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僕達は、しばらく無言で山の中を歩いていた。普通無言は気まずいが彩明との無言はなぜか落ち着く上に心地よい。
「あっ!蒲公英だ。蒲公英がありますよ」
少し開けたところに行くと蒲公英が、敷き詰められたように咲いていた。
「ほんとだね」
突然彩明が蒲公英の中に倒れこむ。
「黄色の絨毯みたい!しかも太陽の香りがするのが素敵」
彩明が蒲公英の花粉で体中を黄色にしながらそういった。
「クスクス、そんなことするから体中に花粉がついてますよ」
僕は髪の花粉を取ろうと髪に触った。サラサラと流れる髪は触り心地がよい。
「頭のはとれましたか?」
「あっ、はいとれましたよ」
時間がかかっていたのか彩明は服と顔を払い終わっていた。
「ありがとうございます」
「どういたしまして。‥‥そういえば師匠は蒲公英好きだったな」
「そうなんですか?」
「うん、蒲公英は食べれるし薬にもなるから好きと言ってた」
旅の途中咲いていれば摘んでおひたしにして食べさせられた。あの時は苦くて大嫌いだった。
「他に好きな理由は強いからとも言ってたな。踏みつけられても、寒い冬も、風が強くても、毎年太陽みたいにまぶしい黄色の花を咲かせるから好きと言ってました」
「確かに小さな太陽みたいですよね」
「小さい太陽かそうだね」
僕の隣の人もそうかもしれないな。真っ暗で何も見えなかった僕を照らした人。
「よし!摘んで墓に供えるか」
僕が茎から折ろうとすると彩明から待ったをかけられた。
「彩明どうしたんだ?」
「あの‥‥摘むんじゃなくて根ごと持っていきませんか」
なんでまたそんな時間のかかることをさせる。
「いいけど‥‥ここ掘るの?」
「さっき倒れこんだ時土柔らかかったから掘りやすいと思います」
「なら大丈夫か」
そして案外時間もかからず掘り起こせた。
「掘れた!」
「じゃあ行こうか」
「見晴らしがいいですね」
「そうですね」
僕達は山頂近くの師匠の墓にいた。彩明が浅く地面に穴を掘り蒲公英を植える。一輪だけでもあると華やぐがもう一輪欲しいな。
「一輪だけでは蒲公英が可哀想だな。でも今更‥‥もう一輪持ってくる時間はないし」
「一人じゃないです。語り手さんの師匠が一緒です」
だから彩明は摘むのでなく掘り起こしたのか。ずっとそばで咲いていられるように。
「寂しそうに見えるならまた来年ここに蒲公英を植えましょう」
「そうだね。植えに来よう、また」
その時、生きてればいいな。
いや‥‥‥頑張って生きのびよう。




