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誤字脱字で筆を折る

作者: MURASAKI

 某SNSでこんな会話を見かけた。


「我々読み専が誤字脱字報告をすると作者が筆を折るといけないからしない」


 正直驚いた。


 誤字脱字報告で筆を折る作者がいる……? どこの世界線に?



 作品に於いて、誤字脱字は必ず発生するものだと私は考えている。いや、むしろない方がおかしいくらいだ。その考え方は私の職業にも関係してくるのだが、文字校正を仕事にしていると「誤字脱字はあって当たり前」で「むしろ探し出して駆逐する」ことが正義となる。

 勿論、仕事と趣味を同系列で扱ってはいけないのだが、誤字脱字というものはあって当たり前のもので、それを指摘したからと言ってその作品がより良くなるだけのことで、悪くなることはない。


 誤字脱字報告を閉じている作者の人もそれなりに見かけるが、正直勿体ない。


 私もたまにやらかすのが、思い込みでの言葉の使用やタイプミスやキャラクター名を一文字間違えて投稿してしまうことがある。特にキャラクターは途中で名前をやっぱりこっちがいいと思って変えた場合に起きやすい。

 そして、往々にして直後の見直しだけで発見できない。


 作者が誤字脱字を見つけられない理由の中でも、圧倒的第一位は【思い込み】だ。


 自分では何度も読み込んでいて、頭の中で「こう書いたつもり」が発生するので明らかにおかしな文字や文章をスルーしてしまう。

 これらは数か月程度あとに読み返した時に、はじめて客観的に見ることができる。顔を赤らめながら修正することになるのだが、読んでくれた誰かが教えてくれたらいいのに……と思う事がある。


 ただ、ここで注意して欲しいのが指摘する箇所に対してだ。


①誤字脱字……明らかに間違えている漢字や文字、送り仮名や抜けた文字についての指摘

 明らかに間違えているものは早々に指摘して欲しい。少しでも早く気付けることでミスが減る可能性もある。また、違和感を醸し出す“てにをは”も指摘が入ることでより良い作品になる場合がある。


②使用方法の間違い……こちらも思い込みで使っている場合があるので教えて欲しい。

 もし思い込みで使っていた場合、記憶に刻まれるので次から間違うことは減るし、他の表現についても慎重に調べるクセが付く。


③表現のゆれ……場合により指摘しない方が良い。

 作品によってはもしかしたら「わざとそうしている」可能性も含むので、こちらについてはDMなどでこっそり確認することを強く薦める。少なくとも「この表現はわざとですか?」など前置きをしないとただの失礼な奴になる可能性がある。

 作者との関係性によるが、もし()()()()()だった場合、全く知らない人から問い合わせが来るとイラっとくる性質のものだ。


④表現や演出について……これは、作者の世界観を壊す可能性があるのでスルーして欲しい。

 こっちの方が良い、こっちの方が迫力が出る!というのは読者側のエゴでしかない。作品の世界を壊すのは読者のすることではない。既に出来上がった物語だから難癖が付けられるわけで、ゼロから設定を考えて書き上げる自信があるなら、自分で作品を書いて世に公開したらいい。



 ざっと思いつく指摘を書き出してみたがどうだろうか。

 もし沢山の誤字報告に凹んで筆を折る人が居たとして、その場合は自分の確認ミスという現実と向き合えないのだから、その前に自分で出来る限り確認したのか?と問いたい。

 もちろん「校正とは何か?」を知らない人なら指摘されたというだけでショックかもしれないが、こうは思えないだろうか。


「間違っていることを指摘したくなるほど良作品なのだ」と。


 そもそも、駄文の場合は誤字報告をしたいと思わない。読んでいて違和感を覚えるということは「引っ掛かる」ということ。それは文章が美しいから覚える違和感であり、気になる箇所なのだ。

 自分の作品が美しく彩られているからこそ浮かぶ違和感を指摘してくれるわけだから、誤字・脱字についてはありがたく思うものであり、ショックを受ける性質のものではない。


 あまりにも多く指摘を受けてしまった場合は、ショックを受けるところは「自分の甘さ」の部分であり、それで筆を折ることは大変勿体ない。社会に出ればそんな指摘は日常茶飯事で、もし書籍化ともなれば誤字脱字以外の表現や内容の矛盾まで指摘される。

 いちいち落ち込んではいられない。だから見直しは三回以上するし、校正アプリに飲ませて確認作業もする。それでも出るのが誤字なのだから、有難く指摘を受け止めるのが作者として一番にすることで、筆を折ることではない。


 ①②の項目については、概ね有難く受け止められる性質のものだ。


 だが、③④の項目については正直微妙だ。


 項目に書いた通り、指摘していいかどうか迷う部分ではある。迷った場合は指摘しないというのが一番良いと思う。明らかな間違いは指摘しても「正誤で評価」出来る部分だが、表現方法や物語の筋については正解も間違いもない。作者がそうしたいからしているのであり、他人が口を挟むところではないからだ。


 出来上がった物語を書き換えるのは誰でも出来るが、その物語を考えているのは作者であり読者が介入できるものではない。せいぜい読者の立ち位置で出来るのは二次創作までだ。


 読者は校閲ではないのだから、校正まではしていいが校閲までするものではないし、編集者のまねごとをして「この展開の方が読者は喜ぶ」という勘違いをしてしまうと作者は筆を折ってしまうかもしれない。


 読み専だから何を言っても良い。


 このように勘違いしている“自称・読み専”が一定数いて、作品への誹謗中傷や否定的内容を作者に送りつけ悦に入る人がいるということは間違いのない事実で、言いたいこと(行間)を読むこともせず、ましてや書いてあることすら読まずに自分の意見を送り付けるのは読者でなくただのカスハラ行為だ。


 読み専と言うのであれば、最低限そこに書かれた文章の内容を理解したうえで感想なりを送らなければならないと思う。思い込みで「自分はこうだ!」と否定するのは誰にでもできること。


 もし、作者が筆を折ったとして。それは本当に「誤字脱字報告」のせいで筆を折ったのだろうか?

 私はそれ以外の何かが理由にあると思う。誤字報告を閉じている作者の方も、純粋な誤字脱字報告だけなら閉じないだろう。


 私も、間違いではないのに誤字脱字報告をされたことがある。それが沢山来たら「もういやだ」と思うのは避けられないだろう。

 読まれれば読まれるだけ、おかしな修正報告やこうすればもっといいのにという愛情が送られてくる。


 少なくとも純粋な誤字脱字は教えて欲しい。

 作者は完璧な人間ではないし、思い込みや変換ミスで起きるのが誤字で、何度も書き直しているからこそ起きるのが脱字だ。


 作品への愛があるのであれば、誤字脱字報告をしてほしい作者の方が圧倒的に多い。

 読み専という方々の思い込みは時に作者を追い込むことはあるが、それは誤字脱字報告で起きるものではないと知って欲しい。

読んでくださってありがとうございます。

ここで、誤字脱字について定義を書いておきます。


誤字……使い方の間違った漢字や送り仮名

 例)「使って見る」「そう漢字た」のように、間違った使い方を誤字と言う。


脱字……文字が抜けていること、送り仮名や必要であるところに文字が足りないこと

 例)「食べれる(らぬき言葉)」「確ると(“かめ”が抜けてしまった)」特に表現修正などをしたときに意図せず消えることが多い。稀に間違えて送り仮名を覚えている場合もある。


使用の間違い……間違った日本語の理解で使う誤用のこと

 例)「役不足」✕→その人の能力より与えられた仕事が重い 〇→その人の能力より与えられた仕事が簡単……といったような間違えた理解をしていることを言う。


表現のゆれ……主人公がヒロイン「A美」を呼ぶときに「Aちゃん」だったり「A」だったり「A美さん」だったり、表現がゆれていること。ただし、場面や話す相手により設定を変えている場合もあるので確認が必要。すべてがゆれとは限らない。


表現や演出について……これについての報告が一番筆を折る人が多いのではないかと。この作品でも既に入ったのですが、文字の組み替えや表現の仕方に赤を入れることを言う。誤字ではない(意味が伝わる)ので誤字報告でなくDMなどで連絡するのが良い。わざと引っ掛かる書き方をしている場合もあるため。ちなみに私は良いなと思ったらそのまま修正確認OKにする派だが、これに限って肯定派は少ないので気を付けた方が良い。


読み専と言う人ほど“誤字”が何を指すか知らない人もいると思います。

誤字脱字は明らかに間違っている場合、これは使い方を間違っていますよと教えるもので「表現(誰が読んでも通じる・ミスではない)」はその人の人格否定につながる場合もあるので気を付けた方が良いです。

自分が読みやすいように変更する行為は誤字脱字ではありません。

サイトで推奨されているのは誤字脱字報告のみです。文字が間違っていることに対しての報告のみにとどめていただきたいです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] わたしもわりと誤字脱字が多く、誤字報告はありがたいです。 書き上がった直後だと注意して読み直しても気づかないですね。 文の内容を覚えているので、脳内で勝手に保管されているのかも。 投稿は書…
[良い点] エッセイ拝読いたしました。 いくら血眼になって推敲しても、誤字脱字はなかなかなくなりませんね。 なので、報告は非常にありがたいです。 (これはミスではない、と判断したらもちろん適用しません…
[良い点] 校正アプリなんてあるんですね! 文字数カウントくらいしか使ってなかったなあ。 活用します。ありがとうございます。 [一言] 私もカスハラされるほどに読まれたいものです。
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