敗北
次の日……皆は浜辺に集まっていた。
「これより君らの特別特訓に入る。各々の長所を生かす。」
イツキの言葉に皆が引き締まった顔をする。
浜辺に札をばら撒くと、景色が一変する。
「リカ頼む。」
「はいよ。」
リカは能力を使い、印を素早く組み合わせ手を地に付ける。
「階層精製!」
すると下に階段が形成された。この能力は第1階層から200階層まで形成できる。難易度は制作者によって決められる。倒すことによって次に進み、10階層ごとに階層ボスが現れる。そしてみんなは階層に入っていった。残った俺は座禅を始め、自然エネルギーを取り込んで瞑想を始めた。
イツキは途中で瞑想を取りやめて、空を見上げて
「出てこい。さっきから見ているやつ」
その言葉を言うと、空からスーツをきたハザマが降りてきた。
「何時から気づいてはったん?」
「模擬戦からな。」
「気配を消してたつもりやったんだけどな」
「嘘つけ。駄々もれだったじゃないか」
へらへら笑うハザマを気味が悪いと思っていた。隙だらけなのに今攻撃したら敵わないと警鐘を鳴らしてイザナギ・イサナミを出現して構える。
「貴様は誰だ?」
「僕ですか?僕ですね魔人9騎将の1人……ハザマって言いますぅ。お見知りおきを。」
またその言葉が出てきたと思ったイツキだが、ここで倒すほうが得策だと考え、瞬歩で背後に回り込んで先制攻撃としてハザマの首もとにイサナミを振るう。完全に死角だったのだか避けられた。
ハザマはイツキの距離を離れる。ハザマはへらへらと、いつでもどうぞと呼び掛けるように笑っている。
イツキにはそれが気にくわなかった。そこで神速の突きを放つ。
ー天音剣術拾弌ノ型ー
【神突牙】
でハザマの心臓に向けて突き刺す。ハザマは指一本で受け止めた。神速の抜刀術を止められたことに驚いたイツキだった。それを見たハザマは
「うーん想像とこんなに違うもんやなこれでどうや?」
と言い指を鳴らすとイツキの全身から血が吹き出した。それも斬り傷とともに……
「な、なにを、した?」
「何したってなに言うとんの?斬ったに違いありませんの」
「いつ」
イツキは視覚聴覚強化を行っており、常人のはるか5倍の速度で捉えているため、気づかないにしてはおかしかった。しかも完全防御の札の完治を通り抜けてだ。札は正常に稼働している。何故?
「そうか君は気付いておらんのですか……未来といえばわかりますか?」
「未来だと?」
「それが僕の能力です。未来攻撃って言いますぅ種は教えないですけどね」
未来攻撃なんてそんな馬鹿な話が在るものかと思ったがイツキは冷静を取り戻すと妖力を解放した。勝てないと悟ったカズトは全身全霊をもってこいつを倒そうと解放したのだ。妖力を目の当たりにしたハザマは余裕の表情をしていた。
ならばと最強の式神【土蜘蛛】を召喚した。
《なんだ〜呼び出してヨォ?ホウ底にいるのはハザマじゃねぇか。楽しもうぜ!》
土蜘蛛を召喚したが、何故ハザマのことを知っているのかは後にして、土蜘蛛と連携して倒すことにした。
「土蜘蛛!やるぞ!」
《わなぁこたぁしらねぇよ。俺の好きにさせてもラァぜ!》
土蜘蛛は俺の話を無視してハザマへと突っ込んでいった。6本ある腕を振るいハザマへと攻撃するが当たらない。土蜘蛛は嬉しそうに振るう拳をさらに加速していく。
《オラオラオラ!》
「しっかし、いつ見てもあんさんは好きでんなぁ?」
口から糸を吐いてハザマを拘束した。それをみたイツキはハザマ目掛けて走り出した。
しかし糸の拘束してたはずのハザマはそこにはいなかった。ハザマの情報体を読み取ろうにも何かが防いでいたので読み取れなかった。
「そんだけですの?」
なにやっても攻撃が当たらないカズトは苛立ちを示した。追尾のする妖力の槍をハザマに向けて放つ。ハザマの姿が消えると槍はハザマの位置を捉え追尾し始めた。
「よう考えたようやな?甘いよ?」
とハザマは避けるの止めると妖力槍が襲いかかる。がハザマに到達しようとした瞬間、妖力槍が砕け散った。
ー天音流剣術 無ノ型ー
幻 天 日 剣
炎槍を囮とし自ら蜃気楼を作り、妖力の足場を作り、そこで加速し、ハザマの背後に回り込んだ。イツキがこの世界に来てから編み出した抜刀術をする。この技は敵の急所を抜いたと同時に着く抜刀の極意を身につけた。
ハザマは避けることができず抜刀術をくらう。そして吹き飛んだ。だがイツキには違和感を感じた。その違和感とは……
その目線で追うと見えないはずの妖力回路がズタズタに破壊されていたイツキは目を見開いた。妖力回路を気づかれず破壊されるとは……さらに自動回復機能も作動せずもう出来ずにいた。
さらにハザマに視線を送ると、妖力回路が浮かんでいた。その数100を超えていた。傷も消えておりフェイクだった。
「あれこれで終わりですの?」
「まだ終わってねぇ!滅せよ六道!なにぃ!?」
リクを変化しようとしたとき、指輪状態のリクも砕け散った。武器を失ったイツキは呆然としていた。
「あらら大丈夫ですの?」
ゆっくりと砂浜に降りてくる。ハザマはへらへらしながらイツキを見ていた。
《おら!無視すんじゃぁねぇぞ!》
「無視してへんよ?」
ハザマの背後から土蜘蛛が傷だらけになりながらも拳を振り上げる。ハザマが指を鳴らすと土蜘蛛はズタズタに切り裂かれて倒れてしまった。
「はぁぁぁぁぁぁあ!」
この隙を見逃さず、妖力回路を破壊されているにも関わらず無理やり妖力を高めて、出来が悪い刀を出して全属性の妖力を灯す。それに耐えきれず亀裂が入り始める。イツキは我を忘れてしまったのだ。
「詰まらへんなぁ。これで終いやな。去ね」
ー未来改変ー
その言葉にイツキは力尽き、武器である六道をも破壊され、左腕が消滅しており胸が貫かれていた。
イツキの目に光が消え砂浜に倒れ込んだ。意識は失っていた。
「あーあ殺ってもうたぁ……なんか騒がしいな派手にやり過ぎたのかね。聞こえないだろうけど生きてたらまた楽しもうや。」
ハザマは土蜘蛛に近づいて触る。土蜘蛛は札へと変化した。この札は強制的に使役する刻印が描かれている。強力な魔物もこれさえあれば使役できてしまう。スッと砂浜から姿を消すと異変を感じたアルさんとエルザさんがやって来た。この惨状を見て一瞬怯んだが状況を把握しイツキに回復魔法を掛けた。が治らなかった。
アルさんが光の最上級魔法『光聖域』を発動する。この魔法は危篤状態の者の死を送らせることができる。これは医者がいない戦場で死を送らせてその間に医者を呼び治癒魔法をかける。アルさんは自分では無理だと感じ、修行中のリカらの帰還を待つしかなかった。
その5時間後にようやく修行を一旦終えたイロハらが戻ってきた。エルザの顔を見て異変に思ったイロハとリカは直ぐさまイツキのほうに向かった。
到着したときには光聖域が弱まり魔力が尽きそうなアルさんが必死に張っていたためそれを辞めさせるとリカがありとあらゆる手段で試みるが反応はなかった。
最後の手段として『◯◯』をしてやり、一命を取り止めた。最強の式神と最強の武器が破壊され完全な敗北であった。