氷結の生き残り
そしてイツキたちはようやく頂上のある門にたどり着いた。それを潜ると、イリスとニルスがそこにいた。テーブルで食事しているところだった。
『やぁ来たね。積もる話もなるだろから食事でもしようよ。』
「断る敵陣で食事するほど馬鹿じゃない。が招待を受けておこう。」
「おい。イツキ!」
「そうか……なら座ったら?食べ終わるまでは手出しはしないから。それと毒殺する真似はしないから安心してね。彼女は…うん。食べてるね。」
イリスにそう言われると空いている席に座った。いつのまにかリカはテーブルに並べている食事を食べていた。それを見たイリスは引いていた。
リカの咀嚼音しか聞こえないが、沈黙が続くがイリスが喋り始めた。
『そろそろこの戦いも終局を迎えることになる。この戦いは我らの敗けだよ。だけど王国には甚大な被害をもたらしたけどね。』
「前置きはいい……イロハを返してもらう。」
『それは無理な相談だよ。この娘の魂はもう少しで私と同調する。けどまだ抵抗しているよ。愚かなことにね。』
「ならお前を倒すだけだ。」
「できるかな?」
イツキはテーブルを伝いイリスに向けて、斬りつけるが蛇の剣で防ぐ。その風圧により食器がテーブルから落ちる。食器が割れた瞬間、ニルスとリカ、マリアが戦闘体制に入った。
リカは全てのオプションワークス【完全武装】を発動し構える。マリアはニルスに向けて照準を定め放つ。高速で移動するニルスに追尾弾が向かう。防御膜を張り防ぐ。その後ろからリカが刀型オプションワークス『滅鬼』を振りかざす。防御膜を切り落とすと、追尾弾が襲う。この連携攻撃にニルスは少し本気を出し、弾を指で破壊した。その衝撃波がリカらを吹き飛ばした。
「まずはあいつの動きを停める。」
「使うんだな。」
【オン……アバラ……ウラ……マサラカド……ブレークソワカ】
親指を噛んで血を垂らし、腕に魔術印を刻む。そして地に手を付ける。棺桶が出現し扉が開く。そこには女性の人形が現れた。
【滅壊之聖母】
棺桶が消え、聖母はニルスを見ていた。
ー破壊構想曲第三極ー
【幻想の鎮魂歌】」
聖母が歌い始める。音波の魔力が部屋中に響き渡る。ニルスはそれを聞いてしまい、苦しみだした。聖母の歌はどんな攻撃も弾き狂わせる人形型オプションワークスである。リカが悪魔を祓う借金元帥の武器を参考にして製作した。それはマリアの声により作動する専用武器である。
「さ、流石ですね……。」
《風魔法》…【嘆き後の血栓】
歌を遮るため鼓膜に魔法を発動し、聞こえなくした。そして光魔法【裁きの柱】を聖母に向けて放つ。柱に呑み込まれた聖母だが破壊属性の盾で防いで消滅させた。
「おらぁ!」
「まったくやってくれますね。」
ふたりの連携攻撃に苦戦しているニルスだが、まだ本気を出していないようだった。リカのオプションブレードを掴み腹部を蹴るニルス。外に吹き飛ばされたリカ。この空間の外は湖が広がっていた。湖の上に着地しニルスを見つめる。ニルスはゆっくりと湖の上に着地する。余裕な表情であった。
「貴女たちでは私は倒せませんよ。」
「ふっ…。それはどうかな。」
「何を根拠に…!?」
ニルスの胸が刃に貫かれていた。ニルスの足下の影より気配を消していたシェリカによる援護で、心臓を突き刺したのだ。突入の際に影魔法でリカの足下に隠れており、ニルスが湖の上に降りてくるタイミングで影移動した。シェリカは突き刺したクナイをそのままにしリカの元へ戻る。
「どう?」
「ばっちりだ。」
「たく……囮も楽じゃないな。」
マリアも合流し、ニルスを見つめる。ニルスはクナイを抜こうとするがワイヤーが絡まり動くと深く沈んでいく。そして血を大量に吐くがその顔は何故か穏やかだった。
「ふふふ……ここまでやるとは思いませんでした。敬意を表して解放しましょう。」
ニルスが魔力を放出し始める。湖の水が凍り始める。角がもう一本生える。氷の尻尾と翼が出現する。
「私は太古の昔に途切れた氷結の一族の生まれでしてね。あまり外には出さないのですよ。それはですね……」
リカとマリアは何かを感じ取って防ぐ。がシェリカは反応が遅れ腹を貫かれてしまった。聖母は4本の尻尾で貫かれていた。
「「シェリカ!!」」
「ぇ?」
貫かれたシェリカは振り落とされ飛ばされる。マリアは必死に後を追い沈む前にシェリカをキャッチする。治療するにも、氷結魔法が邪魔して回復魔法か追い付かなかった。リカが近づき札を傷に当て回復させるがそれでも気休めにしかならなかった。
「これで大丈夫だろうがあっちをやることが先決だ。」
「あれチートだろ」
「…」
マリアは武装型オプションワークス【獄天使】
ワークスビット【嵐天】、オプションシールド【疾盾】を浮遊させターゲットマーカーを展開させる。尻尾が動き出すと弾にて軌道を剃らす。
「いく。」
リカも完全武装を解除し、和服型オプションワークス『陰陽』を換装する。札を取りだしばら蒔いた。そして呪文を唱える。
《覇王の枷"肉の紋様・万象・瞬き・影の名を冠す僕よ"
"真と偽""罰知らぬ仏の導きに僅かに祈りを立て"》
【雷天双破】
雷がニルスを襲う。防ごうとするが6本が落とされ3本で防ぐ。多少感電させることがてきた。
さらに呪文を唱える。
《光鳴の初動・糸車の覇者・鈴もて此を12に触れる
風は孤高に在らず》
【状殺鎖牢】
ニルスの尻尾及び身体を拘束する。破壊しようと試みるが魔力が練れなかった。それに気を取られたニルスに待機していたマリアがワークスビットに魔力を完全解放し貯める。そして放つ。
ニルスが巻き込まれ叫ぶ。イリスの名前を何度も呼び助けを求めるが来ず、鬼の力を吹き飛ばされた。
「はぁ、はぁ……」
マリアは魔力が尽きて武装が解除され膝を突く。リカが近づきポーションを差し出される。それを受け取ろうとしたとき瓶が割れた。倒したはずのニルスが立ち上がり、よろめきながら魔力を練っていた。
「わた、し、イリス様の……ために、」
立ったまま気を失った。ニルスのイリスに対する忠誠心は紛れもない本物であった。
マリアとリカはイリスらの最後の戦いを見届けることになる。