陰キャ後輩が入ってくると思っていたらお嬢様になっていた件
元陰キャ後輩、1年経ち入学したらお嬢様になっていた。
多分ラブコメ。
「わ、私、ライトノベル作家になりたい」
いつも、そう言う後輩がいた。
髪は長いしボサボサで、眼鏡で、なんか畳の臭いがするような子だった。
『ライトノベル作家になりたい』
それを言うことにどれ程の勇気がいるか。読書家の僕にはよくわかる、よくわかるつもりだ。作家になりたいとは思わないから、結局のところ、なんとなくでしかないんだけど。
けど、いつもその後輩は言っていた。
たとえ、周りからバカにされても。
「明日から、また応援できる」
呟く。
差は、1年だけ。
僕は、高校2年生になり、運が良ければ、また、あの子と一緒。
まだ、陰キャなのだろうか、畳の臭いは現役なのだろうか。
まあ、それでもいいし、そっちの方が応援のしがいがあるんだけど。
今日は、入学式。明日から、高校生活。
「とんでもない美人がいるらしいぜ!」「お嬢様だとか!」「明日から楽しみだな!」
教室の中、男子たちが騒いでいる。
お嬢様、お嬢様ね。
まさか、あの陰キャ少女がイメチェン、いやいや、ううん、どうなんだろう。
ま、ないか。
「何でしょう、先輩」
「やっぱり、違うな」
僕は首を傾げる。
「名前は同じなんだけどな。
本当に君、あの陰キャ後輩ちゃんか?」
返事はない。
怒ることなく、何でもなさそうに、冷静と。
今は放課後。
周りには誰もいない。
僕が気になって、この子と放課後に誰もいない所で約束したのだ。
初日から、男子から、女子からも、キャーキャー言われていて、僕は驚いた。そして、こんなに可愛かったか? とも。本当に、お嬢様みたい。ご令嬢みたいな。
約束してくれるということは、この子はあの畳の子で、僕を嫌ってはいないってことなんだろう。好きでもないのだろうが。
ボサボサだった髪はストレートに、眼鏡じゃなく多分コンタクトレンズ。臭いは、畳ではない。恐らく臭いはしない。可愛い後輩の臭いは、知りたくないんだけど。畳は、嫌でもキテたから。
胸は、ないけど。
お嬢様、みたいだな。
「なんか卑しい視線を感じます」
「ああ、ごめんね。
なんか、2年前とは違うから」
「そうですか」
「畳の臭いがしないなとか」
「訴えますよ」
「だからごめんって」
後輩ちゃんはため息を吐く。
いや、後輩ちゃんじゃなく、後輩さん、か?
「確認だけですか?
なら、もういいですね。帰ります。もう私に話し掛けないで下さい。前の私を知っているだけで気安く話しかけてきて、いくら先輩でも迷惑です」
僕は、あの後輩ちゃんに、そう言われて悲しくなる。好きだった訳じゃない。いや、好きだった。好きだったんだけど、それは恋愛じゃなくて、ヒトとしてで。
なんだ、それじゃ、
「もう、ライトノベル作家は目指してないのか」
返事はない。言うまでもないこと、なんだろう。表情も変えず。なんか眉がピクリと動いた感じがしたけど。
「応援したかったんだけどな、折角頑張っていたのに」
また、眉がピクリ。
いや、気のせいだろう。変わってしまったのだから。
「そうだね、変わったんだね。わかった。ライトノベル作家は目指さないと。
うん、話し掛けないよ。頑張ってね」
僕は微笑む。
「ありがとうね、バイバイ」
「ま、待って」
「え?」
「いや、待ってください」
鞄からメモ帳を取り出すと、それに何か書く。
なんか、陰キャがさっき出たような。気のせい?
あ、書き終わったか。何書いたんだろう。
ビリビリ、とちぎると後輩さんは、
「はい」
差し出される。
「私の連絡先です」
「なぜ? もう関わらないんじゃ」
「先輩だけ、応援してくれるから。
あの、2人きりのときしか話し掛けないでくださいね? 私は変わったので」
まだ、やめてはいないらしい。
ホッ、とする。
そして、後輩さんは、挑戦的に、
「あと、今の私がいいってこと、教えてあげますから。昔の私よりも今の、この私の方がいいってことを」
読んでいただき、ありがとうございました。
まさか、陰キャのときから先輩を…?
謎ですね。




