わたしと、あなたと、猫と
晩夏の夕暮れ、一匹の猫とであった。
会社からの帰り、アパートに向かう道中の神社。
わたしは、そう信心深いほうでもないし、神道信者でもないのだけれど、この神社の前を通るときは思わず手を合わせる。
神社の参門の手前にたち、手を合わせ顔をあげたとき。
参門わきの掲示板の下の丸められた新聞紙の下から、小さな、小さな猫が顔を出した。
体同様、小さな声で、みーと泣いた。
毛は濡れた泥で汚れ、片目をしょぼしょぼさせた子猫。
一瞬、後ずさりをしてしまった。
わたしは動物が好きではない。
猫など飼ったことがない。
それなのに、次の瞬間には猫を抱き上げ、私の買ったばかりの秋物のコートの裾に包んだ。
子猫は、もう一度、みーと泣き、
この瞬間から、私の家族になった。
1LDKのアパートに連れ帰り、台所の流しで体を洗う。
抵抗することもなく、「お風呂」に身を委ね、やっぱり、みーと泣いた。
白地の背中に黒とグレーの鯖のような模様。お腹と左の前足にも黒いしみ。鼻の横にも小さなシミがある子猫。
白と赤で統一された私の部屋が、子猫がいるだけでピンク色に染まる。
翌日、獣医の診察を受け、生後1か月弱のオス。健康優良児との診断を受けた。
診察券に名前を書いてもらう。
きゅうちゃん。
今日からこの子猫はきゅうちゃん。
バスタオルにくるんだきゅうちゃんを膝に乗せながら、インターネットを検索し、子猫に必要なものを注文した。
トイレ、猫砂、子猫用ミルク、ケージ、、、。
次々と買い物籠に入れる気分は、新生児を迎える母のようだ。
幸せで、躊躇がない。
広くはない部屋を見回し、子猫に必要のものを置くスペースを考える。
3年前、もし「あの子」を産むことにしていたら、きっとこんな気持ちだっただろう。
わたしは、結局、一人で母になる運命なのだ。
きゅうちゃん、わたしのきゅうちゃん。
3年たって、やっぱり私の元に来てくれた。猫に姿をかえて。
大切にしよう。
あの人と私の、きゅうちゃん。




