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りゅうの娘  作者: 猫田33
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体中が引きちぎられるように痛い。


痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!


「まずいのぉ‥。やはり生者にはあの世は辛いようじゃ」


引っ張られる感覚とともに一気に体が軽くなった。




「‥‥‥こ‥こは‥‥?」


僕はとても立派な部屋に寝かされていた。ありえないほど布団がふかふかで驚く。


「妾の部屋じゃ語り手。気分はどうじゃ?」


ヤーミ姫は、僕にお茶を渡した。心地よい香りが体を落ち着かせる。だがそう簡単に渡されたものを飲まない。


「僕に何をしたんです」


「あの世を通過してこの世に戻ってきたのよ」


あの世という単語で茶から急いで口を離した。あの世のものを飲み食いするとこの世に戻れなくなるという話をよく聞くからだ。


「それはこの世の茶じゃ。安心して飲みなされ」


それでも一応気をつけて飲まないことにする。


「用心深いの~。妾が嘘をついたら兄上に舌を抜かれてしまうじゃろ」


ころころ笑って答えているが結構残酷な内容ですよね‥‥。


「兄上は真面目じゃからなぁ~。身内といえど容赦ないじゃろうな」


「兄上とは?」


「ヤマラージャ、閻王、閻羅などと呼ばれるが一番有名なのは冥府の王、閻魔大王」


やっぱり?どうしようかな‥‥。とりあえずどんな位置に置かれたか確認しないと。


「ヤーミ姫僕をどうするつもりですか?」


「冬稟さんは、人質にすればいいと言ったが気に入ったからあの世へ連れてく」


僕が気に入ったからあの世へ連れてくなんて光栄だなぁ~じゃなくて!死ぬのは嫌だ。


「そんな顔しなくとも連れていけない。条件に合わんのじゃ」


「条件とはなんですか?」


「相手が最初につけられた名を知ること」


危なかった‥‥。


「語り手安心するのは早い。悟り!語り手の心を読め」


サトリ?


戸から現れたのは三つ目の大男だった。


《んっ?くんっ、くんっ、あいつの匂いがする》


サトリは、僕に近寄り真ん中の目で僕を見た。その琥珀色の目は見たことがあるような‥‥。


《あー、おもろなくな~。平和ボケしてんじゃね?あっ、でも趙真って奴やったら面白そうだな》


まさか!?


《おぅ、琥珀とは知り合いだぞ。知り合い所か俺は父親だ。これくらいで驚くな》


心をよんでる!?どうやって手で触られてないのに。


《教えるわけないだろ。ククッ》


「悟り早くしてよんで欲しいのじゃ。早くせんと語り手の連れがここまで来てしまうぞ」


ヤーミ姫は、その場を行ったり来たりしている。


《ここは、後宮の隅の隅だぜ?玉座からここまで一刻もかかる。しかも一部屋一部屋調べないといるかわからないから余計時間がかかる筈だ》


落ち着いたのかヤーミ姫は椅子に座った。


「語り手そなた何故逃げない」


「今逃げても逃げ切れる自信ないですしこのままここにいた方が良作かと」


絶対探しだしてくれると思いますから。


《おっ、面白い記憶発見》


「面白い記憶とはなんじゃ」


《語り手がなぜ名前を覚えていないかという記憶だ。お前血を見ると卒倒するだろ》


「なぜ知ってる」


《心が見えると言っただろ。俺には見えるぞ。母親に首を絞められるお前》


首を絞められた‥‥?


《だけど近所の人が気づいて母親を引き離したけどな。しばらくして母親が落ち着いたら帰された》


なんか嫌だ。親元に帰されて終わらない気がする。自分のことなのにわからない。


《帰された夜、包丁を持った母親がきた》


思い出せないが実際にあったようにくっきりと想像できた。月が明るい夜、包丁を持った母が僕の脇に立つ。

聴きたくない、聞きたくない、ききたくない、訊きたくない。

僕は耳を塞ぎ扉目指して走るが悟りに腕を掴まれ進めない。悟りが真っ赤な口を開けてニタリと笑う。


《お前はその時たまたま起きて見てしまった。お前に包丁を振り下ろす母親の姿をな》


思い‥だした‥‥。


「もみ合って僕は母さんを‥‥」


殺してしまった。


《お前は母親を殺したんだ。自分の手につく生ぬるい母親の血。一番の傑作は、これだ「広進(コウシン)!あなた‥‥」って恨みがましくお前を見て死んだ》


そうだ僕の名前は広進‥‥。

母親を殺した親不孝な子どもの名前。

大切な女性を殺してのうのうと生きている男の名前。

そして母親から愛されなかった子どもの名前。


「僕は生きてていいのか‥‥!?僕は!僕はっ!」


体の力が抜けて立てない。走ったわけじゃないのにやけに心の臓の鼓動がうるさい。


「なら妾とあの世へ行くか?母親に逢えるかもしれないぞ」


ヤーミ姫は僕に手を差し出す。

僕は‥‥‥


答えを出そうとした時、扉が音をたてて割れた。息を切らした彩明が部屋に入ってくる。


「語り手さんを連れてかないでっ!!」


「ちょっと悟り!?半刻も、たってない。なぜ見つかるのじゃ」


「私‥耳はいい‥‥ですから。語り手さん‥の声が聞こえて‥‥きました」


彩明は呼吸を整えながら僕の腕を掴む。立たせようと引っ張るが僕は立てなかった。


「語り手さん!また来年師匠さんのお墓参りするんでしょう!?お願いですから生きてくださいっ」


彩明は泣いていた。僕は、それを見て胸が痛くなった。泣かせている僕が言えることじゃないけれど彩明には笑って欲しい。ゆっくりだけど僕は立ち上がる。


「ヤーミ姫、僕は親殺しでも親に愛されていなくても必要としてくれる人がいる限り僕は生きる」


僕は、生きていたい。


「行きましょう」


彩明と一緒に僕は走りだした。

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