思い
2人の技が何度もぶつかり合う。その剣圧で広間が崩れていく。イツキが妖術で拘束するが、蛇の剣で振り払われる。イツキがいくら修行で強くなっても、イリスはその上に立つ。イツキは《ぬらりひょん》の札を取り出して憑依する。
《妖装》【悠々自適の総大将】
【武天法曹の黒田坊】
『それが、かの有名な妖怪の王の姿ですか。』
「そうだ。」
お互いが視界から消え、高速で動き回り戦っていた。イツキはイリスからの視覚から消えて、のらりくらりと移動し、イリスの首元に向けて暗器である刀を射出する。イリスは水でできた蛇の形をした尻尾で弾かれてしまう。イツキはその尻尾を弾き流しながら、イリスを蹴る。イリスはそれを防ぐと同時に、暗器が射出するがイリスには当たらない。霧のように消えたかと思えばイツキの背後に現れる。想定していたイツキは背中から長物である槍、大剣、斧などを射出しイリスから離れる。
『やりますね。ならこれはどうですか?』
イリスの左目が【赤】に染まる。城が崩れ始め、イツキは落ちていく。イツキは妖力で幻術返しをする。それを見ているリカらは膝をついて頭を抱え出す。両者の高度な幻術により幻覚汚染が始まり耐えられなくなっていた。高度な幻術の耐性がないシェリカは気絶してしまった。リカとマリアはなんとか意識を持ってからまいと耐え忍んでいた。
「このままじゃ、俺達も、いずれ堕ちるぞ。」
「黒木場……幻術返しするやつはないのか」
「あるにはあるが壊れる。あんな高度な幻術をやられてはな。」
そして目が【青】に染まり、魔物を召喚する。
【緑】に染まると、仲間だった鬼人の技を繰り出す。【紫】に染まると羅生門を出現させ扉が開かれると鬼が大量に出現した。
《妖技》【百装乱武・釈迦】
大量の鬼を武器を射出し葬り去る。イリスの間合いを責めて、鬼を封じる刀で袈裟斬りを行った。
「お前は何のために戦う!」
『それは決まっている虐げられた我らの恨みを!』
「ふざけるな!そんなことのために皆をイロハを下らない恨みのために記憶を消したのか!」
『そうではない。』
『私は……私』
イリスは頭を抱えた。イリスのしてきたことはただの八つ当たりにしかないことを。
イツキは全ての思いを伝え、イリスはさらに苦しみだした。
「もういいだろ!皆苦しんだそしてお前もいま泣いているじゃないか!」
『そんなこと……小娘がぁでてくるなぁ』
イツキは妖力の空間を造り、イリスの手を取る。イリスの中に沈んでいたイロハの意識が甦り、涙を流した。
「私は…両親もいない…友達にも裏切られた…この世界でどうすればいいの!私が死んでしまえば…全て収まるよ!」
「そんなことないイロハ!死…なんて選択…簡単に選ばないでくれ……!」
「だって私弱いもの……誰も失いたくない!」
「弱くてもいい!皆弱いんだ。だから助け合って生きていくんだ!頼りあい…お互いに必要だって言える。俺もそうだ!皆やイロハが居たからこそここまで来れたんだ!」
「そんな…ことない!イツキは……強いもの。私が居なくたって…。」
「そんなことない!お前は俺のマスター!だから帰ってこいイロハ!」
「イツキ!!」
その言葉でイロハがイリスの支配を取り戻した。イツキはイロハを抱き締めた。
これにより王国の鬼人たちは、記憶の中に沈んでいった。外で戦っていたベルト支部長は終わりを確信し一息を付いた。フレイもフェルト姫らも戦闘が終わったことにより力が緩んだ。この戦いは数多くの死者を出してしまった。
がリカが神代遺産より集めた伝説の願いの欠片で造られた聖杯型選択武装『甦涙ノ盃』を使い、死者を0にした。使い終わるとそれは砕け散っていく。一度きりしか使えないからだ。それ以上使用すると世界が乱れてしまうからだ。
そしてリリィに変装していた人物はいなくなっていた。
生き返ったイリヤは驚きながらも、戦いが終わったことに微笑んでいた。
横たわるニルスはイリスが解放されたことに喜んでいた。何千年もの間、繋がれた鎖が途切れたことにより重りはもうなくなった。氷魔法で自信を氷付けにしようとしたが、イリスがそれと止める。これ以上仲間が死ぬのが嫌だったらしい。
そして皆……イース王国に帰っていく。
イリスの意識はイロハと共有し、鬼人化も可能となった。
イリスの罪を背負うことを決めたイロハは前に進んでいく。