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2.アイドルが良い

【side承天寺巳波】

私は承天寺(じょうてんじ)巳波(みなみ)。高校3年生で、ピッチピチの受験生。普段の学校では前髪を下ろして目を隠し、地味な雰囲気を醸し出しているぼっち。


立川君のことは入学したときから気になってた。でも、その気になるは可愛い子がいるなっていう気になり方で恋ではなかった。だけど、今は違う。しっかり恋してる。

もう目が合っただけでドキドキがとまらない!私の髪を捨てずに食べてくれたときはテンション最高潮だった!しかもしかも、明日からは○液で良いって言ってくれたんだよ!テンション上がっちゃうぅぅぅ!!

……と、いけないいけない。学校での私は地味でクール。取り乱すことなんてあっちゃいけないんだよ。


では、気を取り直してなんで私が恋をしたのかという理由を説明する。あれは、学校の外でのこと。私は学校の皆には内緒にしているある活動をしていた。


「皆ぁ!盛り上がってるぅ?」


「「「ミーナちゃん最高!イエエエエェェェェェェイッ!」」」


夜。ちょっとした地下のライブハウスで、私は地下アイドル『ミーナ』として歌っていた。そこそこの人気もあって、ライブハウスはいつも満員。良く歌って欲しいていうオファーも来る。

その日はデビュー2周年&活動休止前最後のライブだったため、かなり遅くまで歌っていた。活動休止にするのは、受験生だし勉強に専念しなきゃいけないから。

それで帰りが遅くなっちゃったから、運の悪いことに帰り道に怖い人たちに絡まれて、


「おい。ミーナじゃないか?」

「おっ。マジじゃ~ん。可愛い~」

「ねぇ。ちょっと俺たちの相手してよ」


そんなことを言って、強引に腕を掴んでくる人たち。周りに見てる人はいるけど、誰も助けようとはしてくれない。私の抵抗もむなしく、あっという間に路地裏に。


「な、何するの!やめてくれない!」


「やめませ~ん。こんな美少女にお相手してもらう機会なんて、なかなかないからなぁ~」

「ほら。早く帰りたかったら服脱ぎなよ」

「相手してくれたら帰らせてあげるからさ。フヒヒッ!」


気持ち悪かった。全身に鳥肌が立ち、恐怖も感じた。でも私の感情なんてどうでも良いみたいで、その人達は私の服に手をかける。


「い、いや!?」


「嫌がっても無理矢理やるぜぇ。てか。逆にそそられる」

「ほらほらぁ。大人しくしといた方が、痛くなくて済むぞぉ」

「痛いのが嫌なら、さっさと脱いで遊ばれてよ」


「やだ!やめてよ!」


必死に振りほどこうとする。でも、数人がかりで押さえつけられると非力な私には何も出来ない。すぐに上の服は脱がされる。そして、ついに私のスカートが脱がされたところで、


「ねぇ~。お兄さん達。それ大丈夫な遊び~?」


「あぁ?なんだお前。……ってガキじゃねぇか」

「おいガキ。有り金だけだして帰りやがれ。痛い目は見たくないだろ?」


幼くて中性的な声。見覚えのある童顔。小学生と言っても通用するかもしれない身長。

そう。立川君だ。立川君が、スマホを片手に持ってやってきたのだ。


「ん~。そこの脱がされてる子は同意の上なの?」


立川君は迫ってくる男の人たちを無視して、私の方に質問してくる。その声や仕草におびえはない。ここで巻き込んでしまうのも良くないとは思ったけど、私の口から言葉は出た。


「ち、違う!無理矢理脱がされて!」


「ふぅん。………ダメだよお兄さん達~。女の子には優しくしないと」


立川君は学校と変わらない少し脳天気な受け答えをする。それに男の人たちは「ちっ!」と舌打ちして、


「うるせぇんだよ、ガキが!」


そんな暴言と共に振り上げられる拳。立川君に向かう拳に、私は思わず目をつむってしまう。でも、私の耳に聞こえてくるのは予想とは違い、


「ギャアアアアァァァァァァ!!!!????????」


殴った方の人の叫び声。驚きと共に恐る恐る目を開けると、そこには男の人を踏みつけている立川君の姿が。


「もぉ~。暴力を振るったらダメだって親に襲わなかったの?……いや。反抗期だから言いつけを破りたくなったのかな?可愛いでちゅね~」


馬鹿にするように言う立川君。それを聞いて、他の男の人たちが正気を取り戻す。すぐに何人かで囲んで、


「ガキが!何しやがった!」

「癪に障るクソガキが!さっさと金を出せ!」


「うわぁ。僕大歓迎じゃ~ん。これはちゃんとお礼しなきゃね」


そう言った後、すぐに結果は決まった。あっという間に男の人たちは倒されていき、全員等しく立川君に顔を踏みつけられていく。まるで、赤子の手をひねるかのように。見た目で言えば立川君の方が子供なんだけど。


「お、お前らどうした!?早くガキをぶっ飛ばせよ!」

「ガキ1人になに手間取ってんだよ!」


立川君を襲わなかった人たちは、踏みつけられてる人たちに声をかける。でも、誰も起き上がってこようとはせず、くぐもったうめき声が聞こえるだけ。立川君は声を出した人たちに目を向けて天使みたいな笑顔を浮かべ、


「ちょっと黙ろうか」


「「ふべっ!?」」


その辺に落ちていた空き缶を投げつけた。空き缶は綺麗にその人達の口に入り込み、空き缶を加えた人たちは苦しそうな表情を浮かべた。まさに一方的と言える戦い。私がそれを呆然とみてると、突然腕を引っ張られて、


「おいガキ!コイツがどうなっても良いのか!」


「ひっ!?」


首筋に当てられるひんやりとしたもの。私はそれを見て、思わず悲鳴を上げでしまう。でも仕方ない。首にナイフを当てられるなんていう、死に近い状況は初めてだったんだから。でも、それでも立川君は慌てずに、


「もぉ~。女の子を乱暴に扱っちゃダメって言ったでしょ~」


ぷくっとかわいらしく頬を膨らませながら、腕を振るった。直後、パリンッ!という音と共に私の首を押さえつけていた力が急に弱く。首筋のナイフも地面へと落ちる。

どうなってるのかと振り返ってみれば、私を人質にしていた人は頭から血を流して倒れていた。


「……ねえ。大丈夫?」


驚きで固まっていた私の後ろから声が。


「ん!?あ、ああ。うん。大丈夫。……ありがとう」


私はすぐに洋服を着てお礼を言う。立川君は笑みを浮かべた後に首を振って、


「ううん。女の子に優しくするのは当然の嗜みだよ!……で?大丈夫?ケガとかしてない?家まで送っていこうか?」


「う、ううん。大丈夫。流石にここを過ぎたら安全だと思うから。………本当にありがとう」


立川君の笑顔に、胸はドキドキと高まる。家まで送ってくれるなんて言われたけど、それは流石に断った。ほ、ほら。どうせ家に来てもらうならその流れでベッドインまでしちゃいたいというかなんというか………。

ま、まあ、なんというかそんな出来事もあって惚れたわけ。その後、たまたまSNSを見ていたら、


『ミーナちゃん大丈夫?』

『ミーナちゃんをいじめるヤツは許さない!』


みたいなコメントがたくさん来てた。何のことか分からなくて詳しく調べてみると、なんと立川君が私の襲われてるところを動画に撮って上げてたみたい。私はすぐにその動画を共有して、


『助けてもらっちゃった。ありがとう』


と、メッセージをつけておいた。これで立川君のフォロワーは沢山増えたと思う。……へへへっ。立川君、喜んでくれてるかな?とりあえず、私は立川君のアカウントを知れたから万々歳。

えへへ。立川君のコメントは全部追いかけるんだ。えへへへへへ。

立川君の朝のおはようコメント見ながら○液準備しよ~。

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