1.○液が良い
この作品は今夜中に全て投稿し終わる予定です。
「うわぁ。髪の毛入ってる!?……母さん気をつけて欲しいなぁ」
昼休憩。友達と集まって弁当を食べる僕は、弁当に髪の毛が入ってるのを発見した。それも、1本2本じゃない。束みたいになって入ってるんだよ。しかも、母さん茶髪なのになぜか黒いし。
「ははっ。捨てろよそんなの。汚いだろ」
「立川の親は弁当の上で髪でも切ったのか?抜けてる親だな」
友達は髪を捨てろと言ってくる。因みに、立川は僕のこと。立川恵司とは僕のことさ!
って、知るわけないよね。僕はちょっと女の子からの人気があるくらいだし。
………え?何さらっとイケメン自慢してんだこの野郎って?
チッチッチッ。イケメン自慢じゃないよ。僕は童顔で割と背が低いから、年下の子供みたいな感じの可愛がられ方をしてるだけ。恋愛感情なんて、ショタ好きじゃなければそうそう湧かないんじゃないかな?
まあ、それでも僕に嫉妬してくる男子はいるけどね。ふれあえるだけで羨ましいとか、もう色々とその場合は末期だよ。女子に嫌われすぎだよね。
と、それは良いとして。
「まあ、食べれるなら何でも良いかな。髪でもないよりはマシだよ。……ただ、毎日のように髪は入れられると困るけどね」
「お、おう。食べるのか。相変わらず食べ物の味に無頓着だな。立川」
「わお。本当に髪をムシャムシャと。……お前もよくやるよな。そんなこと」
「食べれるだけマシだからねぇ」
食べ物がないのは本当に苦しい。僕も色々と経験してるからそれは分かってる。だから、例え食べにくかろうと出されたものはきちんと食べるのさ。それが髪の毛であったとしてもね。
「でも、やっぱり気をつけるようには言っておかないとね。流石にお弁当の中身が髪の毛なのはきついかな」
「はははっ。そりゃそうだろ。俺だって嫌だぜ」
「俺も嫌だな。おいしくないだろ」
そんなことを友達と話しながら昼食を食べ続ける。
なんだか視線を感じたので横を見てみると、隣の席の子が僕のことを見ながらパンをもしゃもしゃと食べていた。もしゃもしゃって言う表現は美味しく無さそうに聞こえるかもしれないけど、この女の子もあまり美味しそうには食べてない。食事を美味しく食べられないなんてもったいないね。
「よし。ごちそうさま。俺はお手洗いに行ってくるぜ!」
「ん。俺もともに行こう」
「いってらっしゃ~い」
友達の1人がトイレへ向かうと立ち上がると、他の子もそれに着いていくことに。僕はまだ食べ終わってないから大人しく見送った。この髪の毛が良い感じに食べづらいんだよね。全然噛み切れないし。
なんてことを思いながらひたすら髪の毛をハグハグしてると、
「………ねぇ」
「ん?」
隣の女の子に話しかけられた。さっき僕のことを見てた子だね。すでにその手にあったパンはなくなっている。
この子は承天寺巳波ちゃん。目が隠れるほどの長い前が特徴で、ほとんど誰ともつるまないぼっちな感じの子。一人で本を読んでるのが似合いそうな印象の子だよ。女の子と仲良くなることの多い僕でも話すことは少ない子だね。
「髪の毛、お弁当に入ってるの嫌だった?」
「へ?……まあ、嫌といえば嫌かな。絶対入れないで欲しいってほどではないけど」
さっきの僕たちの会話を聞いてたみたい。これが気になって僕のことを見てたのかな。
「そっか。………じゃあ、髪の毛と爪と○液、どれが良い?」
「え?○液」
即答した。それ以外考えられないよね。だって。
「髪の毛は喉に絡まりそうだし、爪は口の中傷つけそうじゃん。○液が1番食べやすいんじゃないかな」
「なるほど。理解した。………頑張る」
承天寺ちゃんはそれだけ言って会話を終わらせた。もう本を開いて読み始めてる。僕と会話を続けようって言う雰囲気には見えないね。
……でも、頑張るって言われてなんとなく察したよ。僕は鈍感係主人公じゃないからね。流石にこんな会話をすれば分かるんだよ。
承天寺ちゃんが僕のお弁当に髪を入れた、って事。
言われてみると、なんとなく承天寺ちゃんの髪が短くなってる気もするしね。わざわざ僕のお弁当に入れるために切ってくれたのかも。そして今の会話の流れからすると、○液が明日からは入ることになるんだよね?つまり、承天寺ちゃんの○液を僕は明日から僕は食べることになるわけだよ。………それなら言っておかないといけないことがあるね。
「○液入れるのは良いけど、古いのはやめてね」
「っ!?」
僕の言葉で承天寺ちゃんの顔が赤くなる。自分がお弁当に髪を入れたって気付かれて恥ずかしかったのかな?
承天寺ちゃんは数秒の沈黙の後。
「………あ、朝、頑張る」
何を頑張るのかは考察を避けておこうか。でも、明日からはちょっとべっちゃりしたお弁当になりそうだね。まあ、食べれるなら別に良いかな。
………あっ。そうだ。せっかく承天寺ちゃんが距離を詰めてくれたわけだし、
「承天寺ちゃんのこと、これから巳波ちゃんって呼んでも良い?」
「っ!……い、いいよ」
やったね。許可貰えちゃった!
「じゃあ、よろしくね。巳波ちゃん!」
「う、うん」