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りゅうの娘  作者: 猫田33
はじまりの町
10/36

「夜?」


捕まった時は昼だったが、いつの間にか夜になっていたようだ。


「うっう」


背中の変態が起きそうだったので急いで手荒に下ろした。


「ギャッ!」


「倉泰!何があった!?」


どうやら僕の閉じ込められた場所は変態の屋敷の敷地内だったらしい。屋敷から狼千様が供を連れて走ってきた。


大兄(タークオ)!このもの達が私に乱暴を働いたのです!」


「まことか!?」


変態の嘘も甚だしく僕は呆れるばかりだ。そこに驍曜が狼千に(ひざまず)く。


「慎んで申し上げます。倉泰様は麗しい見た目の旅する人や語り手を捕らえて辱めをしておりました。この無礼な語り手も同じように捕まりましたが良心が咎め助けた次第です」


「その者は誰…だ?」


狼千は彩明について聞いたようだ。


「語り手の護衛をしている者です。私だけではかなわないので連れてきました」


「大兄さん!このものらの言っていることは嘘です!」


「嘘は申し上げてございません」


「双方証拠をだしなさい」


論より証拠か。


「大兄さん私はご覧の通り傷だらけなのが証拠です」


僕らの証拠は僕だけど傷なんてないしな…。


「証拠なら……この二人です」


彩明は、ツツジから何かを転がしてると思ったら芋虫になった兄貴とデュラだった。どうやってここまで来たのかと思ったが捕まえて吐かせたということか。


「親分!助けてください!」


「親分ってだあれ?」


彩明を見ると二人は、顔が真っ白になる二人に何をしたんだ。彩明?




「「倉泰親分です!」」


「私は、こんなものらなど知りません!」


「親分ひどいだ!辱めが嫌で自殺した奴らを埋めさせたのに」


「そうだ!庭に穴掘って埋めさせた」


「庭のどこだ?」


狼千様は詰め寄ってさらに聞く。大男の問いに怖気着いたのか、二人は梅の木を指差した。


「「その木の下!」」


「聞いたか早く掘り返しなさい!」


狼千様がそういうと供の人に梅の下を掘らせる。しばらくすると、異臭と掘っていた供の一人が嘔吐し始めた。


「うぅ」


「どうした!」


供の一人が嘔吐を我慢していった。


「死体が……死体が埋まっています!」


それを聞いた変態は呆然とした。こんな状況で彩明は、嫌なんじゃないかと見ると死体の方へ笑っていた。なぜ?


「倉泰!何故こんなことをしたんだ!?」


狼千様は変態の肩を掴んで聞いた。変態は、ケタケタと笑いながら狼千を睨みつける。


「ハハハッ!何故!何故だって!あんたのせいだよ!あんたが金を使って私をこんな所に飛ばしたからだ!私は宮中で働きたかった!科挙だって二十五歳前で一番に通った!なのになのに!!」


「……………すまなかったソウ」


「すまなかった!?今さら謝るな…?」


狼千様は変態をきつくきつく抱きしめた。


「私が知っているソウは、繊細で努力家でとてもとてもいい弟だ…。お前が科挙を一番に通ったと聞いた時、周りが嫉妬して潰されるのが怖かった…。だから、ここで認められてから私が安心できる人を上司にしてもらおうとしてたんだ…。何も説明しなくてすまんっ……………ソウ」


「嘘だろ?」


「隠すのは得意だが、嘘は得意じゃないのはお前が一番知っているだろう?」


狼千様はいつもの厳つい顔でなく、慈愛に満ちた兄のような顔をしていた。変態は、呆然と狼千を見る。


「そ…んな」


そして狼千様は一転して厳しい顔つきになり離した。


「林倉泰!」


「はっ!はいっ!」


変態は棒のように立った。


「お前のした罪は重い!職権乱用、殺人罪が今あげられる罪状だ。これから都に行き詮議にかける!」


「はい……」


「倉泰!」


「はいっ!」


「それから…牢屋の中でもいいから沢山話そう。時間はある」


「大…兄さん……」


そして兄弟は、泣いて抱き合った。これは僕達がその場て見たわけでなく後で供の人から聞いた話だ。


「そういえば語り手さんと驍耀殿と少女はどこに……?」


供の呟きは、まぶしい朝焼けの中に消えた。







「獄中で語りあおうなんてそんなことできるかな?」


「馬鹿かお前」


驍耀が僕を鼻にかけて笑った。


「狼千殿は刑部尚書だぞ。牢屋も管轄する立場にあるのだから当たり前だ」


なるほど、管轄場所の視察に行くと言えばいき放題?である。


「あの……なんで私達あの場から逃げる必要があったんですか?」


驍耀は僕への態度とうって変わり微笑みながら答えた。娘がいたら彩明位の歳だというのもあるかもしれない。


「それはね、私達の身元が知られると不味いからだよ」


「そうなんですか?あと今どこに向かってるのか知りたいです」


僕も聞きたかったが馬鹿にされそうで嫌だ。





「私の隠れ家だよ、………語り手、花を手おるつもりはあるか?」


「花?」


ついにこの問いが来たか。


「花は丈夫で嵐にも負けそうにありません。囲いに入れても問題ありません」


「桂について花はどう思う」


「これから聞いてみようと思います」


「語り手さん、花は話しませんよ?」


「これから話すんです」


「着いたぞ」


驍耀が連れてきたのは。


「うわ――――…………………古い」


「語り手さん、何を言ってるんですか。趣のあるいい所です」


「彩明ちゃんはいいこと言うね~。誰かと違って」


「僕の表現が一番正しいと思います」


かろうじて屋根はあるが拳ほどの穴がいくつも開いてる。壁も鼠がかじったのかところどころ凹み地震が起きたら倒れそうだ。


「見かけに騙されるとはまだまだだな語り手」


驍耀が先に入った。


「大丈夫そうだな。彩明、早く入りなさい。どうでもいいが次語り手」


僕が中に入ると驍耀が床の一部をひっくり返していた。もしかしてここに隠し部屋が!?と思ったが出てきたのはいくつかの壺。


「これが隠し部屋だと思ったか語り手?残念ながらそれはこの下だ」


壺をどかして下の板をとった。下にはぽっかりと暗い穴が開いている。


「fire」


驍耀がそういうと下が明るくなる。


「狭い所だけど彩明ちゃん先にどうぞ」


「はい」


「よし、彩明ちゃんは行ったな。お前もとっとと入れ」


「グッ」


驍耀が蹴りつけて穴に背中から落ちた。


「かっ語り手さん!?大丈夫ですか」


僕はゆっくり立ち上がりながら「大丈夫」と言った。しばらくすると平気な顔をした驍耀が降りてくる。


「もう少し先に行けば広い所にでるから行ってくれ」


言われた通りに行くと軽く十人が入る空間に出た。最近も使ったのかあまり埃が積もっていない。


「好きな所にかけてくれ。話はそれからだ」


それぞれ思い思いの場所に座ったがしばらく沈黙が続いた。


「話ってなんですか」


彩明が先手をきって聞く。驍耀が言いかけたが彩明を巻き込んだのは、僕なんだから僕が言わなくては卑怯だ。


「僕が言います。言わせてください!」


「いいだろう」


驍耀がしっかり僕を見ていった。僕は彩明の目をじっと見据えた。不思議なことに彩明の目が青い気がする?惹きつけて離さない。


「語り手さん?」


それを聞いて正気にかえった。


「あぁごめん。彩明、僕らの仲間にならないか。でもならないと殺すよ?」


秘密を知るものには、仲間として信頼もし裏切るなら死を……。


「なります」


そういうと彩明は花のように笑うので僕は面食う。普通はこんな怪しい勧誘断るだろう。だが次の発言で余計に驚いた。


「語り手さんがいるなら大丈夫です」


信頼されてるのか僕は?何故??


「こいつが呆けて使いもんにならないから私がやはり聞こう。仲間になるんだな」


はっ!?呆けてるだって!!そんなことまったく‥。


「はい」


「仲間になる証として自分のことを話してもらう。おかしな箇所があれば追求する」


「はい、でもどこから?」


僕は彩明に助け舟をだすことにした。


「出身はどこ」


「……辰と卯の境です」


辰も卯も国の東で海が隣接している州である。


「辰と卯の境のどこだ?」


「蓬莱山です」


「「蓬莱山!?」」


僕と驍耀が驚くのは無理がない話で蓬莱山は竜滅物語に登場する山。のちに河寛皇帝が王族しか立ち入ることは許さないと決めた山でもある。もしそんなところに住んでたら…反逆罪で捕まる。


「本当のことを言いなさい彩明ちゃん」


「嘘ついてない!蓬莱山は父様と私が住んでる山です」


彩明は断固として譲らないつもりらしい。溜め息混じりに驍耀が彩明に聞く。


「証拠はないのか?」


「………」


「ないんだな」


「ある‥‥‥でもますます信じなさそう」


「言って彩明。もしかしたら信じるかもしれない」


強にでたら弱もでるのが聞き込みの成功法だ。


「かも……しれないですか…。私は………竜滅物語のりゅうと人間の間に生まれた子です」


僕は自分でもわかるほど目を見開いていた。


「驍耀、竜滅物語の竜って皇帝によって討伐された筈……ですよね?」


僕は驍耀を見たが大方僕と同じ感想だろう。


「語り手のお前がそういってるんだからそうだろうな」


「父は討伐なんてされず今も元気です。私が使いに出された時なんて体術の鍛錬をしてました」


彩明のお父さん元気だな~じゃなくて!


「彩明のお父さん生きてたら竜滅物語が嘘ってことか!?」


「それだけじゃない……王族の王族たる所以が消える」


僕と驍耀は頭を抱えた。彩明は主を危険な立場にしかけない。


「どうしました?」


「簡単に仲間にするしないの問題じゃなくなったなぁ。驍耀、主に判断を仰ぐ?」


「そうするしかあるまい。答えはわかっているが……」


僕と驍耀は同時に溜め息をついた。


「二人共、息ぴったりですね」


「こいつと一緒にするな!」

「この人と一緒にしないでほしいな」


「ほらっ」


彩明がニコニコして笑っている。これ以上騒いでも彩明に面白がられるだけだ。


「疲れたから私は寝る。明日から出るから早く寝ろ」


驍耀は思考も行動も拒否したようだ。だが待て驍耀!


「驍耀!今昼ですよ!それにここ一部屋しかないじゃないですか!彩明を寝せられませんよ!」


「お前と私だけなら問題ない。それともお前は彩明ちゃんを襲うつもりがあるのか?」


「いや…ありません」


「ならいいだろう……。どっかの誰かさんのせいで寝れなかった上に体が痛いから寝る……………」


驍耀は、本格的に寝てしまったようで微かないびきが聞こえる。


「語り手さんもお休みになりますか?」


「いや…僕は寝てたっていうか眠らされてたから眠くないよ」


「私もこの時間は眠くないです」


「そうか…」


なんて会話をしたらいいのかわからない沈黙が流れる。


「語り手さんは何故間諜になったんですか」


そこを聞いてくるか。だが何も自分について話さなかったから無理もない。


「僕が孤児だったのは知ってる?」


「はい、長さんと話しているのを聞いてしまいました」


「それなら話は早いね。僕の師匠も僕と同じ語り手兼間諜でね。普段は師匠と語り手の仕事、夜に間諜について勉強と訓練。辛いわ、痛いわ、疲れるわ物凄く大変だった」


今思いだしても嫌悪感がでる訓練もある。


「師匠は、強い厳しい人だった。けど………とても優しい人だった」


今でも鮮やかに思い出せる。勉強や訓練がうまくできた時にみせる笑顔。危なかったときや不安なとき抱きしめて聴いてくれた時の温もり………。


「語り手さんは師匠が好きなんですね」


「………そうだね。師匠が好きだった」


でも、大切な師匠は


「なんでさっきから昔の話みたいにいうんですか」


いない


「死んでしまったからね……。昔の話でしか言えないよ」


ここまで育つ知恵も技術も心も、師匠がいてくれたからなのにありがとうも言えなかった。


「……ごめんなさい」


彩明が涙を流していた。泣くことなんて何もない。


「謝ることじゃないよ?これから行こうとしている場所に行けば聞く話だ。泣き止んで彩明、僕は君の話を聞きたいな」


服の袖で彩明の目元を拭った。あまり良い生地じゃないからちょっと痛かったかもしれない。


「例え…ば何を?」


「そうだな……なんで山から降りたのか聞きたいな」


山から降りるって表現は猿みたいだな。


「なんで笑ってるんですか?」


「秘密だよ。泣き止んだみたいだね。話せるかい」


「大丈夫です」


「じゃ話して」


「父様が梅の精から頼まれ事をされたんです」


「どんな?」


「梅の精の眷族が汚されて弱ってたんです。普通は梅自身が浄化できます。でも悲惨な死に方で恨み・妬み・悲しみ・怒りに溢れた血に浄化が間に合わなかったみたいです」


「それとここに来る接点が……」


変態の屋敷に立派な梅の木があった。その下には自殺した語り手と旅する人が何人も埋まっていた。


「まさか変態の屋敷の梅の木?」


「長の庭の梅が眷族で原因を調べるのと取り除くのを頼まれました。でも根本的な原因がわからなくて」


「そうだったのか。‥‥‥‥そういえば死体見たのに笑ってたね」


あの時はなんでこんな時に穏やかで優しい笑顔をしてるんだと思った。


「私、笑ってました!?梅の木がありがとうって言ってくれたんです。まさか顔にでてるなんて」


そんなに恥ずかしがらなくてもいいのに彩明は、顔を真っ赤にして手を頬に当て恥ずかしがった。そう思って彩明を見ていると頭に何かが当たって痛い。


「昼間から何口説いてんだ…。おちおち寝てられん」


驍耀が手元にあったものを僕に投げつけたらしい。僕は彩明と話をしていただけでそんなつもりは全くない。


「……彩明を口説いてたわけじゃありません。これが口説いてるように見えるなんて驍耀は餓鬼ですか?」


「彩明ちゃんの顔が赤くなってただろう」


「そうしただけでそうだと思うのお爺ちゃん」


「まだ爺じゃない!」


湯気がでそうな怒りようだな。


「そうそうまだ驍耀さんはお若いですよ」


「彩明ちゃんは優しい子だね~」


「なんで優しいんですか?驍耀さんは私より年下ですよね」


彩明は首を傾げる。


「………?失礼だけど彩明ちゃんは十ハ歳だよね」


「私はハ百九十歳です」


「八百九十!?語り手なんで驚かないんだ」


驚かないも何も聞いていたからな。


「彩明がハ百九十歳なの知ってましたよ。初日に自分で言ってました」


「なんで教えなかった!?てっきり十八歳かと思ったぞ」


「女性が自分から言ったわけじゃないのに僕が言ってしまうのは失礼じゃないですか」


驍燿は黙り込んだ。


「驍燿さん私、気にしてませんよ」


「彩明ちゃん‥‥‥語り手と違って本当に優しいね」


彩明に勇気づけられたのか僕を睨んできた。そんなの僕には効きません。


「そういえば驍燿さんはいくつですか」


「私は四七だ」


「語り手さんは?」


「ニ十だよ」


「二十!?ニ十五とかじゃ…」


「僕は今年で二十歳」


「嘘っ!?てっきり二十五歳かと思いました」


彩明は顔を真っ赤にして目を見開いていた。


「僕ってそんなに老けて見えるかい?」


「あの見た目じゃなくて…」


益々顔を赤くして言葉を探している。


「お前の場合よほどのことがない限り冷静な態度をするからだろう。しかも今まで彩明ちゃんに見せていたのは、仮面のようなものだからなおさらだ」


驍耀が当たり前のことだという風に答えた。


「そう!そうです!」


彩明がすかさず驍耀に同調した。なんか少し疲れた。


「僕ちょっと寝ます。半時経ったら起こしてください」


疲れをとる為にすかさず横になって寝た。すぐ眠れるわけないがとりあえず目だけ瞑る。


「語り手さん大丈夫ですかね。さっきは元気そうだったのに寝てしまうなんて」


心配そうな?彩明の声が聞こえる。そこに驍耀は優しく彩明に声をかけていた


「じゃあ何で語り手さん痛そうな顔をしたんですか。もしかして見せてないだけでどこかに怪我が…」


僕が痛そうな顔をした……?


「この怪我はそのうちなおるからほっておきなさい。語り手もそんな柔な奴じゃなさそうだしな」


「そのままにするとひどくなるかもしれません」


「彩明傷に塩を塗るだけかもしれない。八百年何をしてきたんだ」


ちゃっかり僕が寝てる間に誘導尋問始めてるし。


「八百年間……友達と遊んだり父様と稽古をしていた。そういえば父様以外でこんなに話したのは初めてかも」


「友達とは話さないのか」


「友達はみんなウーッとかキュウッとしか言わない」


へっ?


「なんだそりゃ馬鹿なオークでも人の言葉を話すんだぞ。出来ないのは獣以外‥‥‥」


「はい獣です。こちらだと熊猫・兎・狼・狐と鷹とかですかね?」


「いやいや!兎はともかく熊猫や狼は危険だろ!?どうやって遊ぶんだ」


「追いかけっこです。私追いかけるのも追いかけられるのも得意でしたよ」


彩明は自信満々に答えたがそれ負けたら死んでませんか‥‥?


「本当は村に降りてみたかったんですけど父が許してくれなくて。だから初めて下界に来て驚きました。物を得るにはお金が必要なこと、私のような目の人がいないこと、一番驚いたのはみんな楽しそうに笑って話していること」


「楽しそうか‥‥‥」


「はい!それから‥‥‥‥」


僕はこの後、寝てしまい彩明が何を話したか知らない。でも何かあったら起きただろうから問題ない。




「語り手さん!起きて下さい!!出発しますよ」


彩明が僕を揺らして起こそうとしているが僕は眠い。


「眠い‥もう少し」


さらに僕は頭まで布団を被った。


「彩明ちゃん私に任せなさい」


しばらくするとジィーと音がなった瞬間にバチッ!バチッ!と音がして熱くなった。


「ギャ!熱い!ひどいな驍燿!」


驍燿は、爆竹を持っていた。


「ふんっ、さっさと起きんのが悪いのだ」


「こんな地下で火事になったらどうする!」


「私はすぐ出れるから丸焦げになるのはお前だけだ。ぐずぐずしてないで早く外にでるぞ」


僕はまだ言いたいことがあったが、飲み込んで出発の準備をした。


「お前の荷物は彩明ちゃんが、屋敷からとってきてくれてそこにある。私と彩明ちゃんは先に外に出る」


確かに僕の旅道具一式がそこに置いてあった。僕は荷物を背負い外に出た。


「語り手さんいいお天気ですよ!」


彩明がいつもの笠を被ってはしゃいでいた。そういう態度は見た目通りで微笑ましい。


「そうだね‥‥‥」


お日様の下で笑う彩明を僕のようにしたくはない。昨日考えたら彩明を同じ道に走らせない道は一つだけある。


「語り手さん晴れは嫌いですか?さっきから難しい顔してます」


彩明が山吹色の瞳で僕を見てきた。あれ黒じゃない?


「何でもないよ。それより彩明瞳の色変わってない?黒だった筈」


「私時間帯で瞳の色が違うんです。朝は黄色、昼は青、夕方は赤、夜は黒です」


「じゃあ、僕が語っていた時にいた笠を被った少年は彩明?」


「‥‥‥そうですね」


ムスッとした声がかえってきた。


「ごめんごめん、そうだこれあげるよ」


僕は、彩明にターコイズを渡した。


「彩明にお詫びとお礼を兼ねてあげる」


「綺麗‥お空と同じ色‥‥‥」


彩明が手の中のターコイズをじっとみていた。そういえば西の国の竜は、宝石が好きだと聞いたことあるし女の子だし嫌いではないということか。


「気に入ってくれたみたいでよかった。その石の色彩明の瞳と同じ色だね」


見た瞬間思いだしたし。


「そういえば驍燿は?」


絶対割り込んでくる驍燿の姿が見えない。


「なんかお仕事を他の人に任せてくるって言ってた。だから先に郷を出てだって」


驍燿はこの郷についての司令官みたいだから他に委譲するのか。さすが先代から仕えているだけある。


「じゃ行こうか」


「はい♪」


彩明のいう通り外は綺麗なほど晴れていた。願わくば彩明の行き先もこのように晴れて欲しい。僕のように血と裏切りと虚無に覆われた行き先に行かないで。




「ここら辺で待つか彩明」


僕達は、郷に少し離れた柳の木の下にいた。彩明は目をキラキラさせながら僕をみる。


「そうですね!」


「どうしました?何か面白いものでもあったのかな」


すると彩明は一気に脱力したみたいだ。何かいけないこと言ったかな?


「彩明ちゃんはお腹が空いているんじゃないか」


驍燿は、何か包みを持ってこっちに歩いてきた。


「なんでわかったんですか!?」


あれ?本当にそうなの。


「女の子の世話を十年したからね。多少のことならわかるよ」


「へーそうなんですか」


「彩明ちゃんにこれをあげよう」


何かの包みを渡した。


「わぁ!肉饅頭が沢山ありがとうございます驍燿さん!」


「なんの、なんの。語り手これくらい出来ないとのちのち困るぞ」


「あー‥、はい。気をつけます」


僕も不安になってきた‥‥間諜に必要な能力なのに‥。


だけど口に入れられた熱いもので現実に引き戻された。


「悲しいことや悩んでる時は、美味しいものを食べるといいと父様が言ってました!」


僕の口の中にある肉饅頭は彩明が入れたようだ。甘い肉汁と塩漬けされた野菜が美味しい。


「ありがとう彩明」


「えへへっ」


「あんなので凹むなんて情けない。まぁそれ食べたら行くぞ」


それから彩明は、肉饅頭を十個平らげて僕と驍燿を驚かした。

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