本命チョコだよ、って言えなくて
大好きなあの子へ贈りたくて
ねりねりねりねり チョコをボウルの中でかき混ぜた
砂糖とお塩をちょっぴりと それから隠し味に私の恋心をいっぱい
形を整えオーブンへ
出来上がったらピンク色のリボンで包む
メッセージカードは挟まない 直接気持ちを伝えたかったから
体育祭で二人三脚をした
文化祭で一緒に準備した
それだけなのに恋した私をあの子はどう思うだろう
受け取ってくれるかな
喜んでくれたら嬉しいな
期待と不安でソワソワする夜
眠れないまま朝日が昇る
制服を着て カバンにチョコを詰めて あの子に会いに学校へ
いつも教室の端っこで突っ伏しながら寝ているあの子 でも今日は違ってた
ハート型の包みがぽつんと置かれた机 あの子はにまにま笑ってる
誰かに告白されたんだ
私は一歩 間に合わなかった
すぐにわかった 泣きたくなった
だけど笑った
あの子が私を見てたから
「チョコもらったの?」
「うん」
「意外だなぁ。何ももらえなかったら可哀想だなと思って、持ってきてあげたのに」
まるっきりの嘘を吐く
本命チョコだよ、って言えなくて
「友チョコだけど、要る?」
受け取ってくれたけれど
喜んでくれたけれど
目の前でぱくっと食べられ噛み砕かれた
だってただの友チョコだから
ばいばい 私の恋心