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1日目調査

翌日の早朝から、イツキ達は村の周辺の捜索を開始していた。周辺は少し奥に行くと木が生い茂っていて未開の地といった所だった。腐葉土の地面が、ここが人里離れた場所で在る事を証明していた。

イツキ達は昨日の内に村長にどこから魔物が来ているのか大体の方角を聞いていた。それを聞いて、まずはその方向から、森の調査を開始している、ある範囲を探し、そして移動していく事を繰り返していた。

そのまま森の奥を散策している、やはり、森の中は魔物の出現率が高く、非常に荒れていると言っていい状態だった。


「ぎゃうぅぅぅぅ」ゴブリンの断末魔が響く。


《天音流肆式》【龍閃炎天りゅうせんえんてん

イツキは炎のエフェクトが見えるような横なぎ一閃で数体の胴体を吹き飛ばしていた。


「ちぃ。これで何匹目だ。」

イツキは呟く。


「30匹目くらい。結構いる。」

「そうだな、…換算すると3,000ミルドしかやっていないのか。」

少し遠い目をするリカ。リカの顔が曇っていた。


「リカ…さすがにお金に換算するのは止めろよ。」

「何言っているんだ、イツキ!お金は大事じゃないか。それに魔物を倒さないと冒険者は、飯を食えないんだぞ。」

リカは真面目な顔になり忠告する。


「それより、小鬼の命を100ミルドで例えるのは不味いんじゃない?」

「それを設定したギルドに文句を言うべきだな、それに魔物を倒しながらお金を数えるのは冒険者では常識だ。」


そうだけど、そうじゃないんだよ、魔物をとむらう気持ちが…――みんなはそう考えている。


「リカの心配も分からなくはないが、ゴブリンが100ミルドは安いと思っているんだろ、もう少し高くしてくれてもいいのに。」

イツキ違う、ずれてる。…――そう思うが口には出さない事にしているイロハ。


リカたちはゴブリンの耳をナイフでそぎ落とすと銀の舞台幕に落としていく。こうした作業をするのはギルドに帰っての査定の証明の為だった。倒した魔物の一部を切り取り、袋に保存しておかないと、お金には換金出来ない事になっていた、一応のルールがあり、例えば、ゴブリンの場合は右耳をそぎ落とす事で討伐証明になっていた。

(※両耳ではかさばり、どちらかにしてしまうと1匹で2匹倒したと言う嘘の報告が出来る為、右耳が推奨されているからだ。)


「リカ、お前何匹倒した?」

イツキはゴブリンの死骸を集めながら、リカに聞いてみた。

「……10匹」とリカはいう。

「…リカは10匹…俺は16匹。イロハお前はなんで魔法が苦手なのに使用してるんだよ。斬れば早いのに。」

「イロハ、お前は何時になったら魔法がまともに当たるんだ?」

「……、うっさい、的当てだったら得意だけど、動く的は苦手…それに魔法やらないと上達しない。」

「動かない的当てだと、お前は百発百中だよな、なんで、実践では出来ない。」

「動くからよ。」イロハはねた表情をする。


「………」イロハは呆気にとられる。

(魔物が動くのは当然だろ、何を言っているんだ、イロハ…今までどうしてたんだ?)


「それに、私は《広域魔法》を使えば余裕よ」

「…それは、山火事になるから止めてくれ、常識だろ。」

「……そうだった、ごめん」ハッとする表情を浮かべたイロハ。

「それより、リカ…お前召喚魔法得意だったよな?土精霊ノーム召喚してくれ、ここで、死骸を焼いときたい。」


リカは、了解し、魔法陣を書いて触媒となる服を置いた。なんで服?と思ったが言わない。

そのまま立ちながら印を組み唱える。


《異界の聖門よ開け!此処に契約を命じる、我を助け、力を与えよ》【土精霊ノーム召喚サモン


『ピルクッルゥゥゥゥ』


そう言いながら15㎝位の、土人形と言うべきモノが姿を現した、お腹が異常に膨らんで手足が短い、なんと言っても、顔が…子供が粘土作りで失敗した、のっぺらぼうの様な風貌だった、苔や葉が土精霊の服や髪の毛の様になっていたのが非常に残念な精霊が召喚された。触媒となったのは土属性が付与された服だったらしい。


「か、可愛いイツキ…そう思うでしょ?」

イロハは満面の笑みで聞いてくる。


「……あぁ」イツキも同意するが、正直気持ち悪いと思っていた。


リカの使っていた精霊召喚は特殊と言っていい程、非常に稀な魔法だった、服飾会という『精霊製服界エレメントファクトリー』と術者を繋いで、力を借りる事が出来る、契約出来るのは、火精霊、水精霊、土精霊、風精霊、光精霊、闇精霊…等の精霊達と契約出来れば召喚できる。――

が非常にセンスが必要で、さらにその精霊と性格や相性が良くないと召喚出来ない。

他にも場所や、術者の魔力が少ないと失敗する。

しかし、精霊自体は非常に強力な存在である(系統は1つだが)、その為、呪文を唱えずとも系統魔術の行使が可能となり、補助もしてくれる。

召喚時間があるが、それは術者との相性次第となっていた。

リカが現在召喚出来るのは、土精霊、風精霊、水精霊の3つだけだった。それ以外の属性を製作中のため増える可能性あり。


(コイツはある意味チートだから。召喚出来るんだな。)

イツキは土精霊を召喚した才能あるリカを見ながら思っていた。


「リカ…土精霊に穴を掘るように頼んでくれ。」

「わかった、じゃあ、やっちまいな!ノンちゃん。」

『ピユゥゥゥ』

土精霊はそう鳴いた、――意味はわからないがリカには分かるみたいだった。

(ノンちゃん? もう愛称付けたの?)――そう言いたいイツキ、だが我慢する。下手に言って調子に乗る可能性があるからだ。


急に地面がうねり始め、ボンっと直径3m程、深さ2m程の円形の大穴があいた、その周りに放射状に土が盛り上がっている。


「良く出来たな、偉い、偉いぞ。」

そう言ってリカはノームを撫で廻す。それはまるであの動物大好きなお爺ちゃんのように。

『プリュ、ピユゥゥ』――多分、嬉しそうな声を上げるノーム。

「えらい、えらい」――と、遠くからイツキは言いながら、纏めたゴブリンの死骸に近づいていくと――その死骸を穴に投げ込んでいく、1体、約30㎏程度だが30体も集まれば結構な力仕事だ。それをイツキたちは簡単に捨てていく。

全て捨て終わった後、さらに調査を続けていく。現在は開始してから4時間が経過していた。

動く影を見つけると、食植物花マンイーターフラワーが木々の間を歩いているのが見えた。

人食植物花マンイーターフラワーは3m近い体長をもつ魔物でEランク、植物のツタを足として移動してくる魔物で巨大な花びらで人を襲い体内に吸収する、花びらの中心に巨大な口で丸のみにする、花の内部の消化液は強力で直ぐに溶けだし動物を養分にする、凶暴で好戦的だった__


それが3体集団で歩いている。

「いくぞ。いいな?」

イツキは忠告するがすでに戦闘体勢だった。

魔物に気が付かれないように、慎重に低い姿勢で移動する、木々の影に隠れ少しづつ、背後を取る様にして移動していく。

「イロハ…まずは魔法で援護してくれ、俺たちがその後突っ込むから、……ただし炎系の魔術は止めろよ。」

「分かってる。そんなヘマはしない。」

「ああ、そうしてくれ。……その前に届くか?」

魔物まで40mと言う所だった。

「大丈夫。十分狙える。」

「じゃあ、やるぞ!」


イロハはその場で魔法を行使する。


《土よ、敵を穿つためその力を示せ…》

土魔法【土槍(アースランサ―)】

人食植物花マンイーターフラワー達の下に魔法陣が形成される、そして、地面が揺れると、……急激に2,3mある先の尖った、丸太並みの太さをもつ土の槍が飛び出した。


[ジュブ、ジュブ、ジュブ………]__と7本飛び出して串刺しにする。

「クキャァッァァ」__と人食植物花マンイーターフラワーが悲鳴を上げるが。__まだ、生きていた。


「はずした?」

「いや、いつもより命中している、安心しろ、あいつらも動けないみたいだからな。……じゃあ行ってくる。」

そう言うとイツキは駆けだした。

脚に妖力を集中させ、走力を高める。そのまま一気に距離を詰めていく。

人食植物花はイツキに気が付き、土槍に突かれながら、ツタで攻撃してくるが、予知で避ける。

木が凄い音を出すがイツキは構わずに、鬼雷桜を突き出す。


《天音流壱式・改》【天風刃突・繚乱】


木々に間を円を描くようにして、剣の先端が魔物の口を突き刺した。


「キャぅゥゥゥゥ!」_と断末魔をあげて、2体の人食植物花を倒した。


イツキはすぐさま剣を戻し、近くに寄った3匹目を…攻撃しようとするが、人食植物花は動けないながらも、ツタでイツキを攻撃した。

1本の太いツタがイツキを襲うが、……リカが割って入り、ツタの軌道を逸らして、イツキは体勢を整え、剣を切り上げながらツタをぶった切った。


そのまま、土槍で動けない、人食植物花の頭を上段のまま振り下ろした。

「ギャゥゥゥゥ」、悲鳴をあげて絶命する魔物。

イツキが3匹目に向かおうとするが、……イツキは攻撃を止める、__3匹目はリカの攻撃によってもう死んでいた。


「よし、終わったぞ。」そう戦闘が終了した事を告げる。リカたちが近寄ってきた。


「で?どうする?」

「もう、帰る」――冷たく、やる気無い返事をする、イツキだった。

「……、早くない?私、まだいけるわよ」

「いや、考えろ。まだ森の中腹。時間的に昼だが、今から剥ぎとって、村に戻ると1時間かかる。そしたら夜だぞ。」

「…それも、そうね、帰ろうか。」

「ああ、これから先は危なくなる。その前に撤退する事も冒険者の心得だ。」


こうして、成果があげられないまま、マハール村周辺の1日目調査は終了した。

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