迎撃
王国兵士が森の中に入って数十分後、平原に置いて行かれた冒険者達は初めの場所から動かないでいた。
防衛陣地で大人しく事の成行を見守っていた。
追いかけても追いつけないのは分かっていたからだった。
そして、暫くすると初めに森から響いた、けたたましい怒声が……今は悲鳴に変わっている事に冒険者全員が気が付いている。
「おい、この“煌やかで下品な悲鳴”はあの騎士団長か?」
リカは近くにいるイツキに訊いた
「いや、違うな、この悲鳴は小鬼だな」
イツキは答える。
イツキ達は王国兵士が森に突入した後、周りを警戒している。目を開けたコウガが刀を抜き、駆け出して森へと飛んでいった。
「この悲鳴はコウガにやられたね。」
溜息混じりにマリアが断言する。他の冒険者達も同じ様に王国軍の状態を森の奥から木霊のように聞こえてくる悲鳴から察してした。
多分、あっちは壊滅しているだろうと……
しかし周りを見渡すと小鬼の姿がない。イツキはリクを発動して、リカは千変万化を変化させ眼鏡になる。
ー撃ち放て六道ー
《地獄道・八熱》【大焦熱】
ー凍れ六道ー
《地獄道・八寒》【摩訶鉢特摩】
ー千変万化ー
《幻惑の魔レンズ》
「やはり可笑しいと思ったら、幻術で惑わされている。奴らの中に術師がいる。」
「了解。」
リカが幻術にやる幻覚を見せされていると看板し、イツキは草原を火の海にした。地から火柱がいくつも噴き出してまさに地獄のようだった。さらに吹雪が起きて辺り銀世界となった。幻術が解かれたのか小鬼の群れで草原ではなくなっていた。小鬼たちは凍っていたが上位種である【王種・獣鬼・大鬼・雪鬼など】がこちらに向かってくる。
凍っている小鬼に対して呪文をかけて解凍している小鬼もいたが、そいつらはマリアが長距離狙撃で数を減らしていく。
「さぁ!祭りだー。」
フレイは拳を打ち付けて、叫びながら丘から飛び降りて小鬼の群れへと両手に炎を噴射しながら向かっていく。遅れて頭を抱えていたグレンもついて行く。
《《王の噴炎脚剣】
高速移動しながら回転蹴りをして小鬼たちを吹き飛ばしていく。弓を構える小鬼たちが一斉に矢を放つ。
【氷王の城壁防衛】
グレンは拳を構えて、氷の城壁作り、矢から身を守り次の態勢へと移る。
【炎王の怒号】
【氷王の暴雪脚】
《合成魔法》
【氷炎王の氷炎地獄】
フレイは大きく息を吸い、炎の吐息を噴射して辺りを一掃する。グレンは冷たい氷の風を吹雪かせ凍らせる。炎と氷の区域が出来上がり地獄のように小鬼たちを葬っていく。
フレイは笑いながらさらに奥に進んでいき、グレンはフレイの暴走を止めるために着いて行った。
「楽しそうだな。フレイは。」
「俺たちも準備後に行くぞ。
魔法隊!迎撃魔法準備。
盾隊!遠距離からの攻撃防御態勢。
前衛!大型小鬼迎撃。
中衛・後衛!回復専念及び防衛戦突破後の迎撃。
」
「迎撃準備―――――!!」
イツキは冒険者全体に響く程の声を上げる。
その声に周りの緊張感が増していく……。
前衛の冒険者達が盾を構え、武器に力を込めている、中衛の冒険者達は武器を抜いて身構える。
「敵を十分に引きつけろ、合図を待て――!!」
イツキのその言葉に後衛の冒険者はテントへと戻り救護体制を整え、魔術師は手を突き出して集中し、魔法提唱の準備を始める。
そして、小鬼たちが迫り、次第に射線ができる。
「放て――――――――――!」
イツキは全てを確認して号令をかけた。