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戦闘II

 盾王小鬼の攻撃を何とか耐え、疲弊しているマリアたちは、ゴブリン達を打ち取っていく。

 始めは順調だったが、さすがに人数差が倍もあると小鬼といえども梃子摺てこずっている。

 ベテランを始めとする前衛陣も奮闘して多くの小鬼を抑えているが徐々に脇に漏れ出した敵の排除に手間取り始めていた。

 防柵で小鬼達の進撃を阻害しているとはいえ中衛40人程度ではその処理にも手間取り始めていた。


(数が多い、任されたとはいえ…さすがに無理があるのか……チクショウが! )

 上がらない腕を動かして、迫り来る小鬼3匹の眉間を撃ち抜いていく。

 返り血も浴びても気にしなくなっていた、それより戦況をよく読んで適切な対応を執る事に尽力していく。次第に彼の動きも鈍り始め傷ができ始める。


「ちぃ、こっちの数が足りないぞ、急いで援護にまわれ!」

 すぐに指示を飛ばして戦場のバランスをとっていく。

 素早く辺りを見回し状況の確認を行うマリア。

(ベテラン達はやってくれている。だいぶ抑え込んでいる、が…怪我をした奴もいる……、ちくしょうジリ貧だな。こいつは厳しいか!)

 マリアはそう思いながら、馬鹿貴族ポンコツを思っていた。あいつか少しでも兵士を生かした戦い方をすれば活路があったと思っている。

(それに、兵士共も戻って来ないぞ、そのまま逃げやがったな、こりゃ……)

 怒りの表情のまま、骸福を双剣へと移行し、襲って来た小鬼数匹を横薙ぎの一閃で始末する。


「頼むぜ、イツキ……」

 マリアは名前を口にする。

 今回の特攻作戦を発案した者の名を……。


 マリアはイツキの言っていた事を思い出していた。


 ―― 《回想》

「この戦い、このままやってもこちらが疲労が溜まり、やがては潰させるだけだ。」

「じゃあ、どうするんだ? 」

「奴等の頭を少人数で叩く!」

「簡単に言ってくれるな。しかしどうやって?」

「なに、簡単だ。あれを使う。あれはまだ掌握してないがな。」

「おいまさか…奴を呼ぶ気か?やめとけ。」

「忘れたか?俺は不可能を可能にする男だ。」

「いや、それ確実に死ぬパターンだよな?」

「……まぁ、そこは俺の目利きの腕を信用してくれって……」

 最後はおどけた表情で話しているイツキを思い出す。


(お前の目利きを信じるぞ、イツキ…)

 そうしてマリアは戦場に向き直り、盾王小鬼に向かって走り出した。

盾王は小鬼たちに命令し、マリアにむけて矢を放つ。マリアは矢が刺さるが、お構いなしに盾王の懐に入る。


《天音無双剣…三式》【天骸招来】


骸福を振るうと無数の骸の魂が盾王に目掛けて迫る。盾王は魔法砲を発射して骸を排除しながらマリアを消し去ろうとする。


《天音無双流…讀式》【狂乱天戟】


マリアはこの魔法を避けられなかった。避ければ仲間に被害が及ぶ。マリアは身体強化して骸福を素早く振るい魔法砲を切り裂いていく。しかし両方から小鬼が現れ腰に短刀を刺されてしまった。それにより力が弱まり、魔法砲が直撃し砂塵がまった。

砂塵が晴れると骸福を構えたまま、血まみれで気絶しているマリアがいた。

盾王はまだ生きていたのかと驚きを見せたが、もう一度魔法砲を発射させようとしていた。そして魔法砲を発射し、マリアを消し飛ばそうと思えた。上空から一筋の光が魔法砲を弾き飛ばした。現れたのは洋装軍服に身に纏ったコウガがいた。


「ダチに何しようとしてんだ?あぁ?」


盾王はもう一度発射させようと構えたが、コウガそこには居なく、目の前に居たのだ。


「遅せぇよ。いろいろと。」

《無音歩法》【虚歩うつろ

《天然理心流》【無明剣むみょうけん・乱】


篭手、胴、面と三回に渡って素早い突きを繰り返し、引く度に横に払う技。引く事によって刀の鎬で相手に深い傷を与える事が出来る。見ている者には、あわせて一つの突きにしか見えないほど素早い。これを乱れ打ちし盾王を細切りにして絶命させた。

憑依を解いたコウガはアルトリアに憑依し、回復させる鞘をマリアの胸に当てて治癒させて寝かせておいた。コウガは結界を貼り、移動を開始した。


***


 イロハとリカは後衛の陣で敵と相対していた。

 気持ち悪い程の小鬼の群れと獣鬼、大鎌王小鬼デススライサーに魔法を発動させていく。

 狙いを定めなくても必ず当たっていた。


《風魔法》【風刃弾エアーバレット


 そう言って、前衛の向こう側に無数の風の刃を飛ばしていった。

小鬼達が血を噴き出し倒れていくのを確認するが、すぐに次の小鬼がその場を埋めていく。

 魔力も身体に感じる量も乏とぼしくなっていた。

(あと……何発撃てる)

 徐々に息が上がり、重たくなる身体に自分で奮ふるい立たせながら魔法を行使してきたが、さすがに無限に撃てる訳ではない。

 周りを見ると、“魔力回復薬”を飲みながら必死に魔法を行使している者ばかりだった。


 早い話が打ち止めに近かった、魔法が打てなければ一般人と何ら変わりない、非力で殺傷武器も扱えない者に変わってしまう、剣士や魔闘士との存在と違うのだった。


(あぁん、もう…多い!)

 息を整えながらイロハは必至だった。

 魔力を体内で練り上げて刀に集めるように集中する。

しかし、小鬼の群れが防衛陣の脇にまで到達し、そのまま後衛まで襲いかかってくる。

 前衛の手薄になった所を補助しようとして両脇まで人が足りていなかった。


「誰か! 後衛の守りに入れ! 横から来たぞ!」

 命令を飛ばすが人がいなかったため指揮系統はめちゃくちゃであり、簡単に侵入を許してしまう。

 そのまま小鬼と獣鬼の集団がイロハ達のいる後衛に襲う為にむかっている。


「ヒャッハァぁ!!」

 リカが雄叫びを上げながら小鬼の群れに突っ込んでいく。


 ――[ジャァァク!]


 目の前の地面が盛り上がり細かい草針の槍が小鬼達の身体を突き刺して倒していく。

 断末魔を上げて絶命していくが、獣鬼トロールだけは致命傷を免れた。


 そのまま突撃を続けていく……。


《草魔法》【草光斬スラッシュ


 リカが離れた所から草の剣を振り抜くと、獣鬼の首が飛んで身体がその場に血の雨を降らせながら崩れ落ちた。――


 リカのオリジナルスキルの1つ『草光斬』は草属性を剣に纏わせて剣の斬撃距離を伸ばす技だった。切れ味も鍛錬と魔力操作で上がる剣士独特のモノだった。


「大丈夫か〜?」

 リカは声をかける。

 その声に反応する冒険者達、皆「大丈夫だ!」と言って返事を返す。

「お前達は少し休め、俺がでる。」

 そう、自信満々でリカは言った、そしてそのまま前線に戻っていく。


「さて。片付けるか。」

《草終末魔法》【草神之骸ソルスフィア


生えている草が小鬼や大鎌王小鬼たちの脚を絡めていく。小鬼たちは必死に抵抗するが、やがて身体全体を包んでいき草のオブジェが出来上がった。この魔法に対抗できる手段は無いに等しい。全てをも飲み込む怪物のような魔法である。


※※※


 イツキ達はそのまま静かに進んでいく。

 そして急に横にいる冒険者たちにハンドサインを送り停止させる。

 その行動に一同の動きも止まった。

 は素早く後ろに手で合図を送り茂しげみに移動しながら背を低くするように合図を出す、そしてゆっくりと手で進行方向の先を指した。


 そこには小鬼の群れと獣鬼数匹、それを守るように並ぶ大剣小鬼たちと玉座に座り異様で大型の小鬼が見えた。

 イツキ達との距離は目測で50m弱あった。


 イツキはそのまま集まるように合図する。

「あの玉座に座るのが小鬼皇帝ゴブリンカイザーだと思うが……」

 イツキは小声で話し出す。

「…確かに初めて見る異形だな。一発で変異種だとわかった。」

 ベテランの人。アデルが小声のまま話した。

「…でも、待って。ちょっとここから一撃でやるの?」

 アデルの相棒であるレアも当然小声で話す。

「…確かにレアの言う通りだ。ここから相手は丸見えだけど気がつかれずに殺せるか?」

 アデルも小声で話す。

「10秒ちょっとか……、油断してれば楽勝なんだが…。」

 

「それでも、やるしか無い、行くぞ。」


 イツキは決意を固めた声でそう言った。

 その言葉に静かに頷いた。


「じゃあ、合図する、そしたら飛び出してくれ、お前たちは雑兵を。アデル、レアは大剣持ちを。俺は小鬼皇帝を狙う。」

 イツキの言葉にアデル達はバラける。


 ―― そして。


「3……2……1……、いけ!」

 イツキの合図とともに全員が、草むらから飛び出てくる。


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