ー集結ー
俺たちはホルンの町を出て西方に来るであろう、小鬼皇帝を待ち構えるために、その草原が見える丘へと到着した。真ん中までいくと、テントが張られていた。
辺りはありきたりの木で作った防柵に覆われている。
その柵の中に人が走り回っているのが見えた、さらに馬の鳴き声も響いている。
イツキたちは進めていくと鎧の兵士たちが慌ただしく動きまわっているのが分かった、全員同じ様な装備をしていてテントの近くに吊るしてある旗にはイース王国の旗と、そのアルカディア騎士団の旗が立っている、その模様と兵士の盾や鎧に入っている模様が同一の模様である事から王国兵士達が働いていると思っていた。
「あれが、イース王国軍が誇る精鋭兵士か……、結構な数がいるな、300人のはずだろ?」
「工作兵がいるんじゃないのか? 柵も作るし、迎撃するにも場所の設置は必要でしょ?」
「そうだな、イロハの言う通りだけど、冒険者達はどこにいるんだ?」
辺りを見回すがそれらしい者は無い、疑問に思いつつ近づいて行くと、向こうから兵士達が俺たちに駆け足で元に来る。
「待て、そこの者、何用だ!?」
1人の兵士が声をあげてイツキ達に訊いてきた。
それに反応してイツキはイロハらに合図を送り、そのまま兵士達の方を向いて説明をする。
「仕事だよ、“小鬼皇帝討伐”の依頼で来た冒険者だよ。」
それを聞いた国王兵士は「身分書を見せろ!」と高圧的に言ってきたので、仕方なくイツキは冒険者証明板を見せてやると怪しげにこちらを見つめて兵士達は「通れと」と、言って来た。
「どうも。」
と、イツキは言って冒険者らとの合流場をついでに兵士達に訊いてみる
「冒険者の集まる所はどこにあるんだ?」
「ああ、それなら……。」
兵士の1人がこのテントとは違う離れた場所にある簡易テントを指差した。
すると、兵士達はその場から離れてしまう。
「殺していい?」
「ダメだ。」
兵士達が離れた途端、イロハが殺害宣言したので引き止める。去っていく兵士の背中を睨んでいた、イツキも気持ちは分かっている、傲慢な態度に腹を立てるのはイロハだけでは無かった。リカに至ってはどう料理してやろうかという目で笑っていた。
「落ち着け、行くぞ。」
イツキはそう言って、馬車を引いている愛馬に合図を送ると素直に走りだした。
「イツキはなんでそう冷静でいられるの?」
「俺だって、あんな態度でいられたらムカつくよ。でも争っても意味は無いだろ、それに今回の戦の主力は国王軍の方だからな、それで、主導権を握りたいが為にわざわざ冒険者を“特別待遇”にしているのだろうからな。」
「それで?主導権を握りたいってどういう意味なの?」
「ああ、あの連中はこの国の兵士達だろ、国民を守る義務が騎士にはあるんだ。それに勇者…コウガがいるんだ。ギルドごときに主導権を取られる訳にはいかないだろ、“誇り”ってやつだな。だが主導権を俺たちが握ることになるけどな。」
「まぁそうだな。」
今回の討伐戦はあくまで王国兵士主体で行われる、冒険者はその手伝いというのが兵士達の態度から現れていた、意地と見栄も当然入っている事は分かりきっている。
イツキたちは冒険者達が集まっている場所に急いでいった。
(随分と熱烈な歓迎だな)と、イツキたちは簡易テントを見て思う、使われている布が妙にボロかった、先程あった向こうの布は綺麗で新しく、こちらはボロ、まさしく向こうの王国軍の意図が見える
お前達はこの程度の扱いで十分だ! と、言わんばかりの造りになっていた。
ボロい布で出来テントの間を抜けると多くの冒険者達が集まっている、空の樽たるに座って休憩している奴、纏まって話し込んでいる冒険者もいる、各自、自由に息抜きや作戦会議、をしていた。
「随分といるわね……」
人混みが苦手なイロハの顔が引き攣る。
「そう、緊張するなよ、いつもの通りにすればいいんだから」
「わ、わかってる」
と、声が上ずっているイロハに、イツキはまたかと、思いつつ辺りを見回すと、マリアたちを見つける。
イツキは近づいて行く。
「マリア…準備は出来てるか?」
イツキのその言葉に、銃を磨いているマリアに声を掛ける。
「出来ている。だがあれの調整が上手くいくかだな。」
「あれを放つんだ。調整は後回しでもいいんじゃないか?」
「それなんだが、周りに余波が来るかもしれん。」
「それならリカの武装と直結すれば心配はない。」
「それもそうか。それと気付いてるか?あいつらの視線。」
「あぁ。」
周りを見渡すとパーティーを組んでいる冒険者たちが俺たちを見ていた。
基本的に冒険者の中では5人未満をチーム、それ以上をパーティと呼んでいる、
ランクが違う者同士が集まるって結成される事が多く、その中でギルドレベルの1番高い者がリーダーになっている、大所帯のパーティは冒険者達の中にも多い、利点も多いからだ、下位のギルドレベルの者が高位のレベルの者から指導を受けられる育成も人気だった、それに人数が多いと負担が減る為、安全に仕事をこなせる、なりたての冒険者はそういう大所帯で腕を磨く者も多かった。
しかし、利点もあれば不利な事もある訳で、そこは自分で選ぶのが冒険者の自由となっていた。
「よう。みんな。この日か待ち遠しくて燃えるぞ!!」
と、
「じゃあ消すねー。」
リカは燃えているフレイを水浸しにする。
「冷た!何するんだ!」
「だって燃えてたから。」
「茶番はそこまでだ。それでコウガはどこだ?」
「ん?あいつならあそこだぞ。」
フレイが指を差した方向をみると草原を見つめながら刀身を突き刺している黄昏ているコウガがいた。どうやら準備万端のようだ。まだ索敵網には奴らは引っかってないまだきてないようだ。