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俺の友達の話シリーズ

合わせ鏡

作者: 尚文産商堂

俺が通っていた高校は、なんでも明治から大正にかけての頃の旧制中学校の校舎を、そのまま使っていたらしいんだ。

だからどこもかしこも痛んでいたんだが、特にトイレはひどかった。

合わせ鏡って知ってるだろ。

ほら、廊下の壁の両側に鏡がついているようなところがあるだろ。

あれを合わせ鏡って言うんだが、俺のところの高校のトイレも、全部合わせ鏡だったんだ。

しかも、1枚残らずどこかにヒビが入っているんだよな。

そんなところだったんだが、水はちゃんと通ってるし、電気だってちゃんと来てる。

ガスは無かったけども、プロパンがあったから学食ぐらいしか火を使わないから、いっこうに困らなかったな。

でも、一番北にあった校舎の3階の東側のトイレは、おかしかったんだ。


ある夜、学校に泊まり込んで肝試ししようやって言う話になってな。

俺と、1年下の後輩と、同級生が3人いたな。

だから、合わせて5人で、3人と2人の班を作って、その件のトイレに行って、何かを持って帰ってくるって言うことをしたんだ。

俺は、その後輩の女の子と一緒になったんだ。


そして、俺たちの番になって、そのトイレに向かったんだ。

ついた時点で、後輩は半泣きで、ずっと俺の腕にしがみつきっぱなしだったんだ。

合わせ鏡に向かって、一応礼をしておくと、声が聞こえたんだな。

オイテケ、オイテケてな。

何を置いてけって言っているのかは分からないが、その声は後輩も聞こえていたようなんだが、急に震え出したんだ。

俺がどうしたんだって聞いたら、イノチオイテケって言ってるって言うんだ。

俺にはオイテケとしか聞こえてなかったんだが、その声を聞いて、後輩はそこから動けなくなったんだ。

そして急に目を見開いたと思うと、合わせ鏡を指差したんだ。

俺たちはその時は懐中電灯だけで、電気もつけていなくて、さらには、まだドアのところにいて、合わせ鏡のところにも行っていなかったのにもかかわらず、後輩ははっきりと何かを指差していたんだ。

それから、ガタンと、何か思いものが落ちる音が聞こえてきたんだ。

その音は徐々に俺たちの方へ近寄ってくる。

ガタン、ガタタンってな具合に、物音が大きくなっていくんだ。

で、俺はとうとう手探りでスイッチをさがして、電気をつけた。

とたんに物音は聞こえなくなった。


それから俺は、手元にあった漆喰の破片を中身が無くなったポケットティッシュの包み紙に入れて、電気を切ってトイレを出たんだ。

んで、普通に待ち合わせ場所へ戻ったんだけど、同級生3人が、教室に端っこで縮こまってガタガタ震えていたんだ。

俺がどうしたんだって聞いたら、黒板を指差す。

そこには、命置いてけって、黒板一面にビッシリと彫られていたんだ。


それから?

それからは、その後輩と付き合ってるよ。

黒板は翌日には何事も無かったかのように、きれいになってな。

でも、しばらくしてその例のトイレは使用不可能とされて撤去されたんだ。

だから、今じゃ何も残ってやしないよ。


その時持って帰ってきた漆喰は、俺の知り合いに神社関係のやつがおるからそいつにお祓いを頼んどいた。

俺は憑かれてないってさ。

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