様が間違って連れてきた詫びに少し寿命を伸ばしてやったな」


「へー。お爺さんはそこまで言ってませんでしたよ」


「当たり前だ。話たらその時点であの世に連れて行くと言ったからな」


確かにそれでは話すまい。しかしふと思う。


「僕には話していいんですか?」


「ヤーミ姫様の婿殿になら問題ないだろう」


僕まだ了承してないんだけどまた拒否なしか?


「ヤーミ姫がかなりのご執心だからな。‥‥神席に入れるなんぞ特例中の特例だ。って、なんで俺が説明しなきちゃならないんだ!」


「さぁ?僕は疲れたから寝ます。おやすみなさい」


僕はその場に横になった。


「おう、お休み‥‥って寝たのか!?まぁ寝てる方が静かで楽かぁ‥‥」


こんな所で呑気に寝るか馬鹿。それにしてもどうやってこの世に戻ろうか‥‥。

部屋の前には鬼、あの世に地の利がある訳もなく‥。

どうしたものか?

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