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りゅうの娘  作者: 猫田33
不撓寺
15/36

それからの旅は順調で変わったことといえば、馬車を途中で返してまた徒歩になったこと。もう一つは‥


「今日は何を歌いますか?」


「彩明が好きな歌でいいよ」


「それがいいな」


彩明が寝る前に少し歌うようになった。


「これはどうでしょうか」


彩明の歌は透き通っていて深く心に響く。


「彩明は歌上手だね」


「ありがとうございます」


そういいながら頬を人差し指で軽く掻く。そういうことをするのは照れた時だ。


「次の機会があればいいが明日には主の所に着く。覚悟はいいか彩明」


「わかってます驍燿さん」


前と同じように笑って答えた。明日彩明の生死が別れる。




「着いた」


僕達は不撓寺の門前にいた。


「えっ!寺ですか!?ということは主って寺の住職さんですか?」


「住職じゃな‥‥」


とつぜん嫌な予感が頭をよぎる。


「かーたー―りー――てー―――!!久しぶり!!」


すごい勢いで来る長い赤毛は、見知った人物の髪の色。


「来るな!蓉歌様っ!」


蓉歌に押し倒された


「もう!こんな美人に来るな!なんてひどいじゃないの♪それにしても語り手また格好良くなって~」


そういいながら蓉歌は色々な所を触ってくる。きわどいところは、やめてほしい。


「お願いだからどけてください蓉歌様」


驍燿が目線で射殺しそうです。


「いーや!婚約してくれるまでどけない」


「蓉歌様!皇女のする行動ではございません」


驍燿は、軽々と蓉歌をどかした。


「それに私は、蓉歌様をそのように育てた覚えはありません!」


「私は今、皇女じゃないわ!それに語り手ほどいい男なんてそうそういません!」


「この男のどこがいいんですか!私の送った花婿候補はどうしたんですか!?」


驍燿そんなことまでしてたのか。まるでおせっかいな叔母さんみたいだ。


「驍燿の目は節穴!?母離れ出来ない男、自己陶酔男、傍若無人男、なにより私より弱いのは論外よ」


「理想が高すぎるからいき遅れてるんです!」


あ~、本人気にしてるだろうに。


「仕事馬鹿で奥さんに逃げられた人に言われたくないわ!」


このままだと夕飯まで言い争いしそうだ。


「あのー‥とりあえず寺の中に入りませんか?」


「「黙りなさい!!」」


「あっ、はい」


二人して怒鳴らなくてもいいでしょう。


「そういえば彩明はどこに?彩明どこですかー?」


周りを捜すとジャックの影に彩明の笠がみえた。


「彩明いきなりいなくならないでください。‥彩明?」


下から覗くと彩明は、ジャックによりかかり寝ていた。前に昼寝が、好きということを言っていたのを思いだす。


「起こすのも悪いけどここで寝られても困るな‥」


とりあえずおんぶしたが早く下ろしたい。その‥‥胸あたるんですよ。急いで蓉歌の所まで行った。


「語り手!ちょっと聞いてよ‥‥誰その子?」


興味が湧いたのか不躾に蓉歌は、彩明をじっと見ていた。


「仲間候補。寝ちゃったから寺の部屋借りていい?」


「もちろんいいわ。さっ!こっち」


僕は、蓉歌についていこうとしたがその前にすることがある。


「驍燿!ジャックを厩に連れて行って」


驍燿からの返事はないが大丈夫だろう。


「へー、強いんだ。手合わせしたいな~」


「起きるから静かに」


部屋に寝せたら彩明についてきかれ大まかに説明した。


「これだけよく寝てれば起きないわ。それより‥‥」


蓉歌は僕にしなだれかかってきた。これで動揺すれば蓉歌の思う壺だとわかっている。


「私と離れて寂しくなかったの?前こっちに来たのは一年前じゃない」


潤んだ瞳とふくよかな体を押し付けてくる。普通の男なら色香に負け肯定するだろうが、何年間か付き合っているから耐性がついた。僕は仕事の姿勢を崩さず続ける。


「調べあげるのにそれくらいの月日がかかります。時間がかかっている分内容は、充実したものを毎年報告している筈です」


「誤魔化しちゃだめ。今は仕事としてじゃなく語り手、個人にきいてるの」


「仕事でないなら言う必要はありません」


「あぁいえばこういうのね」


そのとき彩明が目を覚ましかけた。


「蓉歌様、彩明が起きるのでどけて‥‥‥‥!!」


不覚、一瞬の隙をついて蓉歌が唇を押し付けてきた。僕は蓉歌を引き剥がして彩明の方を向いた。彩明は顔を真っ赤にして目が泳いでいる。


「‥‥私は、その‥見てませんよ?その‥接吻なんて‥‥」


彩明は一部始終見たらしい。


「お似合いの二人ですね。でもそちらの方はどなたですか?」


お似合い‥‥か。ありえないけどね。


「僕の主の蓉歌様です。元皇女で今は、この寺の住職の養子になっています」


姿勢を正して蓉歌は切り出した。蓉歌は、しなだれかかった体を起こし姿勢を正す。この公私の区別の速さは蓉歌の尊敬できる所の一つだ。


「彩明スザンナ白さん、主として臣下を助けていただき感謝します」


「いえ、‥‥そんなこと」


「そして白さんは、私達の仲間になる覚悟があるとききました。庶民から見れば汚い仕事もあります。その覚悟揺るぎませんね」


蓉歌は彩明をまっすぐみた。彩明も視線をそらさず見つめ返す。


「はい」


「なら私が死ねと言ったら死ねますか?」


「いいえ」


まずいんじゃないのかその答え!?

二人の間に緊張が走り独特の空気が流れる。


「喜んで仲間にします。今日からよろしく彩明さん」


「何故!?」


蓉歌は悪戯が成功した子どもみたいな顔をした。


「私が欲しい人材は私の操り人形じゃなく。私の為に動いてくれる人よ?それに自分の臣下の命を守れずしてどうやって民を守るのよ」


「なるほど」


「それに‥‥」


言い終わる前に彩明に抱きついた。


「こーんな!かわいい妹分が欲しがったの~~♪小さくて可愛いしお肌つるつる~」


やっぱり‥‥そっちもか。


「蓉歌‥‥様よろしくお願い」


慣れないのか少しずつ言う彩明を蓉歌は黙らせた。


「だーめ!蓉歌お姉さんって呼んで彩明ちゃん♪」


「蓉歌様、彩明の方が年上ですよ」


「まさかぁそんなわけ‥‥」


「えとっ私はハ百九十歳です」


これをきいてさすがの蓉歌も絶句したようだ。


「あっ、彩明の出生話忘れてた」


それから少しの間、蓉歌は僕から彩明の親の話を黙って聞いていた。


「ということなんです」


「問題ないわ。彩明ちゃんが、自分は竜滅物語の竜の娘だと公言しなければいい問題でしょう。逆に大勢に知られても私は、初代王の過ちを正そうとしていると言えば問題ない」


そして蓉歌は彩明に頭を下げた。


「竜も民の一人なのに竜滅物語のような物語で貶め辱めてすみません。聞くたびに不安や嫌な思いをさせたことを詫びます」


蓉歌も‥‥王宮にいた時の陰口で苦しめられている。その愚痴を毎回僕が聞いている。


「頭をあげて下さい!私の大事な人達がわかってくれるだけで十分です!!」


「本当にそんなのでいいの?」


彩明は謙虚なのか発言の意味を理解していないのか。


「はい、私の好きな人が困るならこれ以上は望みません」


「‥‥‥‥私が好きな人でいいのかしら」


「蓉歌さんとはいい友達にもなりたいです。友達になってくれませんか?」


「私でいいなら喜んで」


「蓉歌さんが女友達第一号です!」


「あら!光栄ね」


すっかり意気投合したようだ。これならこの作戦いけるかもしれない。


「蓉歌様、彩明を蓉歌様の護衛にしていただけませんか」


蓉歌の動きが止まった。


「彩明に私を護衛させる理由は何ですか」


「蓉歌様には、今女性の護衛がございません。男の護衛を部屋の中まで護衛させるのは難しいです。蓉歌様も王宮にいた時、女性警備隊に守られていた筈です」


「確かにそうね。‥‥話を折ってしまったわ。続けて」


「はい。ここは比較的安全ですが、計画通りに進めば城下に行かなくてはいけません。計画の為に蓉歌様の安全確保は絶対です」


それに彩明を蓉歌の護衛にすれば間諜にさせずにすむ。


「理由は理にかなっているわ。でもそれには問題が一つあるのを忘れてない?」


僕が何か考えついていない不安定要素があるのか!?


「私は彩明の強さを知らない」


まさか、彩明と手合わせする気じゃあないだろうか。この方は常日頃お茶目な方だから僧侶に混じって鍛練もしてしまう。


「待っ!」


「不撓寺の坊主を集めて武術大会をしましょう」


「嘘!?」


「嘘なわけないわ。明日は楽しみね~♪」


「私も楽しみです」


「二人して‥‥」


蓉歌の心配をして損した。


「だって~語り手から強く見えても彩明ちゃんが、弱い可能性があるもの。語り手の強さは体の強さじゃないから余計にね♪」


これは何か企んでそう。


「そうと決まったら父さんに話をつけましょう」


「住職は許可しますかね?」


普通は許可しない筈だ。


「ふふっ、ここは不撓不屈の精神を養う不撓寺よ。なのに軟弱な坊主が、増えたと嘆いていたから問題ないわ」


「住職も変わりないんですね」


住職は筋骨隆々な狼男。もともと満月の時の破壊衝動に屈しない為この寺の坊主になった。そして今では破壊衝動を抑え込むことに成功している。


「えぇ元気よ。久々に稽古についてもらったらどう?」


師匠が亡くなってから住職に体術を教わっているが今日は‥‥。


「師匠の所に行くよ命日だし。蓉歌様も」


「私はいいから‥‥行ってらっしゃい」


また駄目だった。師匠は蓉歌のお使い中に事故で亡くなった。合わせる顔がないのか五年経った今も墓参りに行かない。毎年それとなく誘っているのだが今年も駄目らしい。


「‥‥私ついて行ってもいいですか?」


「彩明はなんで行きたいんですか?」


彩明は師匠と面識がないはずだ。


「なんとなく?」


彩明は首を傾げて僕を見た。僕を見ても僕の顔には答えは書いていない。


「まぁ、いいですよ。行きましょうか」


たまには誰かといくのもいいかもしれない。師匠は、しみったれた雰囲気が嫌いだった。


「蓉歌様、夕方には戻ります」


「いってきます!お姉様」


蓉歌は目を見開いたがすぐ顔を綻ばせた。


「いってらっしゃい。夕飯彩明ちゃんの為に美味しいの作ってあげるわね」


「えっ!蓉歌様作るんですか!?」


前に野菜炒めを作ろうとしてほとんど炭にした。娘への愛で食べた住職は、しばらく粥しか食べられない重傷になった。


「‥‥‥‥ご飯握るだけよ。そんなこと言ってないで早く行かないと夕方につかないわよ」


「わかってる」


「楽しみにしてます」


僕達は、寺を後にした。

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