日ノ本将軍
海で囲まれた島国【日ノ本・樋村】。
ここでは魔導師は居らず、侍、東洋魔術を使用する陰陽師らが国を守っている。さらにその頂点に君臨するのが将軍と呼ばれるヒムラ一族である。400年前までは各地で戦が起きて人々は苦しんでいた。しかしその戦乱を終わりにしたのがヒムラ・レキである。
レキは自分の故郷である樋村ひむらに政治の拠点を移した。樋礎幕戸を開いた。この意味は樋村家が成功するようにと思いを込めた。それから400年経ち15代目まで絶えることなく続いている。
樋礎城・天守閣
ここは将軍が仕事をする場所である。
15代目将軍ミカゲ・ヒムラは日ノ本財政の書類に手を付けていた。ミカゲは筆を止める。
「そこに居るものなに用だ?」
「へえなんでわかった?……さようなら命を貰うよ。」
襖が勝手に開き使用人が血を流して立っていた。使用人の皮膚は弾け骨が剥き出しとなった。その骨から男が現れた。
「我らヒムラ一族には【予知夢】という能力が受け継がれておる。見た夢が現実となる。どれ政務も飽きてきたところだし排除しようか。」
ミカゲが手をあげるとその男を取り囲むように将軍直属忍者隊【播州】が配置された。
《骨魔法》【骸鉄の蔓針花】
魔法が発動し、対応が遅れた忍たちに突き刺さり絶命した。さらにその忍を溶かして吸収した。
「魔法……か。しかも自身の骨を媒体にするようだの。一応名を聞いてやろう。申してみろ?」
「いいよ。べつに。ゾラ・ニールストン」
「そうか。なら余が自ら手を下すんだ。喜んで死んでいけ。」
ミカゲは刀を出現させ鞘から抜き取る。水色の刀身が姿を見せ魔力を流した。もう片手で印を素早く結ぶ。ミカゲは忍であり、侍でもある。
《火遁》【業火竜尾】
《水遁》【剛腕水撃】
《骨魔法》【夜叉骸】
口から火を吹き出して竜を形成する。その竜がゾラに向かい水の拳を形成し落ちてくる。ゾラは骨の人形を作りだして消し去った。
《雷遁》【雷連弾】
+
《水遁》【水連爆星】
ゾラの死角から弾が出現しくらった。そして天守閣は爆発し吹き飛んだ。突如爆発した天守閣に城下の人々は驚きを隠せなかった。煙が立ち込める天守閣だった場所には二人がいる。爆発により破れた服を脱ぎ捨てるミカゲと骨を身体中から出して守っているゾラがいた。
ー日ノ本神宮ー
「いってきます。父さん、母さん……彼が救ったこの世界を守るために……」
巫服に着替えて祈りを済ませた彼女が将軍のいる城に向かう準備をしていた。
崩れた天守閣ではミカゲとゾラが目で追えないほどの高速戦闘を行っていた。術を放っては骨魔法で塞がれ、攻撃されては防御術で対抗するという戦闘であった。いくら実践から離れた将軍とはいえここまで戦えるとは思っていなかったゾラであった。
「実に面白い魔法だ。」
【影分身】
《五大奏術》【五術刻印雷裂】
《骨魔法》【削ぎ落とす骨の剣山】
ミカゲは印を組むと5人に増える。同時に雷を手に纏いゾラに向かって駆け出した。ゾラは両手を床に付けると骨の槍が出現しミカゲを突き刺した。突き刺されたのは全て分身体で霧のように消えていった。ゾラは立ち上がると胸に痛みを感じた。そこに目を向けると雷を纏った腕が突き出ていた。
「残念だ。こっちだ。」
「いつから……」
血を流しながらもゾラはミカゲに問い詰めた。
「では聞こう。一体いつからあれのどれが本物だと錯覚していた?」
ミカゲはゾラの胸から手を抜き血を振り払う。ゾラはそのまま倒れた。ミカゲは警戒を行うが反応がない。一瞬だけ気を緩んでしまった。死体から無数の骨がミカゲを貫いた。
「がはぁ」
ゾラの死体の骨が形成されると別人に成り代わった。
《悪力解放》【歌雨骨】
「もう一人……いたのか」
【いやこいつは死んだよ。私はもう一人の人格だ。ではさよならだ。】
骨が抜き取られると蜂の巣状態のミカゲが突っ立ていてまだ意識があり死んではいない。しかしミカゲの魔力が変化し始めた。
《悪骨魔法》【吸刃骨槍】
《透過歩法》【朧】
槍がミカゲの身体をすり抜けた。ゾラは気配を感じとりそこに攻撃を行うがダメージが与えられなかった。しかも気がつけば切り裂かれている。
【なんなんだその力は!】
「代々ヒムラ家は妖怪と交わる仕来たりがある。だが俺には数々の交わった妖怪の力が扱える。」
雪女 吹雪
ゾラの足元が氷付けにされた。さらに腕を振るうと吹雪が吹き始め身体中の細胞が凍って骨魔法が扱えない。そして完全に凍結してしまった。しかし笛の音が聞こえると凍結されたゾラが砕け落ちていった。それだけではない。ミカゲが一度意識を失い倒れた。すぐ立ち上がると雰囲気が変わっていた。ミカゲはゾラに乗っ取られてしまったのだ。ゾラの憑依魔法【遺骸相乗】が発動する。一定の時間戦った相手の身体を乗っ取る強制魔法である。ゾラはこの魔法で命を繋いできた。
「やはり乗っ取りましたね。将軍の身体を…。」
「誰だ貴様は?」
「私ですか?私は日ノ本神宮第110代目巫ミキ・イサナといいます。さっそくではありますが霊秡を開始いたします。」
乗っ取られた将軍に声を掛けたのはかつてイース魔道学園で学んでいたイツキの弟子であったミキ・イサナである。なぜ彼女が日ノ本に戻っているか、留学期間の終わりも関係しているがそれだけではない。それは彼の遺言により王国を離れ神宮当主を引き継ぎ各地の災厄を祓い続けていた。
ミキは札を取り出した。
元柱固具、八隅八気、五陽五神、陽動二衝厳神、害気を攘払し、四柱神を鎮護し、五神開衢、悪鬼を逐い、奇動霊光四隅に衝徹し、元柱固具、安鎮を得んことを、慎みて五陽霊神に願い奉る
「――木よ、天より降りて、霊樹に宿れ! 大樹のなかの大樹……喼急如律令!」
ミキは防御術式を発動し、呪符を通して呪力を木気へと変換する符術を発動する。大きな大樹が出現する。そこからイバラやツタなどを生み出してゾラを拘束しにかかる。
ゾラは妖怪の力はまだ使いきれておらず、骨魔法でイバラやツタを排除していった。
 




