終幕
戦場から空間の妖術を使って、作った“空間の裂け目”を通って、帝国内の上空に移動した後…俺、リカ、イロハが帝国を見下ろしながら待機する。
帝国内の善良な市民及び大臣を強制転移させる。
能力を使用して城を中心に全てが消し飛んだ。確認したところ帝王以外の四天王とやらが死んだようだ。
そして城の瓦礫にゆっくりと降りていく。
「やってくれたなぁ!!貴様らあぁあぁぁあああぁあぁああぁぁぁあぁあぁっ!!!」
ドカァァァンッ!!
が、その瞬間、分厚っっっい瓦礫から、豚(皇帝)がそう言いながら出てきた・・・
ちっ。死んでないのは分かっていたが無傷とは…
皇帝が向かってきたので神蒋しんていで弾き飛ばす。
一時間後・・・
「ぐっ・・・貴様ら・・・よくも・・・」
リカと一緒に一時間程、ボコった後、テンプレ通りな豚(ただ全身が殴られたことによって、めちゃくちゃ腫れ上がっただけ。)になった汚物(皇帝)はフラフラになりながらもそう言ってくる。
っていうかガチで殺る気でボコったのに・・・なかなかしぶといな。
「よくも・・・我輩の美しい顔を・・・!!」
それでいて、ナルシストとかキモ過ぎる。
そして現実を突き付けてやる。
「そんな・・・勇者は倒されるとは、さらには我が軍が負けるだと・・・」
リカが言ったことに対し、汚物(皇帝)は絶望の表情を浮かべる。
「ええい!!こうなったら!!」バッ!!
が、汚物(皇帝)は自棄ヤケを起こしたのか、なにやら赤い液体が入った小瓶を取り出す。
「!?それは『喰種の血』か?」
その小瓶を見た瞬間、リカが声を上げる。
って『喰種の血』ってまさか…
「『喰種の血』・・・その昔、かつて鬼人族と一緒に人間を滅ぼしかけた喰種が流したとされるもので、それを飲めば、膨大な魔力を得ることができると言われている、まぁ、テンプレなヤバい薬だ。」
汚物(皇帝)は『喰種の血』を一気飲みした。
「ヴおォオぉォおぉオおおぉォオぉおオォォぉおーーーっ!!!」
メキメキ!!メキメキ!!
『喰種の血』を一気飲みした瞬間、汚物(皇帝)は一瞬にして、“異形”へと変化する。
全身から黒い煙を吹き上げ、身体の色も全体的に黒く変色し、また肉体も筋肉隆々になり、二回り程大きくなる。眼が真っ赤に染まり、背中から触手が何本も飛び出す。
「またしてもあれか!」
またしてもテンプレな期待を裏切りやがって!!
ズガァァァンッ!!
「ヴおォオぉおオォォぉおオォォぉおオォォぉおオォォぉおーーーっ!!?」
またしてもテンプレな期待を裏切りやがった汚物(皇帝)に対し、俺は思わず黒穴を放つ。
ピチューン
それと同時に汚物(皇帝)の上半身がピチュる
ズズ・・・ゥゥン・・・
上半身を失った汚物(皇帝)の身体はそのまま仰向けに倒れる。
「「・・ヤバい薬使った割にはめちゃくちゃよえぇ!!?」」
マジで最後の最後までテンプレを裏切るな!!この汚物は!!
っていうか再生しないのか
「で、どうするよ?これ。」
とりあえず叫んだ後、リカは上半身を失い、仰向けに倒れて絶命した汚物(皇帝)を指差しながら、そう尋ねてくる。
「まぁ、とりあえず・・・」
【焼却】
ボォォォッ!!
対する俺はそう言いながら汚物(皇帝)を焼却処分する。
「殺った後、“黒炎”とかで死体を処分するってのもまたテンプレだなwww」
やまぁ、確かにっ。て…ん?今、地下から“声”が聞こえたような・・・」
俺は瓦礫を浮かせ地下通路が出現したため、下へと進んでいった。
地下へ降りてみると、そこには大きなベッドで横になっている、金髪のロングヘアーに銀の瞳をした少女がいた。
「まさかの汚物(皇帝)を倒した後に美少女発見www」
少女の姿を見た途端、リカが笑いながらそう言う。
まぁ、確かに美少女ではあるが、なんていうか誰かに似ている・・・なんか暗いものを抱えてそうな・・・
「・・・誰?」
俺がそう思っているなか、謎の少女がそう尋ねてきた・
ある程度ことの顛末を話した後、詳しい話を聞いてみたところ、第一皇女、アセイラム・ノアル・アドラ(名前は教えて貰った)は元々は先代皇帝と皇妃の間に生まれた子で、本来ならば父の後を継ぐ筈だったのだが、彼女がまだ幼かったのと、当時の大臣だったカチスン(汚物)の卑劣な策によって皇位をカチスン(汚物)に奪われ、彼女自身は第一皇女として、半強制的にカチスン(汚物)の養子にされたらしい。
まさかの正統な皇族じゃなかったよあれ…
「---で、半強制的に養子にされた私はその後、民や他の種族のことを全く考えない汚物のやり方に反発しました。そんな私を疎ましく思った汚物は私に毒を盛り、汚物と愚妹が勝手に召喚した屑に勝手に惚れられた私に嫉妬した愚妹は私に呪いをかけるようになって、今に至るって訳です。」
「・・・なんていうか・・・。」
「滅茶苦茶損な役回りだなwwwおまえの人生…。」
アセイラムの話を聞いた後、俺たちはそう言う。
確かにリカの言う通り、損な役回りだな。こいつの人生、気持ち悪い汚物に皇位を奪われ、その汚物のやり方に反発したら、毒を盛られ、その汚物が勝手に召喚した公害屑には惚れられ、そのことに嫉妬したビッチ姫からは呪いをかけられって・・・・・・滅茶苦茶損な役回り過ぎじゃね?こいつの人生って・・・
アセイラムの話を聞いた後、改めてそう思いながら、同情した。
「で?あなた達がここにいるってことは、汚物達が勝手に仕掛けた馬鹿馬鹿しい戦争は汚物達、つまりこの国が負けたってことでしょうが、私はここで殺されるのかしら?それとも捕虜?まぁ、あの汚物と愚妹の毒と呪いでどっちみちもう助からない私にとってはどっちでも良いけど・・・。」
自分の身の上話を語った後、アセイラム姫は自嘲の笑みを浮かべながら、そう尋ねてくる。
損な役回りな人生のせいで、若干自棄になっているな。これは・・・でも、まぁ・・・
「悪いが、私達は君を殺す気もなければ、捕虜にする気もない。」
「え?」
「正直な話、私達がここで君を見付けたのはただの偶然だ。そんな私達に君のことをどうこうする気など毛頭ない。」
「っていうかおまえにはしなきゃいけないことがあるんじゃね?www」
俺からの意外な答えに呆気に取られるアセイラムに対し、俺たちはそう言う。
「私のやらなきゃいけないこと?」
「そうだ・・・」
こいつのやらなきゃいけないこと・・・それは・・・
「・・・一度壊れてしまったこの国を・・・元に戻すことだ・・・」
首を傾げながら、そう聞き返してきたアセイラムに対し、俺はわりと真剣な表情でそう言った。
「この国を・・・元に戻す?・・・私が・・・?」
「そうだ。先程の君の話を聞いてそう思った。民や他の種族のことを想える君なら、この国を元に戻すことができるとも。」
わりと真面目な話で。
「あなた達、さっきの私の話を聞いていなかったのですか?今の私の身体はあの汚物と愚妹の毒と呪いでぼろぼろなのよ?そんな私にどうやって、この国を建て直せって言うの!」
「なら、その身体を治せば、問題はないな。」
「!?」
自分の言葉を遮りながら、そう言うのに対し、アセイラムは驚きの表情を浮かべた・・
「治せるの?・・・この身体・・・」
「あぁもちろんだとも。」
「そんなもんwwwちょちょいのちょいさねwww」スッ
リカは毒を取り除く虫型選択武装『毒喰虫』の能力を発動させる。アセイラムの頭に手を載せると、身体中を蝕んでいる毒がリカの手に取り込まれてくる。
「先程、君が言っていた屑(貴族Or兵士)達は俺が掃除しておいた。」
「!?」
俺の言ったことに対し、アセイラムは驚きの表情を浮かべる。
「これで君を阻むものがなくなったな。」
そんなアセイラムに対し、俺は優しい笑顔でそう言う。
「いくら私の身体が治っても、屑(貴族)達がいなくなっても、結局、この国は戦争で負けてしまった・・・この国はきっとこのまま王国に吸収される・・・だから、もう……」
「あぁ、言い忘れていたが、少なくとも、この国は吸収されることはないと思うぞ。」
「!?」
顔を俯かせながら、そう言うアセイラムの言葉を遮りながら、俺はそう言う。
「戦争では負けても、この国が王国に吸収されることのないよう、私から国王に掛け合ってある。」
「まぁ、吸収しない代わりに王国にちょっとだけ有利な貿易を結ばされることになるだろうけどな。www」
なんか驚きの表情を浮かべているアセイラムに対し、俺たちはそう言った。
「なんで・・・私にそこまでしてくれるのですか?」
対するアセイラムは首を傾げながら、そう尋ねてくる。
「理由は特にない。強いて言うなら、ただの気まぐれだ。」
「だなwww」
「では、私達はこれで失礼する。」
「もう奴隷制度なんか作るなよ。www」
そう言って、その場を去ろうとする。
「待ってください!!せめて名前くらい教えて!!」
が、アセイラムにそう呼び止められてしまった。
「正義の味方と名乗っておこう。」
その後、少しだけ話をして・・・
「じゃあ、私達はこれで。」
「良い国にしろよ。」
「えぇ。勿論よ。色々と助けてくれたあなた達に恥じないよう、一度壊れてしまったこの国を立派な国に直してみせる・・・その時はまた遊びに来てちょうだいね。正義の味方さん」
「フフ・・・その時は近い時であることを願っているよ・・・」
ズバァァァンッ!!クパァ
僕はそう言いながら、空間の炎で王室まで繋げる。
「じゃ。」
「サラダバー。」
そうして俺たちは本当の意味でその場を後にした。
「素晴らしい国…ですか。」
「姫~!」
「スレイン!」
「ご無事で何よりです。」
「スレイン一緒にこの国をよくするのを手伝ってくれますか?」
「私は貴方の騎士です。貴方のためなら…どこまでも。」
「あらら……せっかくおもろくなってきたのに……まぁいいでしよう。これで計画は進むやろう。」
イース王国城、王室・・・
「失礼しまーす。」
「王様。いらっしゃいますかー?」
スキマを通って、王室に来た俺たちはは開口一番にそう言う。
「あぁ、君たちかい。いらっしゃい。」
対する王様は玉座に腰を下ろしたまま、普通にそう対応する。
因みにフェルト姫の仲介のもと王様に正体を明かしているためフレンドリーだ。
「さて、君達がここに来たということは・・・。」
「はい。帝国の皇帝の豚っていうか汚物をこの世から消毒した。」
「ついでに帝国をまともな国にしてくれそうな第一皇女を次期皇帝にしてきた。」
「その第一皇女は戦争に反対していたから、向こうの方から白旗を上げると思う。」
意味深な顔でそう言う王様に対し、そう報告する。
あ。言い忘れていましたが今、王室には俺たちと王様の三人しかいない。
「そうか・・・いずれにせよ、これでこの馬鹿げた戦争を終結できる。」
「あと。そのことについて一つ、お願いしたいことがある。」
「ん?なんだい?」
「今回、戦争を始めた帝国の前皇帝(汚物)は死に、戦争に反対していた第一皇女が次期皇帝になって、白旗を上げることによって、この戦争はこの国の勝利で終わります。その勝利の一番の要因である、前皇帝を倒したことは勇者(笑)であるシンの手柄にしますから、帝国を吸収しないでくれないかね。」
汚物(前皇帝)を倒したことをシンの手柄にすることを条件に、そう王様にお願いした。シンは嫌がるだろうけど……
「・・・一応理由を教えてもらって良いかい?」
帝国を吸収しないで欲しいというお願いに対し、王様は真剣な表情でそう尋ねてくる。
「理由は特に何も。強いて言うなら、ただの私たちの気まぐれ。」
「気まぐれって・・・まぁ、良いだろう。私達としても、別に帝国を吸収したくて戦った訳じゃないからね・・・その願い事は聞こう。しかし、本当に良いのかい?これだけのことをすれば、十分貴族にすることもできるけど・・・」
「別に興味がないので結構…自由に生きていきたい。」
「オレも、貴族の地位とか別にいらないぜ。」
後日、戦争は『イース王国』の勝利で終結した。
が、負けた『メーテル帝国』は吸収せず、帝国内で採れる珍しい鉱物や金属を王国に低価格で輸出するということで和解した。
まぁ、そうなるようにお願いしたから、当たり前なんだけど。
因みに、その帝国との戦争での勝利&和解の一番の立役者(に仕立てあげた)であるコウガは勇者(神)として、民に崇められるようになった。まぁシンは不満だっただろうが…
で、今回の戦争でロボットを製造していた奴は死んだけど、またどこかで転成者がやらかすかも知れんので分体を各地域に配置させた。転成者の仕業か敵の神か解らんがまた攻めてきたときはどうなるか…