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「野宿だな」
「野宿ですね♪」
「野宿‥‥‥‥彩明楽しそうだね」
彩明は、寒空の中で野宿なのに楽しそうだ。私はあまり好きではないのだが人それぞれといったところだろうか。
「こういう寒い日は星が綺麗なんですよ!いつもよりいーっぱい見れます!あと月も白くてとても綺麗です」
僕としては夜の番をしなくちゃいけないから面倒くさい。
「じゃ語り手夜の番よろしくな。月があの木にかかったら彩明ちゃんと交代」
「あれ?驍燿はいつ交代する‥‥‥っ!」
驍燿はギロリと僕を睨む。
「年寄りに夜の番をさせるのか?最近の若者は年寄りに酷いなぁ」
喜安郷にいた時は年寄りじゃないと怒ってたのに、今更年寄り扱いするなんて虫がいい話だな。
「わかりました。驍燿さん寝ていて下さい」
「‥‥ありがとう寝る」
驍燿はすぐに寝入ったのを僕は火をつけながら見る。
「寝るの早いな」
「疲れてるんですよ。途中から息あがってましたし」
「気がつかなかった」
僕が先頭で歩いていたというのは理由にはならない。後ろが遅れないように歩くのも先頭の役割だ。
「語り手さんが後ろを向いた時は、平気な顔をしてましたから仕方ないです」
頑固さもここまでくると尊敬してくる。でも横になってすぐ眠くなるのは、何があるかわからない道中危険だ。
「彩明、僕が頼んだら驍燿は先頭歩くと思う?」
驍燿は僕が大丈夫か聞いてもぎりぎりまで体力を使い果たすだろう。だったら驍燿に先頭を歩かせて驍燿の速さに合わせればいい。
「どうでしょう‥‥旅に慣れているのは語り手さんです。なのに突然代わって欲しいと言ったら怪しまれそうです」
「それもそうだな‥」
「私が語り手さんは、不安だから驍燿さんに代わって欲しいと言います。理由は語り手さんが選ぶ道は歩きにくいとか‥‥‥どうですか?」
確かにその理由は使える。実際早く目的地に着くため、足場が悪いが近道をしたからだ。
「そうしよう‥‥。彩明僕が番をするから寝て‥‥もう寝てる」
木によりかかり歳の割にはあどけない顔が、焚き火で照らされる。彩明を横抱きして焚き火に近い場所に降ろす。
「教えてくれてありがとう彩明」
「どう‥‥いたし‥‥‥ましてぇ」
「フフッ寝言か」
顔にかかった髪をとかしてどけた。
「僕に‥妹がいたら。こんな感じだったかもな」
でも実の家族がいないからわからない。ただ久々に暖かな気持ちが広がるのを感じていた。
寝ている彩明を見て思う。この少女に出会ってから少しずつ僕の心の中に入りこんでいて、本当は駄目だけど彩明を妹のように大事にしたいと思う自分がいる。あそこについて彩明が間諜に決定したら彩明を壊すのは間違いなく教官役の僕だ。それが嫌なら彩明が、僕に怪我を負わせて山に帰ったと伝えればいい。
でも離れたくない‥‥
もう少しもう少しだけ彩明といたい。僕の身勝手に付き合わせてごめん‥‥‥彩明。
僕が出発することを言うと、彩明が打ち合わせ通り文句を言いだした。
「語り手さんが歩く道は歩き辛くて嫌です。語り手さんが先頭歩くなら驍燿さんの方がよっぽどましです」
「彩明が何も言わないのが悪いだろう」
「足手まといは嫌だから黙っていただけです。言わなくても私女の子なのですから気遣って下さい!」
「女の子と言っても竜の女の子でしょう?身体能力的に大丈夫でしょう」
「ひどい!」
そこで耐えられないとばかりに驍燿が笑いだした。
「私の為に芝居でも喧嘩はして欲しくないな。気持ちはありがたいがね」
「‥‥‥‥芝居?あっ!」
彩明は眉間に皺をよせてから思い出したように叫んだ。
「もしかしてその反応途中から本気だったの?」
「そうですね、‥‥はい」
通りで乗りがいいと思った。まぁ怒らせることいったから仕方ない。
「はぁ、それにしても。わかったんですか」
「人生経験の差だな。多少は見習えと言いたいが‥‥でも‥‥まぁ悪かった」
狡い、見習えと言った時は殴ろうかと思ったが謝れるとそれも出来ない。
「驍燿さん謝るだけじゃなく行動で示して下さい。元は驍燿さんが疲れているのに無理するからです」
彩明が珍しく本気で怒っている。張り詰めた空気に怒られていない僕もが緊張する。
「こんな何もないとこで獣や人間を好んで襲うのが来た時、疲れて動けなかったらどうするんです!私は‥‥私は‥助けられるのに助けられないのは嫌です!!」
彩明は泣きそうな顔で驍燿に言った。君は助けられるのに助けられなかった時があったの?君の目は優しさからの言葉じゃなく後悔からの言葉に聞こえるよ
「すまん‥‥これからはちゃんと言う。だから‥‥泣かないでくれ」
「泣いてません!そんなこと言うなら出発しますよ」
「あぁ、すまん」
「じゃあ行きましょうか」
「語り手さん!街です!街があります!」
「僕見えないんですけど驍燿みえますか」
僕には、木と山しか見えない。目はいいほうだと思っていたのだがなぜだ。
「私にも見えない」
「私には見えます!」
彩明の勘違いかはたまた物凄く目がいいのかわからない。街に着くには一刻あるかなくてはいけない。結局一刻分の距離を歩きやっと着いた。
「宿屋に泊まりましょうかね‥‥この街で安くて安全なのは‥‥‥ここですね」
「来たことあるんですか?」
「ここはあります。入りますよ」
宿屋に入ると酒と肉の匂いが鼻についた。僕が中に入ると酔っ払いが突っかかってきた。
「よう~!綺麗な姉ちゃん暇ならよぉ酌してくんねぇかぁ?」
酔っ払いが近づいて来たので素通りする。怒って相手にするとめんどくさそうだ。幸いなことに彩明と驍燿は危険と判断したのか入ってこなかった。
「つれねぇなぁ~。一杯位‥‥」
だが僕は店主らしき人を見つけ聞いた。
「店主、錠がかかる部屋を二つあるか」
「あぁ、‥‥‥‥あるよ」
「三人でいくら」
後ろで足をまさぐる気配があったが騒ぎは起こしたくない。
「‥‥‥‥一人‥‥‥ニ百園」
だから答えるのが遅い店主に苛ついた。さっさと答えろ!
「追加で料理を運ばせられるか」
「‥‥一人五十園‥足せば‥‥だす」
早く後ろの気味の悪い男から離れたくてせかした。
「じゃあ!七百五十園だす。部屋はどこだ!」
「一番‥‥奥と‥手前」
「わかっ‥‥止めろ!!僕は男だ!」
我慢しきれず振り返る力で思い切り殴りつけた。腿はいい仕事で使うからでもそこは触ろうとすんな!!
「そんな顔で男のわけ‥‥」
酔っ払いは少々怒った顔をしていた。
「語り手さん!どうしました!?」
「来るな!驍燿の所へ戻れ」
彩明が驚いたらしいがこんな場に置いておくのは危険だ。
「こっちの嬢ちゃんはかぁいいねぇ‥‥」
案の定、酔っ払いニが彩明に近づく。彩明に触れる前に酔っ払いニに体当たりした。急いで彩明の腕をとり、二階に上がる階段を駆け上がって一番置くの部屋に入った。僕は戸に錠をかけた後その場にへたりこむ。
「ふぅ‥‥‥」
「大丈夫ですか‥‥?」
今は彩明の心配そうな声も腹立たしい。
「大丈夫にみえたかい?心配ごとを増やしてまったく‥‥‥」
「だって‥‥語り手さん嫌がる声したから、助けないとと思って‥‥」
「何で‥驍燿は止めなっ‥」
戸の外から声がした。
「止めようとしたら吹き飛ばされたと言ったら納得するか。とりあえず中に入れてくれ」
錠を開けたら草だらけの驍燿が入ってきた。
「彩明、心配なのはよくわかるでも周りのことをよく見ろ。私は、飼い葉が入った車に落ちたからいいが普通骨が折れる」
驍燿は怒っているのか珍しくちゃんで呼ばなかった。それにしても骨が折れるってどれだけ飛ばされたんだ。
「まぁ驍燿ご苦労さん‥‥四年前ここ来た時こんなんじゃなかったのに」
活発かつ純朴に働く男達と逞しくかつ清廉な女達が住んでいた。だが今はまるで獲物を狙う獣みたいだった。
「一年前から婆さま以外の女達が、全て成って金持ちの所へ出稼ぎに行って戻らないんだと。それから一部の奴がこんなになったと聞いた」
さすが亀の甲より年の功。
「一年女を見ないでしかも女顔のお前をみたらやりかねないな。‥‥私は絶対やらないが」
「それはどうもありがとう。しかし困りましたね‥‥‥」
「あぁ困った」
「何がですか?」
彩明は首を傾げてこちらを見て言った。その質問は天然なのか?わざとなのか?
「彩明以外は、殆ど男なんですよ。しかも見境なく襲う人もいるかもしれない」
本当に見境なかったら僕も危険だ。あまりやりたくないないけど身を守る為あれやらなきゃいけないかもしれない。
「私は狙われないから楽だ」
呑気そうにいう驍燿は言った。ふーんそうですか。
「楽な驍燿に仕事あげるよ。明日馬か悪くて牛を買って来て。僕と彩明が外出ると危険だから」
「なんで馬と牛!?必要ないだろう」
「必要ないものは頼みません」
元々僕が買い付けに行くつもりだった。でもさっきの話だと出歩くのはまずい。
「私が行っては駄目ですか」
「話聞いてなかったの?絶対駄目です。酷い目にあいたいなら無理強いしません」
「酷い目?腫れた目のことですか??」
「違う!」
そう言ったがなんて説明すればいいんだ。
「男と女がすることわかる彩明ちゃん」
いい考えだ驍燿しばらく任せる。
「男と女のすること??」
彩明はしばらく考えたが、元気よくわからないと答えた。さすがの驍燿もこれには困ったようだ。普通わかるよね?どうやったらこんな純粋少女?に育つ。
「わかるまで単独行動禁止!」
「街歩くの楽しみにしてたのに‥‥」
可哀想だけど彩明の為だ。
「その代わり明日なんでも語ってあげますよ」
「本当!?わーい!」
ここまで楽しみにされると僕も嬉しい。
「約束ですよ」
「はい、約束です」
「よし!今日は遅いから風呂入って寝るぞ。彩明も入ってしまいなさい。語り手は私の次だ」
「わかりました」
このあと驍燿が風呂に入りに行った。でもさっきの出来事で出来た擦り傷のせいで、僕の部屋まで聞こえる叫びをあげたのだった。
「語り手起きろ!!」
驍燿が蹴りつけるのを無視して更に潜り込む。だけど驍燿は僕から布団を離した。
「うっ‥ん‥‥眠い‥‥」
僕は、まだ眠くて寝返りをうつ。
「あー、目の毒。それより朝飯食わんのか。店主が香鶏を作った‥‥」
「食べる!」
僕は勢い良く飛び起きる。鼻に香辛料の良い匂いがした。
「買いつけ行ってくる。くれぐれも彩明を逃すなよ」
「もちろん」
驍燿が出かけた後すぐ飯を食い始めた。香鶏は薬草や香辛料と一緒に鶏肉を焼いたものだ。結構豪華な料理の部類に入る。
「うん、うまい」
「確かに美味しかったです。でも不思議な味ですね」
「慣れないとそうかもね‥‥‥!!彩明どうやって中に!?錠はかけたはず」
彩明が椅子座って面白そうに僕を見ていた。
「昨日語り手さん達が寝た後。暇なので錠で遊んでたら開け方習得しました」
確かに開け方はあるけどこの部屋は、戸に細い棒を入れる隙間はない。しっかり錠をかけていたから動かして外れる訳がない。
「一体どうやって開けたんだ」
彩明が箸を指差した。
「こうやって開けたんです」
箸が‥‥‥浮いた。なんで!?
「私は動かす力があるんです。今は箸と周りの空気を動かしてみました」
箸は天井すれすれから床ぎりぎりまで上下に浮いて机に戻された。
「これを使って錠の中の金属を動かして開けたんです」
「便利だね~‥‥」
味方だと最高だが敵にまわしたくないな。
「力操るのは大変ですけど」
「もしかして前僕を助けてくれた時兄貴さんを吹き飛ばしたのもそれかい?」
あの時拳をぶつけたわけでないのに吹き飛んでいた。
「兄貴さんには空気の塊をぶつけたんです。私以外の生き物を動かすのは‥‥無理ですから」
「ふーんそうなんだ」
こんなこと言ったけどどんな原理かわかっていない。
「前生き物動かしたら‥‥‥爆発しました」
「え゛っ!?」
「何も‥‥残りませんでした。父様は理由を知ってたみたいですけど、私はわかりませんでした」
彩明は眉間に皺を寄せて言った。よほど難しい話だったのか?
「それより語り手さん!早く語って下さい。私その為に来たんですから」
「あぁ、器を片付けたらするよ。待っててね」
「はい♪」
「何を語ってくれるんですか?」
彩明は足をばたつかせながら聞いた。
「何がいいですかね?何か好きなの言って見て下さい。人物でも植物でも地名でもいいですよ」
「うーん‥‥‥‥‥。何がいいかな?わからないから語り手さんが好きな物語がいい!」
予想外の答えだな。
「そうきましたか。そうですね‥‥‥空と大地の物語をしましょう。いいですか?」
「それ難しい?」
「わからないな。聞きたくなくなったら言って止めるから」
「わかった!」
僕は深呼吸をしてから語りだした。




