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守護者となった退魔師と勇者の異世界譚  作者: 黒猫
生徒会総選拠篇
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生徒会

「って感じなんですよ。」

「イツキくん……体には気をつけてね?」

翌日の生徒会でヒナさんに勉強会のことを教えると真剣に体の心配をされた。

いや、別に貧乏執事みたいな寿命を縮めるような生活はしてないつもりだが。

最近はイロハも掃除洗濯は覚えてしてくれてるし、食事の用意も手伝ってくれるので、そんなに苦労はしていないしね。

ちなみに今は俺の分身がバカ二人に勉強を教えている。


「まあ体は丈夫なんで心配は無用ですよ。それに良く家事を手伝ってくれるので。」

「そう……?たまには生徒会を休んでもいいのよ?」

「いや。俺が休んだらヒナさんの仕事が増えるじゃないか。俺と違ってヒナさんはテスト勉強もあるんだ。それに私が休んでヒナさんが体を壊したら、それこそ本末転倒だ。」

「いいわよ、その時は優秀なラルドくんに看病してもらうから。この前みたいにね。」


悪戯っぽく笑いながらヒナさんが言った言葉にそう笑いながら返す


「………それで、コリーはどうしたのかしら?」

「……さぁ?」


ヒナさんの言葉を聞いてコリー書記の机がある方を見ると、頭から煙を出して机に突っ伏しているコリー書記がいた。


「大丈夫ですか?コリー書記。」


とりあえず話し掛けることにしたので近くに行って声をかける。


「お~…いっちゃんではないか~……。どうかした~……?」


すると、目元に巨大な隈を作ったコリー書記が顔を上げた。


「どうしたんだ?作者みたいな顔をしてるぞ?」

「どんな顔よ……。」


上司や家族から目が死んでる。てか寧ろ顔が死んでるって言われるような顔です。

まあ女子に言うような言葉ではなかったな、反省しよう。


「にゃ~……実は担任の先生に、数学以外の科目が酷すぎて、このままだと夏休み補習漬けになるって脅されて……。」


暗雲を背負いながらそう呟くコリー書記

ここにもおバカが居たか……!


「補習って……あなたそんなに成績悪かったの?」

「うん、数学は毎回小テストでも満点を取ってるし、本番でも心配は無いんだけど……他の教科が………。」

「はぁ……どうしましょう……私が見てあげたいのは山々なんだけど…仕事もたまってるのよね……。」

「……はぁ、仕方ない。俺が見ようか。どうせ一人増えようが大して変わらん。」

「本当?それは助かるけど……イツキくんも仕事があるじゃない。」


そう言ってヒナさんは私の机の上に乗っている1m程の高さに積み上げられた書類を見る。毎回思うけど、なんでここの生徒会ってこんなに書類仕事が多いのか?


「まあどうでもいいか。」


俺は紙の山に近づき、数枚の白紙を山の上に乗せる。あんまりこれはやりたく無いんだけど仕方ないか。確かこの書類は生徒のアンケートをグラフに纏めるんだったな。


「なら…。」

《現返》【この書類は既に纏められている】


書類の山に手を乗せてそう呟くと青い焔が紙の山を一瞬包み、消える。すると、書類は燃えずにそのまま残り、上に置いてあった数枚の紙にいくつかのグラフと解説などが書かれ、クリップで留められていた。


「ん、よし、それじゃ、これがあの書類を纏めたものですね。」

「え?あ、はい……って待ちなさい!今何したの!?」

「…言わないとダメですか?」


まあ説明するのくらいどうってこと無いんだけどね。今のはこの前に使い魔にした神狐ルーチェの能力【現返うつつがえし】、その名の通り現実と自分が吐いた嘘をひっくり返すという能力だ。だがそれを炎と変換し、虚実の炎として進化させた。

さっきは書類に全く手を付けていない「現実」を既に纏め終わっているという「嘘」とひっくり返したのだ。


「……要するにまた強くなったのね……。」


能力のことを説明したらヒナさんが呆れたようにそう言ってきた。

いや、まあそうなんだけどなんか釈然としない。


「でもこの能力…あんまり好きじゃないんですよね。」

「どうして?それだけ強力なら無敵じゃない。」


「ん~、強力過ぎて好きじゃないんですよ。

その気になればなんでもできるからこそつまんないんですよね。あんまり楽をするのは好きじゃないんです。」

「ふぅん…変わってるのね。って言いたいけど私もそうだから気持ちはわかるわ。」

「それとヒナさん。私はこの世界で<最強>ではあっても<無敵>ではありませんよ。」


俺の能力だって理の内側に居るかぎり俺より高い神格を持ち、理の外側の存在……つまり上位の転成者達またはチート雑用係には通用しないこともあるしな。特にあのハザマのように……。


「はい、じゃあこれから授業を始めます。」

「わ~」

「なんでメガネ掛けてるの?」

「いや、何事も形からとあくまで執事な方が言ってたので。てかヒナさんは仕事はいいんですか?」


「さっきイツキくんがコリーの仕事と一緒に終わらせちゃったじゃない。」

「あ、そうでしたか。……メガネ変ですかね?」


ちなみに今は銀縁の細いフレームのメガネをかけている。


「さて、脱線したけど授業を始めるぞ。まずはコリー書記とヒナさんにはこのテストをやって貰いますら。」


そう言って俺はコリー書記とヒナさんにはさっき教科書を見せて貰って作った模擬テストを渡す。


「凄いわね……ちょっと教科書を読んだだけでこんな応用問題まで作っちゃうなんて……。」


ヒナさんが俺が作った問題を見てそう声を漏らす。

伊達に執事つかいまをやってないのだよ。


ー1時間後ー


「………はい、止め。プリントを貸してください。」


1時間が経ち、二人が全テストを終えたところでそう合図をする


「ぁぅ……。」

「ふぅ……これは難しいわね……。」


テストを回収すると二人はそれぞれ思い思いの感想?を述べた。

机に突っ伏して頭から煙を上げるコリー書記の肩を手に少し冷気を纏わせてポンポンと小さな子どもをあやすように撫でる。


「……ふふっ」


ヒナさんがコリー書記を見て微笑ましいものを見たように不機嫌オーラを霧散させ、優しく微笑んだ。


「はい、じゃあ結果を発表します。」


パラパラと二人の答案を捲りながらそう手を鳴らす。


「もう?まだ回収してから1分経ってないわよ?」


「1分あれば十分過ぎますよ。

まずはヒナさん、合計点数498点、薬学の最後の問題以外は全問正解ですか……450点からは教科書を完璧に理解出来てないと取れないように作ったんですけど……。」


「普通に先生が作る方が可愛く思えるくらいだったわよ……イツキくん実はSでしょ?」

「コホン…とりあえずヒナさんは、わざわざ俺が教えるまでもなくこのままで十分ですね。」


プリントを置き締めくくる。


「で、コリー書記だな。」

「ぁぃ……。」

「いや別に怒るわけじゃないんだから、普通にしていればいい。」

「はい!」


苦笑いしながら言うとすぐにコリー書記は元気良く返事をしてきた。


「え~……総合が260点、内訳は数学が100点…凄いな、学者レベルの問題を出したのに…他は一律40点か……言うほど酷くないじゃないか?強いて言うなら記述問題が弱いか、その辺は単語でカバー出来ると思うぞ?」

「そうね、赤点は39点からだし。十分上げられる範囲じゃない。」

「ホント?」


俺達二人の反応が信じられないのか聞いてくるコリー書記だった。


「ああ、これならあと5日間きちんと勉強すれば十分赤点は回避できるぞ。」

「私達も手伝うから頑張りましょ!」

「うん!」

「よし、じゃあ早速単語を覚えようか。まずは薬学の教科書を開いてくれ。」


はい先生!と元気良くコリー書記は薬学の教科書とノートを開いた。


「よし、まずは簡単な傷薬の材料は――――――――」


そして和やかな雰囲気の中勉強会を進めていった。

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