裏切りと、覚醒
一方学園内ではまだ沈静化はされておらず教師陣たちとイロハたちが必死に生徒たちを守りながら応戦していた。
守りながらの応戦は長年勤めていた教師陣でさせ、無理があるというものだ。そして防御壁が破られると一斉に構成員らが押し寄せてきた。そして乱戦となってしまった。
「く、数が……」
諦めかけた瞬間空から魔力弾が降り注ぎ構成員らを殲滅していった。教師陣たちはこの攻撃の主を知っていた。無茶苦茶な魔力弾を放て、正確に当てる生徒を
「ラルド・エルティーナか!」
「大丈夫っすか?先生?」
「全くお前は何処からやってくんだ。……だが助かった。」
「それであいつら貰っていいっすか?」
「守るのが我らの役目なんだがな?好きに暴れてこい。」
「了解~」
そしてラルドが刀型オプションワークス『旋』を抜き、足に術式を重ね合わせ踏み込む。構成員らをすり抜ける。後ろにいたラルドに気づき攻撃しようとしたとき、全構成員が吹き飛ばされた。
《特殊能力》【四刀修羅】
旋の特殊能力……四刀修羅は、時間を一時的に止め、体感時間は5秒程度だが実際には、約0.9秒しか経っていない。魔力量5000を刀に注ぎ込めることによって発動する。そしてラルドはすべて構成員を殲滅していった。凄まじい殺気を放つ敵がこちらに向かってきた。ラルドは男に向けて刀を振りかざした。だがラルドは何かを感じて旋にて防御するが、腹部を蹴られ、吹き飛ばされ瓦礫に埋もれた。瓦礫を吹き飛ばしすと、首を回しながら立ち上がった。
「勘のいいやつだ。いつもならこれで終わりなんだがな。」
「そりゃどーも!」
「甘い。」
《獣魔法》【ラステイリアの亀鎧】」
「なっ!」
ラステイリアとは大型鋼鉄の亀魔獣のこと。鎧に覆われ動きは遅いが奴が動けば砂漠となると言われる災害級に認定されている。
それに獣魔法とは魔獣の血を取り込む禁忌の人体実験により産み出された魔法とされている。
150年前に禁止されたと文献に記されていた。
ラルドは一旦後ろに下がる。『サイエンス』の作品が両断出来ないとなれば勝てないと思い込む。ラルドは負けず嫌いの人間だ。そう簡単には諦める訳にはいかなかった。懐からもうひとつのオプションワークスを取り出す。『戰』と呼ばれる小刀型オプションブレード。指の間に3つ挟み込んで変則4刀となる。
「いくよ。」
小刀を投げる。ラステイリアの鎧で弾かれ旋にて斬りかかる。それも弾かれる。
「解らないのか無駄ということを。」
「おじさんそんな余裕にしていていいの?」
「なにがだ?」
「その状態は防御特化の魔法でしょ?動けば遅いし攻撃もしてこないでどうやって戦うの?」
「ふん……この魔法を解除しなくてもな!」
《獣魔法》
【ベヒモスの重鎧】
【ハムバサムの脚鎧】
「同時に発動出来んだよ!」
ラステイリアの亀鎧を装備したまま次の魔法を装備した。ベヒモスの重鎧……大型魔獣ベヒモスとは大森林に生息する猪型の魔獣。草食魔獣を餌にする危険とは言えない魔獣だが、走る速度が桁違いに速い。
ハムバサムは砂漠に住む全身に毒がある災害級の魔獣。触れればその部位が死滅する有害に認定されている。
「へぇ…いいね!来なよ。」
「もう来ている。」
ラルドの目の前に迫ってきて拳が襲う。その拳を小刀にて防ぐ。魔力を帯びた刀身が紫に染まる。小刀を投げ捨て別の刀に持ちかえる。投げた小刀は地面に突き刺さる。
《弾道魔法》
【変化装甲弾】
圧縮した魔力弾を獣魔法の使い手であるケーニッヒに撃ち込んだ。避ける必要がないと思い込んだケーニッヒはそのまま攻撃を受け付けた。だが魔力弾は、ケーニッヒの亀鎧を削り取っていた。それに気づいたケーニッヒは拳で弾を殴り軌道を変えた。
「驚いたな魔力弾をそこまで操るとは……。」
「お喋りに付き合うつもりはないよ。」
《弾道合成魔法》
【変化装甲弾】
+
【焼夷装甲弾】
II
【散弾装甲弾】
拡散された魔力弾はケーニッヒに向かう。ケーニッヒは軌道を逸らすため上空に上がる。魔力弾もケーニッヒを応用に軌道を変え上昇する。
《獣魔法》【オワズワルトの魔糸壁】」
魔法攻撃を完全に無効する糸の防御壁を張った。散弾装甲は貫通することなく消え去った。ラルドはそれを待っていた。
【透過散弾装甲弾】
魔力弾がある場所にケーニッヒを誘導し誘い込み防御壁を張らせ密閉空間となった状態を作り上げケーニッヒはまともに魔力弾の雨を喰らった。防御糸が崩れると、左腕、片目を失ったケーニッヒが現れた。すべての鎧が解除されており生身の状態であった。
「がぁ……よくも……やってくれたな…。」
「へぇまだやる気なんだ。」
「餓鬼に殺られてはあの方に忠義が尽くせぬ……あの頃の私を救ってくださったあの方のおおおぉ!!」
《獣魔法・禁忌》【悪皇魔竜】
ケーニッヒが魔竜化する。100年前に絶滅した最悪の魔物。それが現れると町は壊滅し、動物たちは食い尽くされ討伐対象となった。さらに、その竜の鱗は魔法で出来ており高値で買い取られることがある。それを目的として騎士団らが名声があがると信じ名乗りをあげた。しかしその竜は強すぎて派遣された名のある騎士団や宮廷魔法師団は帰ってこなかった。勇者召喚により現れた異界の魔王となのる男に一夜にして絶滅させられ帰っていった。血すら現存去れておらず誰も知らずにいた。だがある男はその血を持っていたのだ。それを当時人体実験をしていたケーニッヒに打ち込んだ。
『どうだぁ!』
「ふーん斬りがいのあるね。そう来なくちゃ!」
ラルドは驚くところかやる気が上がり、制服の上着を投げ捨てた。ネクタイを緩めると羅刹と修羅を抜き構え脱力する。10本の戰を魔力糸で操りケーニッヒに向けて空に待機させる。
暫く静寂が続くかに思えたのだがケーニッヒの咆哮により再び戦闘が始まった。空を飛翔するケーニッヒにラルドは足に魔力を流して空を走る。ケーニッヒの爪がラルドに襲うが羅刹、修羅をクロスして防ぎ弾く。態勢を崩したケーニッヒに戰が攻撃を行う。その鱗は硬く、すべて弾かれてしまう。ラルドは『変化装甲弾』を放つ。尻尾でそれを消し去り、ラルドに攻撃を仕掛ける。ラルドは修羅にて尻尾を防ぐ。威力があり引きずられるがそれをとめる。
『くらえ。』
雷炎を吐き出すが、ラルドは慌てることもなく、羅刹にて打ち消していく。ケーニッヒに近づいて修羅を突き刺すと、鱗を貫いた。ケーニッヒはその痛さに暴れラルドを吹き飛ばした。ラルドは態勢を整えると魔法を発動した。
《結界能力》
【星天鎖縛陣】
ケーニッヒの廻りに弾かれた戰が、魔力糸を伝い動きを封じ込めた。これは戰の特殊能力である。あらゆる攻撃を動きを封じ込める能力を持っている。そして羅刹を突き刺すと魔力糸が羅刹まで伸びていく。
「フィナーレだ……!」
ラルドは修羅の鞘の頭に隠されているオプションワークス『碧楽』のビンを取り出して蓋を開ける。羅刹の柄に水滴を垂らすと、大規模な魔方陣が浮かび上がっていた。そして魔力糸を通してケーニッヒに伝わると大きな光を帯びて輝きに満ちた。その光が消え失せるとケーニッヒはそこには居なかった。そのかわりに鱗が消え失せずに落ちてきた。
「ふぅー終わったねぇ。」
ラルドはその場に座り込んで空を見上げた。そしてイロハらは学園最強の強さを見て驚きを隠せなかった。決して気を抜いていたわけではなかった。イロハの後ろにまだ構成員がいるのに気づかず喋っていた。そしてその剣はイロハを貫いた。
「ぇ?」
イロハは貫いた刃に視線を落とす。そして皆は動揺していた。イロハはその刃に見覚えがあった。そしてフレイが声をあげた。
「なにしてんだよ!リリィ!!」
イロハは後ろに視線を送ると、そこにな私の親友のリリアナ・ウォルスが微笑みながらそこに立っていた。
イロハの頭の中では混乱していた。親友のリリィが自分の体をレイピアで刺していたからだ。リリィは刃を抜き、血を振り払う。そして状況を理解したフレイが声をあげた。コウガは咄嗟に回復魔法を使い治そうと試みるが、傷は塞がらなかった。
「なにやってんだよお前は!!」
フレイがリリィの胸ぐらを掴もうとしたとき
《水悪魔法》【水吸弾】
水弾を放たれ、フレイは咄嗟に【火炎壁】にて防御した。水魔法なら火魔法は有利だと思っていたからだ。その思い込みの無惨にも破れ去った。火壁から水弾が蒸発せずに、吸収され威力の上がった水弾がフレイに直撃し、闘技場の壁まで吹き飛ばされた。大きなクレーターが出来上がり血まみれのフレイは気絶し倒れた。リンクはリリィへと攻撃しようと動き出そうとした時、拘束魔法にて縛り上げられた。そしてマリアはリリィの頭に銃口を突きつけオプションワークスのワークスビットを配置して逃げられないようにしていた。
「お前なにやったのか分かってるのか?」
「えぇ分かっていますよ。」
「なら!」
「これも組織の為……大義のためです。」
《水悪魔法》【彷徨う水月】」
銃口を突きつけたリリィが霧となり消えた。マリアの特殊能力にてリリィの居場所を見つけてそこに弾を放つ。魔法を解除し弾を防ぎ高台に立つ。リリィの姿が綻び始め、魔女へと成り代わっていた。
「私は夜明の魔剣No.3…コーネリア・ビストというわ。よろしくね坊やたち。」
「いつからだ?」
銃口をコーネリアに向けたままそう訪ねた。コーネリアは普通に答える。
「いつからって最初からよ…大変だったわよこの子の信用を得るのは何年掛かったことか。」
「イロハをみんなを騙してたのか?それにウォルス家も。」
「えぇそうよ…だけどウォルス家は昔から無かったわよ。栞魔法で全国民にその意識を挟み込んで改変してたからね。」
大規模な魔法を長年に渡って発動させるには無理がある。誰にもそれを認識させるこもなく今までやってのけるなどそんな魔法も聞いたこともない。
「あぁ魔法を説けと言うのでしょ?ほら解いたわよ」
コーネリアが指を鳴らすと、魔法は解除され、異世界から来た者以外は頭を抱えだした。リリアナとウォルス家という貴族は端から存在してないと記憶が戻っていた。
「もう良いかしら?あら目覚めそうね。」
コーネリアがイロハに視線を送ると異変が起きていた。黒い霧がイロハを覆い始める。救護に当たっていたコウガは異変を感じてイロハから離れる。黒い霧が球体となり渦巻いていた。
イロハの意識の中ではリリィ…親友に裏切られたことがショックがいっぱいだった。黒い靄が現れた。
『貴女は力を欲しているか?』
別に力は欲しくはなかった。欲しかったのは別の何かだ。だけどいまはもうどうでも良くなっていた。
今まで接してくれた皆……
私を強くしてくれた皆…………
私を平等に接してくれた皆…………
私を慕ってくれた彼も…
……もうこの世界はうんざりだ。
……もう助けられるのは嫌。
……もう守られるのは嫌だ
こんな街なんて……国なんて……私なんて
『無くなってしまえ!!』
『それが貴女の望みならば手を取れ』
靄が手を差し出した。イロハはゆっくりと手を差し伸べるが一瞬躊躇してしまった。イツキの顔が浮かび上がったが、そのイツキの顔も張り切って手を差し伸べてしまった。
『我の力を受け継ぐがよい』
そしてイロハはその靄に取り込まれてしまった。
イロハが目を開けゆっくりと立ち上がる。塞がらなかった傷は無くなり、俯いていた。
それを見たマリアは安堵した。コウガはイロハに駆け寄り大事がないか確かめようとしたとき、腹部に痛みを感じた。コウガは下を向くと、腹を貫かれていた。
『近寄るではない人間が……。穢れるではないか。』
「なぁ……にぃ……。」
腕を抜き振るうと鮮血が飛び散った。コウガは薄れゆく意識の中、回復魔法を使おうとしたが間に合わず倒れ意識を失った。だが勇者の加護が在るとはいえ自動で少しずつ回復していくが、重症には変わりはなかった。
イロハの横にコーネリアが降りてきた。
「お久しぶりです姫。」
『うむさて……』
イロハは空へと上がると両手を広げ魔力を集めだした。学園を消滅させるほどの威力がある魔力弾を待機していた。重軽傷者がいるため逃げ出せずに絶望した表情を浮かべる生徒たち
「生徒たちに手を出すのは許さないよ。」
イロハらを拘束魔法にて縛り上げられた。フィフス学園長だった。黒服装を身に纏う彼だが、構成員らの返り血を浴び真っ赤に染まっていた。いつもはへらへらしている彼だが、真顔でイロハらを見ていた。
『おや誰かと思えば…フィフスの坊やではないか』
「そういう君は変わらないね君は……伊勢童子【イリス】」
『久しいのそう呼ばれるのは……何百年ぶりか。』
「さてと君にはご退場願おうかイリス……イロハ君の体から出ていって貰おうか!」
フィフスは空を駆け上がりイロハに向かう。イリスは拘束魔法をぶち破りフィフスと衝突する。衝撃波が生徒たちを襲う。
【白炎障壁】
白き炎で生徒たちを守る。これで気にせず戦えるので全力を出す。
二人は動きだす。残像が写りながら戦い始める。フィフスもここで本調子ではないが、生徒を守りながらイリスと戦うのは骨が折れる。調子を取り戻す前に倒してしまおうと考えていた。
《鬼魔法》【羅生門】
フィフスの目の前に門が出現する。そして門が開くと無数の鬼が出てくる。フィフスは人差し指を鬼たちに向ける。収縮された赤黒い魔力が集まり出して放たれる。その魔力は鬼たちを殲滅していく。しかし仕留め損ねた鬼らはフィフスに襲いかかる。その鬼らは銃弾の雨に貫かれ死滅した。その視線の先にはマリアが援護していた。ワークスビット【双星】を展開させ鬼の出現を阻止していた。
「行って下さい学園長ここは俺が!」
「任せるよマリア君。」
鬼らを踏み台にして駆け上がるとイリスとぶつかり合う。本調子でないイリスは学園長の攻撃を弾くばかりでいた。
「どうしたの?」
「いや。」
《鬼魔法》…【羅武門】
違う門が出現する。門が開くと次は無数の武器が顔を出していた。イリスの合図で武器が射出される。
フィフス学園長は微動だにせず武器に突っ込んでいく。武器はフィフスの手前で停止して落ちていく。フィフスは脚に魔力を纏わせてイリスを蹴り吹き飛ぶ。フィフスは右手に赤い魔力を左手に黄色の魔力を放出し、バランスを保ちながら合わせていく。それをイリスに照準を定め構える。膨大な黄色の魔力がイリスに向かって放たれる。イリスは防御膜を張り防ぐが、その防御膜が破壊され、大きな稲妻を発生させながら爆発した。煙が充満し、は呑湖ではなかった。それはコーネリアだった。水悪魔法にてイリスに成り代わっていて身代わりとなった。フィフスは特殊な眼で上空に膨大な魔法を展開しているイリスを見つけた。
『コーネリアはよくやったよ駒として…安心して眠れ……。』
[全てを消し去る罪悪の星・無へと返す災になれ]
《鬼魔法》
【滅却星鬼】
強力な魔法を学園に向けて放った。フィフスならば避けられるが、生徒たちを巻き込むわけにはいかなかった。両手を重ねて魔方陣を展開させる。
威力が桁違いで、左腕を吹き飛ばしてでも防ぐことができた。ボロボロになったフィフスは落下していった。それを見たイリスはニルスの魔力を感じて移動した。そして雨が降り始め、雨に打たれてマリアは自分が情けないと嘆いた。ほかの皆は痛みを堪えながら治療を行っていた。