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秘密裏の相談

 イツキはギルドの代表として作戦開始前に挨拶あいさつに行っていた、そこで今回の小鬼皇帝討伐作戦の指揮官である王国騎士団団長の『ウザイル・ギルバート』と言う名前の貴族に会って話をして、その際、「君達は今回後衛に回れ」と言う内と、「作戦に口出しをするな!」と、「率いるのは勇者さまだ。お前たちは邪魔だ。」

言う内容の“熱烈な激励げきれい”を頂いた。

 そのまま何も意見も聞かず出ていく時に「カネの亡者共が!」と“お褒めの言葉”を貰もらった。

コウガは何も言わなかったが、【好きにしていい。】という目で見ていたため、俺はこれ以上何も言う必要がなかった。


「そして俺は今、その事を忘れない用にここで復唱していたわけだ。」

 と、おどけた顔のまま、イロハ達に不貞腐ふてくされている理由を説明してくれた。


「そいつは、随分ずいぶんと“アレ”な奴だな……」


 イツキの説明を聞いて、フレイは怒りを覚えていた。

 ウザイルと言うヤツは随分と自尊心じそんしんが高く、我儘わがままな奴だとわかるには十分な内容だった。


「フレイ…そいつは若い奴なのか?」

「いや……、初陣の貴族の坊ちゃんって感じだな、横に壮年そうねんの騎士のジイさんがいたけど多分お付きの奴だ。じいさんの方が数倍強い。奴は飾りだよ。」

「そうか……」

 イツキは黙ったまま腕を組んで考えている。


「ねぇ、イツキ、少し…聞きたいんだけど、何でさっき『作戦の場所が』とか言っていたの?」

 突然横から、イロハは悩んでいるイツキに訊きく。

「…ン! わかんないのか? ……そういえば、戦場は初めてだっけ?」

「……そうだけど、こんな大規模作戦初めてだから……。」

「……そうだったな、説明してやるよ、地図借りるぞ。」

 そう言うと、「どうぞ、どうぞ」と言って許可してくれた。

 イツキはそのまま机の上にある地図を取り出して見せた。


「いいか?草原は一見普通の戦場だが……迎撃しやすい所があるんだ。」

 イツキがそう言うと今指している地図の上から下に移動する。


「ここが、渓谷のように道幅が狭いから最適だけど……。」

「草原じゃいけないの?」

「別にいいが俺達に何も有利に働かないだろ、見晴らしがいいだけだし、そう考えると……。」

「あいつら、騎兵なんだよ。」

 と、マリアが話に割り込んできた。


「やっぱりそうか……馬の鳴き声がしていたからな……そうだとは思っていたが……」

 イツキはやっぱりか…、と言う顔をした。


「やっぱり、そっちの方が有利なの?」

 イロハはあまり分かっていない感じだった。


「ああ、草原では騎兵が有利なんだ。機動力もいいから、だから王国軍はこの場所を迎撃場所に選んだんだよ。冒険者に手柄を取られたくないからな。しかし今回はどれくらいの規模だからは知らないから騎兵は不利だと思う。」

 にそう説明した。

 冒険者は馬を移動用に使っている者が多いが、戦闘用の騎馬をもっている者は少ない。小規模ならば騎兵で足りるが大規模となると乱戦になり騎兵は混乱して状況は一変する。


「そういうことだ。騎士団はお役御免ごめんになる訳だ。ハッハッハッ!だからアホなのだ!」

 リカは揶揄やゆするように笑った。


「だけど、不安要素が大きすぎるな、我儘わがままで若い騎士団長、大勢の小鬼ゴブリン達とそれ率いる王様軍団とその頂点である小鬼皇帝ゴブリンカイザーだ。何より自分達だけでやろうとする国王軍だろ……、この作戦の勝算は俺たち抜きだとどの位だ?リカ。」


 リカにそう聞くと、顔を歪ゆがませて答える。

「……戦力差はざっと1対1万だな。」

 その答えは、勝率が”ない“しか”ないのか絶望的な回答だった。

 普通の騎士団団長だったら、冒険者と腹に一物いちもつはあっても、露骨ろこつには扱わずにしておくべきだと考える。

 さらに、防衛しやすい有利な所で戦うはずだと思っていた。

 通常だったら、勝てる作戦なのに、指揮官が馬鹿すぎで負ける可能性があるという言い方を示していた。


「いくら小鬼の集団が相手でも、こっちは全部合わせて1000人程度だぜ、油断したらえらい事だろ」

 と、フレイが呆れる様に言う。


イツキは溜息を吐いて、表情を直すとみんなを見つめる。

「最悪の場合、俺とコウガが指揮をしてくれ。」

「まあそうだな。俺たち退魔師は『常に最悪を想定して行動しろ』と『馬鹿にはついていくな』って金言があったろ、さすがにこの話を聞いてその団長についていけないだろ、あくまで、失敗しそうな時だ。」


 マリアはいを真剣に見ながらそう言い、それが生存確率を上げると思ったからだ。

 退魔師たちの中で言われている、『最悪を想定して行動しろ』とは、その通りの意味だが、『馬鹿にはついていくな』の方には続きがあった、正確には『馬鹿にはついていくな、もう一度言う、馬鹿にはつくな』であった。

 2回同じ事を言っているのは、それだけ冒険者の中で重要といえる事だった。

 要は“馬鹿な者につくと自分が死ぬぞ”と言う事だった。

 そして、冒険者どうしでまた相談しだす、イツキが今はなしていた内容と同じ事を、結局どこの冒険者も王国軍の情報を仕入れてみたら、同じ結論にたどり着く、『勇者とイツキに指揮官をやってもらおう』と、冒険者全員が思っていた。


 ――これで、勇者とイツキは裏で秘密裏に指揮官に任命された。

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