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皇帝と蜘蛛と土蜘蛛

 イツキの合図でアデル達は飛び出した。

 しかしイツキだけは違和感を…感じていた……。


(おかしい、あまりに無防備過ぎる……。いくら王たちで固めても、すぐに倒される可能性がある。なのに何故平然としてられるんだ?)


 イツキは肉体強化の妖術を脚に集め高速移動をしながらそう思っていた。

 心臓が早鐘を打ち、思考が狭まっていくが、心の隅にその疑問が浮かんできた。おかしいと……ゴブリンだからと言ってしまえばそれまでだが、群れの中心に居るはずのボスが何故、座ったまま動かない。

 好機と思って飛び出したが、その疑問に対する答えが見つからないままイツキの前に小鬼皇帝の全容が見えてきた。


 異様だった、普通のゴブリンと違う大きさだった上位小鬼よりも身体が大きくまるで獣鬼並みだった、それよりも異形なのは脚と手が余計に2脚と2腕ついている、足が合計6本と腕が6本だ、それに異常に下半身というかお腹が膨れていた。それに全体に赤黒く変色していて、通常の小鬼の色よりもかなり変わっていた。まさに両面宿儺のようだった。


 そのまま、側近の王様小鬼にレアが突っ込んでいく。

 俊敏性が高い細剣士なだけに右手にレイピアを持ちそのまま姿勢を低くして森の木々を縫うようにして疾風の如ごとく近づく………。


 ――突然、小鬼皇帝が目を開き、こちらを向いて来る。

 あと少しという所でいきなりだ、直前まで辺りを警戒していない完全に不意打ちに近い形をとっていたのだが――気がつかれた。


 レアが後10m程近づいた所で、そのまま皇帝は小鬼将軍に命令を出し、レアの向かってくる方向から反対に飛んだ。


「なんで!」

 レアは思わず声を上げる。

「レア!そのまま追撃しろ!」


 すかさずアデルが指示を出した。

 もう大声でなりふり構わずにそう言い飛ばす。


《細剣術》【ラービラーテル】



 そのままレアはレイピアに魔力を纏い将軍に向けて突っ込むが、小鬼将軍は素早く横に跳んだ。

 レアの突きをそのままかわした。


「嘘!!」――レアは驚いた声をあげた。


「ギュアァァァァァ!」

小鬼皇帝は何かを叫ぶ。すると影から新たな小鬼が出現した。

 そいつはそのまま手を突き出して、その手のひらから何か白い物をレアに飛ばした。そのまま白く細いものがレアの左手に付く。


「な、何これ…」

 レアは驚き動きを止めてしまった。しかもじわじわと何かが腕に侵食してくるのがわかる。


「そのまま動くなよ。」

《氷魔法》【氷結アイシング

アデルがそう言うと、縄を凍らせて砕けさせた。


「レア!大丈夫かい!」

クレアは後ろから駆け寄った。


「大丈夫、問題無い。少し腕に違和感があるだけ。」

 戦闘体勢は崩さずにそう言うレアだが顔は少し引き攣っていた。

 

「それより、仲間を呼んだぞ、全員警戒してくれ!」

 そう言う、とても厳しい顔をしていた。


 それもそうだった、予定が完全に狂ってしまった。敵が予想を上回る警戒能力を持っていた事に驚いて最初の一手を完全に誤ってしまった。

 一撃必殺即離脱の予定がここに潰えてしまい、小鬼皇帝は座ったままだが、影からぞろぞろと小鬼と獣鬼数匹が周りを囲い始めていた。

 完全に警戒しながら、その異形の身体をイツキ達にむけている。その顔もかなり異常だった、小鬼からかけ離れ、眼が余計に3つ付いていた。


 ――そう、いうなれば蜘蛛小鬼ゴブリンネクロムと言った風体だった。


「ウゲー、気持ち悪い、アレを倒さないと皇帝に近づかないじゃない。」

 レアはもの凄く顔を歪ませた。

「レアすぐに次の行動」

アデルは焦り叫んだ。

 どうする、どうする、どうする――と顔に書いてある程焦るアデル、戦力差は絶望的に近い、周りにいるだけで100匹近い子鬼達がこちらにいる、それに獣鬼も。


「周囲警戒。俺は蜘蛛と皇帝をやる。アデルたちはその他を討伐しろ。」

イツキはそう命令を下す。

 すると、「あいよ」、「わかった」、「よし!」と言う声の返事のあと素早く背中合わせになり四方を警戒する。


「妙案があるのか?」

「あぁ。蜘蛛には蜘蛛をぶつける。アデルたちは計画通りに進め。」


「ギャウ、ギャウ!!」

小鬼皇帝は叫ぶ。

 すると、小鬼達が陣形を広げ、イツキ達を右に左に移動し始めた。


「チッ、少しはオツムがまわるじゃないか」

「クレアさん、これって小鬼皇帝の指示?」

「まぁまぁ、焦るなって、みんなは俺が守るよっと。誰も死なせない。」


 周囲を警戒しながら、アデル、レア、クレアはそれぞれ会話になっていない、言葉をそれぞれが発する、話しながら武器を握り反撃の体勢をとっていく。

 じりじりと距離を詰めていく小鬼達。


 するとレアが……。


「………。精霊たちよ。あの者を襲え!」

《精霊魔法》【踊り狂う舞踏】


 発音が出来ない程の高度な言語を唱えると、辺りの木々がザワザワと揺れ始める。そして地面から植物の根が飛び出し始めた。

 それが周囲いる小鬼達を襲い始める。


 レアが唱えた魔法それは

森精霊魔魔法エルフエンチャント

と呼ばれるエルフにしか出来ないと言われた魔法だった。

 木々に自分の精神を使わして操る魔法だが……。

「これ、あんまり長く続かないから、急いでね」

 レアはそう言って剣を構え精神を集中させている。

 レアの魔法を合図にしたように、小鬼達もアデルを襲い始めた。


***

イツキは、小鬼皇帝と小鬼蜘蛛と対峙する。イツキはある札を取り出して、提唱する。黒い妖気が流れ、札を投げる。札から般若のお面のような顔が現れ、腕が6本生えている異形の魔物が現れた。


[久しぶりぃに呼んでぇくれたなぁイツキ!しかしここはどこだぁ?まぁいい俺と殺し合おうぜ!]

「それは後だ。【土蜘蛛つちぐも】まずはあれを殺してからだ。」

[ん〜あぁ!ありゃぁ遣り甲斐がありそぉだなぁ!]


土蜘蛛…平安頃より退魔師を数多殺してきた妖怪だ。こいつは戦闘狂で強い奴にしか興味はなく、強ければ従うそんな妖怪だ。地球にいたころはこいつを服従させようと何日も戦闘していたが、服従できずにいた。戦闘力があがった今なら服従できると思い召喚した。


そんな土蜘蛛は拳を打ち付けて踊るように飛び上がっていた。そして土蜘蛛の姿がぶれていつのまにか、小鬼蜘蛛をぶっ飛ばしていた。


[おらおらどうしたぁ!そんなもんじゃあねぇだろぅ!]


土蜘蛛は嬉ろうな声を出しながら連打し続けていた。イツキは刀を抜いて皇帝を見ながら構えた。皇帝は椅子から立ち上がり大きな大剣と盾を構えていた。



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