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りゅうの娘  作者: 猫田33
御旗の下に
19/36

眠い


「眠り姫は王子のキッスで起きるってかぁ~?た・め・し・にしてみよかのー」


急いで目を開けると、頭頂が禿げた男が目を閉じ口を尖らせせまっていた。僕は無言で頬を殴りつける。


「痛いちゅうねん!手荒な姫さんやな」


「誰が姫だ。寝こみ襲っといて手荒なも何もないだろう」


「あんさんその声男なんかぁ!?わい‥一生の不覚や」


頭を抱えると背中に垂らした三つ編みが見えた。南ではあまり見ないが弁髪だろう。それにしてもこいつはどこの誰だ。


「‥‥‥あなたは誰ですか。寺の者ではないですね」


「わい?わいは古今東西どこでも行く商売人の張平(チャンペイ)や。この寺にちょい用があってぇな。なぁ蓉歌はんどこいるかわからへんか」


「蓉歌に何かようですか」


張平は蓉歌様にとって敵か味方か?もう少し話を聞かないとわからないな。


「それは‥」

「かったり手~!起きた?朝ご飯出来‥‥張平いたの」


蓉歌が肩を落とし対照的に張平の目は輝きだした。


「蓉歌はん会いたかったぁ~。1ヶ月ぶりやな」


張平は、蓉歌に抱きつこうとしたが蓉歌に顔を蹴られた。三つ編みを結んでいる紐に青い石がついているのが見えた。こいつも僕と同じか。


「なんで!語り手が1年であんたは1ヶ月なのよ。しかもあんた次は半年後に来るっていったわよね。ただ来ただけじゃないでしょ」


「さすが蓉歌はんその通りや」


張平はにやりと笑って一枚の紙を差し出した。その紙にはある行事の日時と開催場所が書いてあった。


「この紙はなんですか」


いつの間にか彩明がいて小首を傾げてきいていた。


「おうっ!親切な彩明はんやないか。これは建国記念の祭りの日時なんや。竜滅物語の劇や露店やらでめっちゃ賑わうんやで!」


竜滅物語と聞いて彩明を見るとコロコロ表情を変えていた。だかどの表情も暗い。


「確かにいい話ね。これなら計画を実行出来るわ」


「不思議に思ってたのですが計画ってなんですか?」


彩明に計画について話していなかったな。そもそも正式に仲間でない人物に話せるないようではまったくなかったのもあるが。


「彩明に計画について話してなかったね。僕達は現皇帝を下ろして蓉歌を女帝にするため行動しているんだ」


「皇帝を下ろす?女帝??」


難しい言い方だったかな。


「現皇帝は父の弟‥‥私の叔父様にあたる。叔父様は、私の父に反逆し皇帝になった。しかも七人いた兄様を処罰して残りは私だけ」


「なぜ蓉歌お姉様だけ‥?」


「私が女だから戦略結婚の道具にするつもりなんでしょ。それか女が政治なんてとたかをくくっているとしか思えないわ」


蓉歌は、自嘲気味に笑った。女であることを嫌っている蓉歌。寵姫だった母は、出産してすぐに亡くなった寵姫を失った皇帝は、暗殺されるまで国を傾け続けた。蓉歌は、男だったら後継者として父を補佐し暗殺をさせなかったと言っていた。本当にそうなるかわからないし、もう終わってしまったから僕にはわからない。


「戦略結婚?新しい兵法ですか」


なんでそんなことも知らないんだ?説明した方がいいか?


「彩明はんは、わからんでもええと思うで。そいで話戻すけどな。建国記念日に向けて人や物が多くなるやろ。それに乗じて反乱を起こすんや!」


鼻息を荒くして張平は言った。はっきりいって気持ち悪い。


「反乱?戦争を起こしたらたくさんの血が流れて怨みが怨みを生むだけです」


そんなの綺麗事だね。戦争をした方が助かる場合もある。


「確かにそうかもしれない。でも今夏華国の国民は、新しい皇帝を待っているわ。

人外への徴税、戦争の為の徴兵、悪臣を更迭しない、いらない場所への増築。いくらでも問題点を上げられる。止めるには、皇帝を換えるしかない」


「その問題点は蓉歌様が皇帝になって無くなるのですか」


彩明と蓉歌の視線が合わさった。


「無くなる努力をする、でも私一人では出来ない。語り手や驍燿、張平もちろん彩明の力が必要よ。だから彩明、私と一緒にこの計画やり遂げない?」


「嫌です」


「彩明なぜなんだ?」


ついつい蓉歌より先に問いかけてしまった。


「誰も殺さないでください。皆さんの手が血に濡れるのを見たくないです」


蓉歌は突然笑い出した


「ふふっ、アハハハハッ!彩明、私は誰も殺さないわ。私には人を殺す覚悟がない。人を殺し殺されるだけが戦争じゃないわ」


「それは僕も初耳なんだけど蓉歌様?」


「だって今考えたんだもん当たり前よ。私、皇帝になること以外考えてなかったもん」


えーーーー!?しっかり考えてると思ってたのに。実は僕何もわかってないのか?


「うっかりしてる。蓉歌はんもかわええで」


張平は歯を見せた笑顔をして言った。


「気持ち悪いやめなさい」


「きつい所も素敵や~」


陶酔した顔で張平は言った。こいつの考えにはついていけない。


「彩明?今度は計画に賛成でいいかな」


「はい、これなら賛成します」


「よかったわ。彩明ちゃんがいないとできない計画だから♪さて、朝ご飯にしましょ!」


蓉歌はその場に立ち上がった。それに続くように張平がたちあがるまるで梅雨の時期の茸だ。


「蓉歌はん朝ご飯なんやぁ?」


「誰もあんたにだすなんて言ってないわ」


蠅を追い払うように蓉歌は手をヒラヒラさせた。


「お願いや!わいは城下から飲まず食わずできたんやで。なんか食わんと死にそや」


「あんたの性格でそれはない。女の子見つけてわお茶誘いまくったに違いないわ」


「そんなことあら‥‥」


「えっ私にお茶飲みにいかないか言いましたよね張平さん」


謀ったのかボケたのかわからないが破壊力抜群の言葉だった。


「しゃーーーーせんっ!誘いましたぁーー」


張平は凄い勢いで土下座した。


「ほらそうじゃないの。まぁ欲しければ厨房の鶴に頼むことね」


「無理・無謀・無茶・無策・無益・無辜や!鶴はん、わいを虱とか見る目するんやで。この前なんかなぁ!‥‥」


言ってる言葉が途中で変だぞ。


「厨房かりて自分で料理すれば?行きましょう語り手、彩明ちゃん」


僕達は、土下座したままの張平を置いていった。彩明は後ろが気になるらしくちょくちょく振り向きながら聞いた。


「張平さん置いていっていいもいいのですか」


「いいのよ。どうせ湧いてでてくるから」


「蓉歌様がいいなら僕もいいですよ」


「なんで笑ってるの語り手」


「ふふっ、秘密です」


さっき考えた茸にもろ当たりだな。




「父さん三週間後計画を実行するわ」


蓉歌は、朝ご飯を食べ終えた後に住職へ言った。緊張しているのか少し表情がかたい。


「そうか、いってきなさい。成功しても失敗してもここが蓉歌の家だよ。自分を証明してきなさい」


普段と変わらない態度で住職は言いきった。いつものをみると泣いて嫌がりそうだが違ったようだ。


「蓉歌さんいっちゃうんすか和尚!」


「このむさ苦しい寺の花がぁぁ!」


周りで聞いていた僧がいっせいに騒ぎだした。煩悩むきだしだ。


「お前達どうしても行きたいか?」


「「「「はい!」」」」


そんなこと言っても駄目でしょう


「なら一緒に行きなさい」


えっ!?


「ぃやったーーー!!」


「和尚が仏様に見える!」


「いつもは鬼坊主なんて思ってすみませんでしたっ!」


ただし続きがあった。


「この前の武術大会で決勝、準決勝、準々決勝に出た者だけだ」


この言葉に半分以上の僧達が肩をおろした。負けてるものな。


「ここに人が足りなかったら何かあった時どうするつもりですお前達。それにあまりに人数が多いと金がかかる」


珍しく住職が真面目に話をしている所へ鶴がわって入ってきた。


「犬ちゃん!あたし行けないからぁ隼と交換してもいい?」


住職は少し考えこみ言った。


「隼ならいい。ということは隼、閑、清、孟、杜南[トナン]、イブン、休迦[キュウカ]の七人だな。‥‥蓉歌を頼む」


蓉歌、彩明、たぶん驍燿と僧達七人の計十人。ずいぶん団体だ。蓉歌はどうするつもり固まってるよ。


「父さん!こんな団体にしてどうするの。私は旅行に行くわけではないのですよ!!」


あっ、さすがに蓉歌がきれた。


「旅行者に見せかけて行かせようとしたが駄目か?」


「体格がいい男七人も連れていったら目立つでしょうが!?ものすごく怪しいわよ」


「他の案も抜かりなく考えている。大道芸人になりすまして行けばいい」


「和尚、簡単に言わないでください!俺達がいつもしていることは修行ですよ」


閑が卓を拳で殴りつけて言った。


「いやぁ、昨日驍燿殿が煌びやかな格好で武術大会の時したことをすれば儲かりそうだと言っていた。そういいましたな驍燿殿?」


突然話をふられた驍燿は驚きながらもいった。


「あぁそう言った気がする」


はっきりと言いなさい驍燿。


「というわけでだ。驍燿を座長とする大道芸人になってもらう」


驍燿が座長!?ぷっ、くくっ面白い。


「おいっ、いくらなんでもそれは‥‥」


「いやぁ、楽しみだな」


驍燿が反対のようだが住職は聞く耳もたずだった。ご愁傷様だね驍燿。驍燿を見ているといきなり肩を叩かれた。


「語り手はんわてらもいくでぇ。これからすぐな」


「僕もそのつもりだったがすぐというのは早すぎじゃないか」


「和の国の言葉でな。善は急げちゅうのがあるんやで?あと先について蓉歌はんが泊まるとこと費用を準備せなあかんしな」


「費用のあてはある」


趙真のくれた木簡を使えば工面できる筈だ。泊まる所はいくらでもありそうなものだが?


「そか!なら泊まるとこ探すかいな。祭やから十人以上泊まれる場所なんてそうそうあらへんやろ」


「考えてみればそうですね。わかった今すぐ行こう。でもその前に先に行くことを蓉歌様に伝えてきます」


蓉歌様の方に行こうとしたら襟を掴まれた。


「しなくとも大丈夫やって!早よ行くで~」


「そんなわけには‥離せ!離せって!」


そのまま引きずられ寺から出発した。

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